自作ベッドで睡眠スコアが変わるのか、という実験
良きマットレスに巡り合うのは難しいものです。身長や体重、筋肉のつき方は人によって異なり、万人にとって最適な寝床は現代化学では発見できていません。
そんな事実がありながら、いわゆる3S(Simmos、Sealy、Serta)のような高級マットレスメーカーは存在し、1泊数万円のホテルや富豪たちの寝室に導入されています。そして「人生の1/3を過ごす場所なので、お金をかけるべき」といった主張が繰り返されます。
前述のとおり、最適な寝具は人によって異なります。近所のイオンモールにいくと「じぶんまくら」の店員さんたちがお客さまの身体測定を行っていますよね。本来であればこのように、あらゆる測定と比較検討を重ねて寝具を選ぶべき、というのがぼくの主張であります。かけるべきはお金ではなく時間というわけです。
※じぶんまくらに行けばOKという話ではありません。
そこでぼくは、自分にとって最適なマットレスを求める旅に出ることにしました。
ぼくが旅支度をしていると、「イオンモールやニトリに赴き、たくさんのベッドで寝てみればいいじゃない」という声が聞こえてきます。
笑止。
立ち寄ったショッピングモールで普段と同じようにガチ寝できる人ならば別ですが、それをおこなう時間帯や人々の目は通常の睡眠とは異なり、イレギュラーなシチュエーションです。そんな状態では睡眠にとって良い寝具であるかどうかは、正しく判断できません。
また、レム睡眠中の人間は全身の筋肉を緩めていることも考慮しなければなりません。筋肉のつき方によって最適なマットレスは変わってくると述べましたが、その事実をもとに考えると、マットレスを試す際にはガチ寝が必須ということになります。
そういうわけで、正しい条件でマットレスを評価するには以下のいずれかを選択する必要がありそうです。
1.買う
2.レンタルする
3.お目当てのマットレスがある場所に泊まる
付け加えると、睡眠の質は前日の睡眠時間や起床時間、その他いくつもの影響を受けてくるので、1日だけではお試しになりません。ばらつきを考慮し数週間は見ておきたいところです。しかしながら、そんなに長い期間ホテルに滞在するわけにも参りませんし、買ったりレンタルしたりもお金がかかって大変です。毎月の収支マイナスをキープしているぼくが選べる道ではありません。
であれば、「4.自作する」でしょう。
自室のベッドはベッドフレーム+マットレス+シーツの三段構成となっています。これらの状態を変化させながら睡眠の質を比較することで
⑴マットレスが変わると睡眠の質が変化するのか
⑵どんなマットレスであれば睡眠の質が向上するのか
を検証できるだろう、というアイデアです。
睡眠の質といっても判断が難しいので、こちらはOura Ringにお任せします。このアイテムが睡眠スコアリングをしてくれます。
それではマットレス作りです。
まずはベッドフレームに載っているマットレスを剥がします。ベッドフレームの底面は格子状になっているので、そのまま寝ると痛いです。金網の上に寝ている感覚ですね。硬さを和らげるため、まずはヨガマットを敷いてみました。ぼくがもっているのは薄くて硬いタイプなので、あんまり効果はありません。うーん。
その後はベッドフレームとヨガマットの間に段ボールをいくつか敷いてみたり、ヨガマットの上に羽毛布団と寝袋を重ねたりすることで、硬いながらも荷重が集中しないくらいの出来栄えになりました。全体的に野球グローブくらいの硬さです。
さっそく仰向けに寝てみると、腰に荷重がかかる感覚があります。以前、友人にこの実験の構想を話したときは「腰を痛めるよ」と助言されたので「これのことか…」と思いました。いや話を聞けよ。
しかしぼくはただの話を聞かないアホではありません。学生時代に所属していた部活では、しばしば体育館の床で睡眠をとっていました。この経験があったので、少しくらいなら大丈夫であるという自信もあっての判断です。念には念をいれて、異常が出たら使用を中止することを自分自身と約束しました。
その夜から実際に寝てみましたが、やはり体が痛いです。仰向けになると腰が、横向きになると肩が圧迫され、ベスポジがなかなか決まりません。四苦八苦しながらも仰向けと横向きの中間みたいなポーズを発見し、その姿勢で眠ることができました。
翌朝は通常通りの時間に目が覚めまして、体が少し痛いけれど全然気にならない感じ。睡眠スコアも通常通りで、むしろちょっと高いかな?くらい。
心配していた腰へのダメージも特に問題なさそうだったので、とりあえず3週間続けてみました。それでは測定データを確認してみましょう。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/102338217/picture_pc_41e02a597cc179846080d87b46cc67d1.png?width=1200)
こちらは睡眠効率の項目です。ベッドにいる時間のうち、どれだけ眠れているかを時間割合で示した数字です。一般的には85%を超えれば上々なのですが、近頃は少し足りてないですね。プロット1つが1週間の平均スコアです。本検証は今年の12週目にスタートしているので、後半3点がマットレス変更後となります。
※睡眠時間の絶対値を指標にすると、帰りが遅かった日などはスコアが低下してしまいます。そういった外乱になるべく左右されないよう、今回は睡眠効率を判断の指標とします。
それでは結果を見てみしょう。
長期的な平均スコア82%に対し、マットレス変更後の平均スコアは82%でした。
官能評価の結果は「起き抜けに身体の痛みはあるものの気にならないレベル」「特別ぐっすり眠れた/眠れなかったという感じはない」といったところ。
変わらんやないか!!!!!!
従来のマットレスとダンボール寝床では、睡眠効率に与える影響は同等であるという結果が出ました。本来の目的は睡眠効率の向上ですが、まずは仮説検証できたので一歩前進です。ぼくのなかで、現代科学が正しいことが証明されました。
質感的にはかなり別物なんですが、実際に寝ていると関係ないんですね。もしかしたら、コンクリートの道路で寝ても同じような結果が出るかもしれません。まあこれは検証しませんが。
今回は硬い寝床でトライしたので、次回は柔らかいものを作成して検証していこうと思います。肩、腰、足などの部位によって分けたり、高さを変えてみたりもできるので、可能性は無限大です。
ぼくの旅はまだまだ続きます。