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【ポケポケ】データが語るウインディexの役割/リザードンexデッキ考察

 こんにちは!ポケポケの大会「いたち杯」の運営をしている、いたちです!大会運営だけでなく、過去の大会や海外の大規模イベントの対戦データを分析し、カードやデッキ構築の研究にも力を入れています。本記事では、これまでのデータをもとに、リザードンexデッキにおけるウインディexの活躍を深掘りしてみました。ポケポケをもっと楽しむヒントをお届けできればと思います!


1.はじめに

 最近リザードンexが人気ですよね。一時期は全く見なくなったのですが、環境中盤あたりから人気が伸びてきて、現在はピカチュウex、ミュウツーexに続くシェア率を誇っています。

図1-1_2024年11月5日~12月2日の4週間における3デッキのシェア率の推移

 このグラフは、ピカチュウexやミュウツーexとともに、11月の4週間における3デッキのシェア率をまとめたものです。興味深いことに、リザードンexはピカチュウexやミュウツーexと逆の動きを示している部分が多く見受けられます。

 このグラフから推測されるのは、リザードンexの存在がピカチュウexやミュウツーexに影響を与えているのではないかということです。もちろん、偶然そう見えているだけで、因果関係が無い可能性も十分にあります。さらに、こちらのグラフを見てください。

図1-2_2024年11月5日~12月2日の4週間におけるウインディex採用型と不採用型のシェア率の推移

 図1-2はウインディ採用型と不採用型のシェア率の推移を示したものですが、ウインディ採用型が増加しているのは3週目あたりです。そして、図1-1からもリザードンexが増加しているのは3週目あたりだということが分かります。

 ということで、リザードンexの中でも、特にウインディ採用型リザードンexがピカチュウexやミュウツーexに影響を与えているということが示唆されます。ただ、図1-1や図1-2のようなシェア率のグラフからだけでは、因果関係があるとまではまだまだ言い切れません。(たまたま増減のタイミングが重なっただけの可能性あり)

 本記事では、ウインディ採用型のリザードンexがピカチュウexやミュウツーexに影響を与えている可能性があるという仮説をデータから紐解いていきたいと思います。

2.デッキレシピ

ウインディex採用型リザードンexデッキ

 最近よく見かけるウインディex採用型リザードンexですね。ガーディを1枚だけ採用することで、たねポケモンの種類を絞り、モンスターボールで狙ったたねポケモンを手札に加えやすくしています。ガーディ1枚・ウインディex2枚がよく見かける投入枚数ではありますが、この投入枚数が適切かどうかという点も後半に話していきたいと思います。

 ここでは、たねポケモンを削ることの有用性について、少しお話ししたいと思います。たねポケモンを減らすことがどのように作用するのかは、こちらをご覧ください。

表2-1_2進化までにかかるターン数の確率表
参照:ゲームエイト(https://game8.jp/pokemon-tcg-pocket/654334)

 ゲームエイト様のサイトから拝借した「2進化までにかかるターン数の確率表」です。この表からもたねポケモンを絞ることで、リザードンexを素早く完成させられることが分かります。

3.リザードンexデッキ概要

 基本コンセプトは、リザードンexの超高火力技「ぐれんのあらし」で、一撃で倒すといったものです。現カードプールに存在するポケモンの最大HPは190(フシギバナex)であるため、「ぐれんのあらし」を耐えられるポケモンはいません。まさに一撃必殺ですね。ただ、デメリット効果として、エネルギーを2個トラッシュする必要があり、エネ加速も多くない現環境では、エネ管理が重要になってきます。また、「ぐれんのあらし」を打つために必要なエネルギー枚数も多いです。

 そして、リザードンexの必要エネルギーを貯めるためにキーカードとなるのが「ファイヤーex」です。このカードはかなり汎用性が高く、カツラデッキ以外の炎デッキにはほぼほぼ必須カードとなっています。

環境が変わっても、このカードは使われ続けそう。

 ファイヤーexは、エネ加速兼壁要員。「れっかのまい」でベンチのリザードンexラインを育てつつ、相手の攻撃を耐えることでターン数を稼ぎます。

 ファイヤーexでリザードンexラインを育てて、「ぐれんのほのお」で相手を焼き尽くす。というのが、リザードンexデッキの基本戦術となります。ただ、ここで課題として挙がるのが、安定性の低さ。アタッカーが2進化のリザードンexということで、なかなかの事故率を誇ります。

 そこで登場したのが、ウインディexです。こいつは1進化であり、自傷ダメがあるものの、「もうかのとっしん」は3エネで120ダメージが出せます。

 120ダメージということは、非エクミュウツーやピカチュウexを一撃で倒せるライン。最低限の火力はあると評価できます。リザードンexが立たなくても、ウインディexで戦えるというのが、ウインディex採用型の強さになります。

4.ウインディex単体デッキ

ウインディexデッキ

 ウインディex採用型リザードンexの強さを知るために、まずはウインディex単体デッキについて、考察したいと思います。少し増えた時期があったなという印象はありますが、環境の覇権を取るほどの勢いはなかったと記憶しています。そんなウインディexデッキの各デッキとの相性はこちら。

表4-1_ウインディexと各デッキの勝率表

 ピカチュウex・その他デッキには強いという結果に。ただ、ミュウツーexやリザードンexに弱いというのが、大会シーンではかなり厳しそうですね。

 ピカチュウexに強い理由は、ウインディexの「もうかのとっしん」でピカチュウexを一撃で倒すことが出来るからだと考えます。また、ピカチュウデッキに1枚は採用される「サンダーex」もHP130であるため、サカキを絡めることでこちらも一撃で倒すこが出来ます。

 逆にミュウツーexやリザードンexは、「もうかのとっしん」で一撃で倒すことが出来ません。「もうかのとっしん」は自傷ダメが入るため、打つ回数が増えれば増えるほど不利になっていきます。

 ということで、ウインディexデッキはピカチュウexには有利であるものの、他の環境デッキに対抗することが難しく、消えてしまったのではないでしょうか。

5.採用型・不採用型と環境デッキの勝率

ウインディ採用型リザードンexデッキ
ウインディ不採用型リザードンexデッキ

 それでは、ウインディex採用型と不採用型で環境デッキへの勝率はどのように変わるかをデッキごとに見ていきたいと思います。

ピカチュウexデッキ

ピカチュウex&ゼブライカデッキ

 現環境の最強格。最近は非エク採用型ミュウツーexデッキに後れを取ることもありますが、やっぱり強い。2エネ90ダメが出せるたねポケモン「ピカチュウex」を中心とした速攻型のデッキ。「最強の遺伝子」環境は、このデッキをいかに対策するかということを中心に回ってきたように感じます。そんなピカチュウデッキとの相性はこちら。

表5-1_ウインディ採用型・不採用型とピカチュウexの勝率表

 ウインディを採用することで、全体では20%以上勝率が上昇し、有利不利が逆転するほどのすさまじい結果となりました。前述のとおり、デッキの中心であるピカチュウexのHP120ラインをウインディexで突破できることが勝率を大きく上げた要因だと考えます。

 ただ、表4-1のウインディex単体デッキに比べると、勝率が若干ではありますが、落ちていることが分かります。これは、ウインディ採用型リザードンexには「サカキ」不採用であることが多いという点が、主な原因ではないでしょうか。ウインディ採用型にはたねポケモンが多くなり、その分サポート枠を圧迫します。そのため、枠の都合上「サカキ」採用が難しくなります。

 この仮説を裏付けるもう一つの根拠として、ウインディ不採用型がライチュウ採用型には勝率が良いということも挙げられます。ライチュウ採用型には、サンダーexが1枚採用であることが多く、ウインディexがサンダーexと対峙する機会が少ないため、勝率が良くなったのではないでしょうか。

ピカチュウexデッキ(ライチュウ採用型)

ミュウツーexデッキ

ミュウツーexデッキ(非エクミュウツー採用型)

 前回の記事で考察したミュウツーexデッキ。非エクミュウツーを壁役として活用することで、サーナイトが立たなくても「サイコドライブ」を打てるという安定性も兼ねた強いデッキになりました。

ということで、ミュウツーexデッキとの対戦成績はこちら。

表5-2_ウインディ採用型・不採用型とミュウツーexの勝率表

 こちらもピカチュウexデッキ同様、ウインディexを採用することで、有利不利が逆転する結果となりました。特に非エクミュウツー採用型に関しては、11%以上勝率が上昇していることが分かります。

 非エクミュウツーはHP120であるため、ウインディexの「もうかのとっしん」で容易に突破でき、壁役としての機能が果たせなくなることが要因ではないでしょうか。

 とはいえ、ミュウツーexデッキの中心カードである「ミュウツーex」はHP150であるため、「ウインディex」でも一撃では倒せません。

 表4-1から、ウインディex単体デッキはミュウツーexに対して37.5%の勝率でした。そして、表5-2から、ウインディ不採用型リザードンex(リザードンex単体デッキとも言えますね)では、47.6%の勝率です。

 何が言いたいかというと、ウインディもリザードンexもミュウツーexに不利であるということなんです。にもかかわらず、どちらも採用したウインディ採用型リザードンexは、表5-2から分かるように、57.9%の勝率と一転して有利対面となっています。この理由は何か。

 安直かもしれませんが、デッキの事故率が軽減されたということだと私は推察します。正直、ミュウツーexデッキもウインディ不採用型リザードンexデッキも事故率が低くはありません。そこで、ウインディexを採用する、つまりリザードンexかウインディexのどちらか一方でもアタッカーを育てやすくなったことで、今まで不利だったミュウツーexデッキにも有利をつけることができるようになったのではないでしょうか。

スターミーexデッキ

スターミーexデッキ

 カスミからの爆発力は最強。カスミは1回表が出るだけでもかなり強いですよね。カスミの表裏が試合の難しさを決めるように感じます。エネ加速をサポートが担える分、ポケモンを絞ることができ、モンスターボールで狙っているたねポケモンを引きやすい点もこの構築の強み。そんなスターミーexデッキとの相性はこちら。

表5-3_ウインディ採用型・不採用型とスターミーexの勝率表

 こちらもウインディ採用型の方が勝率が上昇するということが分かりました。とはいえ、ウインディを採用しても依然として不利対面であることには変わりありません。これはリザードンexやウインディexが水弱点であることに加え、スターミーexやフリーザーexのHPが高いという点も不利であることの要因だと考えます。

 どちらもウインディexの「もうかのとっしん」で一撃で倒せないというのはかなり厳しい点です。表5-4からも分かるようにサカキを投入したところで、スターミーexには勝率が上がらないことがよく分かります。

表5-4_サカキの採用枚数とスターミーexの勝率表
※サカキ2枚採用は数が少なかったため不確か

 スターミーexはHP130でサカキ+「もうかのとっしん」で一撃で倒せるものの、HP140のフリーザーexはウインディexでは、一撃で倒すことが出来ません。フリーザーexにを中心に立ち回られると、非常に厳しい展開となります。

 ウインディexをフィニッシャーとして戦う際には、序盤でヒトカゲの「ひのこ」でヒトデマンやフリーザーexのHPを削っておくことで、楽な展開で進めることが出来るのではないでしょうか。ただデメリットとして、炎エネルギーのトラッシュが必要となることから、展開が遅くなるという点が挙げられます。この点について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。

 スターミーexには立ち回りで上手くカバーしていくことは重要とはいえ、限界はあります。そのため、スターミーexは割り切るということも一つではないでしょうか。

 幸いにもスターミーexデッキは、直近のいたち杯で10%以下のシェア率となっています。ただ、図1-1の3デッキ(ピカチュウex・ミュウツーex・リザードンex)のシェア率の推移からも分かるように、ピカチュウexのシェア率は下降傾向にあります。ピカチュウexが減少するということは、ピカチュウexを苦手とするスターミーexが増加することが示唆されます。環境終盤ではありますが、スターミーexの増減ひいてはピカチュウexの増減が、リザードンexの立ち位置を決めるポイントとなるのではないでしょうか。

第5回 いたち杯 参加人数:256名

6.ガーディ・ウインディexの投入枚数

ウインディex採用型リザードンexデッキ

 最後に、ガーディとウインディexの投入枚数について考察していきます。上記デッキリストがウインディex採用型リザードンexの一般的なデッキリストとなります。ガーディ1枚とウインディex2枚採用です。この点について、データを基に適切な採用枚数を模索したいと思います。

表6-1_ガーディとウインディex採用枚数と全デッキの勝率表
※ガーディ2枚・ウインディex1枚採用のデッキは、検証データ内からは見つかりませんでした。

 表6-1からガーディ1枚とウインディex2枚の採用が一番勝率が高いという結果になりました。表2-1の2進化までにかかるターン数の表のとおり、たねポケモンを絞ることで、目当てのたねポケモンを狙いやすいこと、またウインディexが2枚いることでアタッカーが立てやすいことが、勝率の上昇に直結しているのではないでしょうか。

 加えて、たねポケモンを削ることで、有用なサポートカードを投入することが出来ます。レッドカードやナツメなどを投入することで、優位に対戦を進められます。20枚しかデッキに投入できないからこそ、1枚の価値も他のカードゲームに比べて非常に高いです。

7.まとめ

表7-1_ウインディ採用型・不採用型と各デッキの勝率表まとめ

 今回はウインディex採用型のリザードンexについて検証してみました。データ結果と皆さんの認識に大きな乖離はなかったのではないでしょうか。また、ガーディとウインディexの採用枚数についてもデータを基に確認しましたが、ガーディ1枚・ウインディex2枚が適切だという結論に至りました。

 また、本記事の序盤にウインディ採用型リザードンexがピカチュウexやミュウツーexに影響を与えている可能性があるという仮説を立てましたが、一定の影響を与えている(メタデッキとして機能している)と結論付けたいと思います。

 本考察からも今流行っているリザードンexデッキは、非常に完成度が高いデッキだということが確認できました。また、リザードンexデッキが唯一不利となるスターミーexデッキには今後の可能性を感じました。ピカチュウexデッキの減少次第では、今後の活躍が期待されます。

 皆さんの考察や別デッキの別カード採用有無でも勝率を比較してほしい!などのご要望など、皆様からのご意見・コメントも募集しております。この記事が少しでも皆さんのお役に立てたら光栄です。ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

参考文献

  1. Limitless TCG(海外ポケモンカード大会サイト), 2024年11月~閲覧。
    https://play.limitlesstcg.com/tournaments/?game=pocket

  2. ゲームエイト,2024年12月閲覧。
    https://game8.jp/pokemon-tcg-pocket/654334



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