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【#短編小説】ヒューマノイド/ガンバレル

「いいか、アクション映画をダメにしたのはワイヤーアクションだ」

 ボロボロのあずまやの中で、リンダという名の女が熱弁します。

「いいえ、あの人が映画を撮らなくなったからです。彼こそが、彼こそがアクション映画なのですから!」

 反論するのはフランソワという名の女です。

 二人合わせて前科百二十五犯、正式に記録されていない罪を加えれば、その、何倍もの数になります。

「ねぇリンダ。あなたの弾、下品すぎやしませんか? 今時、そんなクソデカい弾使ってるのは、あなたくらいですよ」
「まあ、そうだよなぁ……でもよ、おまえの胸のほうがよっぽどクソデカで品がねぇぞ? 邪魔そうだな、斬り落としてやろうか」

 リンダが手にしている弾は、フランソワの言う通りクソデカい。

「やっぱり、元ナイフ使いは野蛮で下品ですね」
「ナイフ使ってたのは金がなかったからだ。そんなことよりよ、知ってるか? こいつで撃つと人が爆発すんだよ」
「はいはい、ハンドキャノンハンドキャノン」
「もう少しまともなリアクションとれよ。しかし、おまえの弾もひでぇ代物だな」

 テーブルの上にきれいに並べられているフランソワの弾は、クソ長い。

「あなたの弾よりマシですよ。サンダー五十ごじゅーもびっくりするようなサイズで、よく拳銃使いを名乗れますね」
「おまえのほうこそ、拳銃屋を名乗るにはバレルが長すぎるぜ。スナイパーに転職したほうがいいんじゃねぇか?」

 驚くことに、二人のクソ銃・・・はどちらも拳銃なのです! 

 多分…………。

「羨ましいですか? これを使えばサイバネ野郎でも十人は貫通できますよ? 銃が、一対多数を可能にする人類の夢であるならば、この弾はその理念どおり。つまりは、銃のあるべき姿。正統進化と言え――」
「なあ、もういいかその話。私はよ、長い長話聞いてると頭痛が痛くなってくるんだよピストルオタク」
「教養がないと短い話も聞いていられないんですね、可哀想な戦車女ですこと」

 カチリ。カチリ。二人は睨みあいながら異形の銃に弾を込めていきます。どちらも、火力が高すぎて機械化した腕でなければ扱えない代物です。

「しかしおまえも人でなしだな。貫通されたら、簡単には死ねねぇだろう」
「しかししかしとうるさい人ですね。鹿ですか? 馬鹿ですか? 自分で折った話をぶり返してまでなにを伝えたいんですか?」

 装填を終えたのは二人同時。

 そして――――

「撃ち殺すぞてめぇ」
銃歴キャリアは私のほうが長いですよ?」

 あずまやから飛び出したのも、二人同時です。

「おいでなすったぜ」
「どこで覚えたんです、そんな言葉」
「日本映画さ。さて、ぶち落としてやろうぜ」

 空の青を遮るのは、巨大なUFOの群れ。

「日本映画は私も好きですよ。こうして移住しちゃうくらいには。おすすめは?」
「ビオランテだ」
「デストロイアでしょう」

 意見が食い違う二人は、空を見上げたまま。

「しかし、金星人の心臓って、どこにあるんでしょうねぇ」
「頭撃ちゃ死ぬだろ」
「私、死人の顔が見えないのって嫌いなんです」
「はぁ……シリアルキラーがよぉ」

 母艦えんばんから、地球人の美学では考えられないデザインの戦闘機が次々と発射されました。

「さて、お喋りはここまでですよ」
「おまえにお喋りを止められるとは、世の終わりだぜ」
「いいえ、終わらせません。私たちがいる限り」
「ああ。悪党が聖人になれるチャンス、逃してたまるかって話だな」
「あなたって人はほんと下品――上!」

 同時に響いた、二つの――――銃声とは思えぬほど大きな――――銃声。

 地球はまだ、負けていないのです。


おしまい


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