砂塵の墓標 灼熱の太陽が容赦なく砂漠を焼き尽くす。風化した岩山がゴツゴツと突き出し、地平線まで続く砂丘は波打つ黄金の海のように見えた。その過酷な環境の中、一機の戦闘ロボットがゆっくりと歩を進めていた。 その名は「スカラベ」。最新鋭のAIを搭載した自律型戦闘ロボットで、砂漠地帯での戦闘に特化して開発された。装甲は砂嵐にも耐えうる強度を誇り、装備されたガトリング砲とミサイルランチャーは圧倒的な火力を有する。 スカラベの任務は、古代遺跡に潜むミイラの掃討だった。遺跡はかつて栄華を誇った王朝の墓所であり、数千年の時を経て悪しき魔力に染まっていた。ミイラたちはその魔力の影響で蘇り、遺跡に近づく者を襲っていたのだ。 スカラベは遺跡の入り口に到達すると、センサーで周囲を警戒した。静寂の世界。砂嵐の音だけが不気味に響いている。だが、スカラベのセンサーは捉えていた。遺跡の奥深くから、複数の生命反応が近づいてくるのを。 「警告。敵性反応を複数確認。戦闘態勢に移行します。」 スカラベのAIが冷徹に告げる。ガトリング砲が回転を始め、ミサイルランチャーが標的をロックオンした。 次の瞬間、遺跡の奥からミイラたちが姿を現した。包帯を巻いた干からびた体、虚ろな眼窩。彼らは生ける屍でありながら、恐るべきスピードでスカラベに襲いかかってきた。 「攻撃を開始します。」 スカラベは容赦なくガトリング砲を掃射した。銃弾がミイラたちの体を貫通し、砂塵を巻き上げる。だが、ミイラたちはひるむことなく前進する。彼らは痛みを感じない。恐怖も知らない。ただ、殺戮本能の赴くままに襲いかかるのだ。 ミイラたちがスカラベに肉薄する。鋭い爪が装甲を引っ掻き、腐敗した息が吹きかかる。スカラベはミサイルランチャーを発射した。爆風が遺跡を揺るがし、ミイラたちを吹き飛ばす。 だが、ミイラたちはしぶとい。何度倒されても、再び立ち上がってくる。まるで悪夢のように、執拗にスカラベに襲いかかるのだ。 スカラベはAIの判断で戦術を変更した。ガトリング砲による牽制射撃を行いながら、後退を開始する。ミイラたちはスカラベを追跡する。遺跡の奥深くへと誘い込むのがスカラベの狙いだった。 遺跡の中心部には、巨大な石棺が安置されていた。ミイラたちの魔力はこの石棺から発生している。スカラベは石棺に狙いを定め、ミサイルランチャーを全弾発射した。 轟音と共に石棺は粉々に砕け散る。魔力の源が断たれたミイラたちは、次々と崩れ落ち、砂塵と化した。 スカラベは静かに佇立していた。戦闘は終わった。砂漠には再び静寂が訪れた。 スカラベは任務を完了し、砂漠を後にした。その背中には、灼熱の太陽が沈みかけていた。地平線は赤く染まり、砂漠は血の色に染まったように見えた。 スカラベは砂塵の墓標となり、古代の悪夢を封印したのだ。