オーストリアハンガリー帝国戦車師団

 ドナウの鉄騎 1918年、第一次世界大戦末期の東部戦線。オーストリアハンガリー帝国軍の戦車師団は、ガリツィアの泥濘と化した戦場で、ロシア軍との壮絶な戦いを繰り広げていた。 その中心にいたのは、若き戦車長カール・フォン・シュトラッサー少尉。貴族出身の彼は、最新鋭のシュコダLTvz.35軽戦車を駆り、戦場で獅子奮迅の活躍を見せていた。 カールは、愛機「ドナウ」号と共に、数々の激戦をくぐり抜けてきた。ロシア軍の塹壕を突破し、機関銃陣地を粉砕し、敵歩兵を蹴散らす。その勇猛果敢な戦いぶりは、兵士たちの士気を高め、彼らから「ドナウの鉄騎」と称えられた。 しかし、戦況は悪化の一途を辿っていた。同盟国のドイツ帝国は西部戦線で苦戦を強いられ、オーストリアハンガリー帝国軍も疲弊しきっていた。物資の不足、兵員の減少、そして厭戦気分の高まり。カールは、祖国と皇帝陛下の為に戦っているという信念を持ちながらも、心の奥底に暗い影を感じ始めていた。 そんなある日、カール率いる戦車中隊は、ロシア軍の精鋭部隊との遭遇戦に巻き込まれる。数で勝る敵戦車部隊に包囲され、絶体絶命の危機に陥るカールたち。 「ドナウ」号は被弾し、車内は火の海と化す。カールは、顔に火傷を負いながらも、必死に脱出を試みる。 その時、彼の脳裏に、故郷のウィーンで待つ婚約者エリーゼの姿が浮かんだ。 「エリーゼ…私は…生きて帰る…」 カールは、鋼鉄の意志で再び「ドナウ」号に乗り込み、敵戦車に突撃する。凄まじい砲撃戦の中、カールは、持ち前の戦術と操縦技術を駆使し、敵戦車を次々と撃破していく。 彼の勇敢な姿に鼓舞された戦友たちも、奮起して反撃を開始する。形勢は逆転し、ロシア軍は撤退を開始した。 カールは、辛くも勝利を収めたものの、「ドナウ」号は完全に破壊され、彼自身も重傷を負っていた。 戦後、カールは英雄としてウィーンに帰還する。エリーゼとの結婚式は、街をあげて祝福された。 カールは軍を退役し、静かな余生を送った。しかし、彼の心には、戦場で共に戦った戦友たち、そして「ドナウ」号との記憶が、いつまでも焼き付いていた。 

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