乃木坂46の楽曲を一日一曲語る。6日目『白い雲にのって』
_______【この記事の構成】_______
▼今日のこばなし
本題の伏線になる時とならない時がある雑談
▼『○○』の基本データ
作編曲、歌唱メンバー、MV等の情報
▼『○○』を語る
愛と飛躍に溢れた考察
▼おわりに
総括とキメ台詞
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▼今日のこばなし
「先週のけやかけ」
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先週の『欅って書けない?』を見ていて引っ掛かった事がある。
渡辺梨加と長沢菜々香が厳しいパン修行に挑むという回で、パン職人廣瀬満雄の洗礼を受けた二人は、
「社会人ってこんな感じなのかな?」
という趣旨の発言をしていた。
しばらくこの言葉が脳内をグルグルしていた。
先に行っておくと、筆者はどちらの批判もするつもりはない。
廣瀬さんは終始正論しか言っていなかった。
一方、緊張でどんどん萎縮してしまい声が出なくなる気持ちもわかる。
筆者が引っ掛かったのは、
「アイドルは社会人ではない」という考え方がおかしい気もするし、納得できるような気もすることである。
彼女たちの生み出す価値が経済を動かしているのは紛れもない事実である。その意味では、アイドルは立派な社会の一員と言える。
しかしながら、一人前の社会人とは言い切れない未熟さが、彼女たちをアイドルたらしめている気がしてならない。
これがいわゆるアンビバレントなのだろうか。
▼『白い雲にのって』の基本データ
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▼収録 / 発売日
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1stシングル『ぐるぐるカーテン』通常盤 / 2012年2月22日
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▼作詞 / 作曲 / 編曲
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秋元康 / 太田美知彦
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▼歌唱メンバー
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安藤美雲、生田絵梨花、生駒里奈、市來玲奈、井上小百合、岩瀬佑美子、川後陽菜、川村真洋、齋藤飛鳥、斎藤ちはる、斉藤優里、桜井玲香、白石麻衣、高山一実、中田花奈、西野七瀬、能條愛未、橋本奈々未、星野みなみ、松村沙友理
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▼センター
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生駒里奈
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▼MV(ミュージックビデオ)
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この曲のMVは制作されていない。
▼『白い雲にのって』を語る
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・ややこしeeee
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少女たちが縁側に寝転がって雲を見上げているのが目に浮かぶ、ゆったりと心地の良い曲である。
猿岩石の大ヒット曲『白い雲のように』と名前が似ているだけでなく、どちらも秋元康プロデュースの楽曲である。((※1))
「重箱読み」と「湯桶読み」くらいこんがらがる。((※2))
・神は死んだ!
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いい人とか悪い人
そんなに差はないんだよ
- 出典:『白い雲にのって』/ 作詞:秋元康 作曲:太田美知彦
「神は死んだ!」
これはニーチェの有名な言葉である。
この言葉を単なるキリスト教批判で片付けるのはもったいない。
キリスト教、道徳を否定するということは、そこから導かれる善悪の基準も否定することである。
善悪なんて考えなくてもよい、そもそも物事や世界が「善い」「悪い」ことなどないとニーチェは考えたのだ。
しかし、善悪という判断基準を失った我々は、何を支えに生きればいいのだろうか。ニーチェは言う。
「超人を目指すのだ。超人にあこがれるのだ!」
超人とは善悪の基準を完全に乗り越え、畜群的人間を超越する存在としてニーチェが設定したものである。
(畜群的人間・・・強者に対して心理的に対抗しようと、群れをなして宗教や倫理にすがる弱者)
つまり、ニーチェは我々にこう言っている。
畜群的人間は現実の世界では強者に歯が立たないから、「横柄な強者はワルモノだから地獄に行くんだ」と思い込むことで心の中だけでも優位に立とうとする。そんな畜生の生き方は止めて、一人ひとりが超人を目指して力強く生きろ。
そしてどうやら、『白い雲にのって』で描かれる少女たちは「いい人と悪い人に、そんなに差はない」ということをすでに知っているらしい。
彼女たちは超人にかなり近づいているのかもしれない。
・ヘルマン・ヘッセ
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「白い雲」に何か特別な意味があるのではないかと思い調べてみたところ、ヘルマン・ヘッセ((※3))が『白い雲』という詩を残していたことがわかった。
尾崎喜八氏の翻訳がとても素敵だったので、下のリンクからご覧いただきたい。
この詩では「白い雲」が内包する2つのイメージが表現されている。
①純粋無垢で自由気ままな存在というイメージ
これは、過去に大園桃子が明石家さんまに「真っ白やな、キミ!」と言われていたのと非常に近いものがある。((※4))
②長い旅路の中でありとあらゆる喜びや悲しみを経験してきたというイメージ
家なき者(拡大解釈すると我が道を行く者)にとって「白い雲」は、共に旅をする親しい存在であり、自分にとって支えとなる存在なのだ。
この「純粋無垢な存在でありながら、誰もが共感や親しみを持てる存在」というのは、アイドルの理想形のようにも思える。
『白い雲にのって』は、理想のアイドル像を「白い雲」に託した曲という側面も持っているのである。
▼おわりに
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ヘルマン・ヘッセの『白い雲』を秋元康が知っていたのか定かではない。
それでも、曲を掘下げようといろいろ調べていくうちに未知のものと出会うのはとても楽しい経験だった。
では、また明日。stay tuned!
((脚注))
※1)猿岩石は1994年4月に結成、2004年に解散したお笑いコンビ。メンバーは有吉弘行と森脇和成。当時、人気番組だった『進め!電波少年』の人気企画「ユーラシア大陸ヒッチハイク横断」でブレイク。1997年に秋元康のプロデュースにより、藤井フミヤ、藤井尚之兄弟提供の『白い雲のように』をリリースしてミリオンヒットを記録した。
※2)音読み・訓読みの順で漢字を読む熟語のことを重箱読みという。逆に、訓読み・音読みの順番で漢字を読む熟語が湯桶読みである。
※3)ドイツ生まれのスイスの作家。主に詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者である。著作『少年の日の思い出』は中学校の国語の教科書にも採用されている。
※4)2017年12月18日に放送され、乃木坂46も出演した『第3回明石家紅白』(NHK総合)での出来事。シンガーソングライターの高橋優が書き下ろし、大竹しのぶと明石家さんまの夫婦時代の爆笑エピソードを盛り込んだ楽曲『キライナヒト』をさんま、大竹、高橋の3人でスタジオ歌唱した際、大園桃子が感極まって涙を流した。涙の理由を聞かれ、「感動しました。嫌なことがいっぱいある世界で、離婚はしているけど、でも人はこんなにも愛されるんだなって思ったら、感動してきて…感動しました」と答えた桃子に対してさんまは「真っ白やな、キミ!」とそのピュアさを絶賛した。
【参考】
﨑井将之『おとなの学習(27)哲学のおさらい』(自由国民社、2016年)