モビーディックとの死闘 「白鯨発見! 方位、左舷前方! 距離、およそ5000!」 見張りの叫びが、静寂を破る。艦橋に緊張が走る。 帝国海軍最新鋭戦艦「比叡」は、未踏の海域を航行していた。目的は、伝説の白鯨「モビーディック」の捕獲。その巨体は、全長100メートルを超えるという。白鯨の油は、貴重なエネルギー資源となる。 艦長のアカギ大佐は、双眼鏡を覗く。水平線上に、巨大な白い影が見える。 「あれが…モビーディックか…」 アカギ大佐は、息をのむ。その巨体は、戦艦すら小さく見せるほどだった。 「全艦、戦闘配置! 主砲、目標モビーディック! 撃て!」 アカギ大佐の号令が響き渡る。轟音と共に、35.6センチ砲が火を噴く。砲弾は、モビーディックの巨体に命中する。 だが、モビーディックは、微動だにしない。厚い脂肪の層が、砲弾の衝撃を吸収するのだ。 「なんだと!?」 アカギ大佐は、目を疑う。35.6センチ砲の直撃を受けても、モビーディックは傷一つ負っていないのだ。 その時、モビーディックが巨体を翻す。巨大な尾びれが、海面を叩く。津波のような大波が、「比叡」に襲いかかる。 「ぐわああああ!」 乗組員たちの悲鳴が響き渡る。「比叡」は、激しく揺さぶられる。 「持ちこたえろ!」 アカギ大佐は、必死に叫ぶ。だが、「比叡」は、モビーディックの猛攻に耐えきれず、沈み始める。 「くそっ…このままでは…」 アカギ大佐は、最後の手段に出る。 「魚雷発射! 全弾、モビーディックに叩き込め!」 「比叡」の魚雷発射管から、魚雷が発射される。魚雷は、モビーディックの腹部に命中する。 大爆発が起こる。モビーディックは、苦痛に悶え、海中深く沈んでいく。 「やったか…?」 アカギ大佐は、安堵の息をつく。だが、その瞬間、モビーディックが再び姿を現す。怒りに燃えた目は、「比叡」を睨みつけている。 モビーディックは、最後の力を振り絞り、「比叡」に突進する。 「うわああああ!」 「比叡」は、モビーディックの巨体に押しつぶされ、轟音と共に沈没する。 アカギ大佐以下、「比叡」の乗組員は、全員戦死した。モビーディックもまた、深手を負い、海の藻屑と消えた。 人類と白鯨の戦いは、痛み分けに終わった。だが、この戦いは、人類に、自然の脅威を改めて知らしめることとなった。