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黒単バーンの挑戦録 第6回パウパー神挑戦者決定戦(前編) 〜M:tG Pauperのデッキ構築を考える〜

はじめましての人ははじめまして。
すでに御存知の方はこんにちは。

2月23日に晴れる屋トーナメントセンターで行われた「第6回パウパー神挑戦者決定戦」に黒単バーンというデッキで参加してきました。

黒単バーン自体はマイナーなデッキではあるものの、現環境にある程度マッチしているデッキだと考えていて、また使ってみて面白いデッキでしたのでぜひ紹介したいと思いました。

前編は黒単バーンについての解説記事、後編は神挑戦者決定戦への参加記録として書いていきたいと思います。

デッキレシピ

デッキの特徴

バーンの名の通り、黒い本体火力(ライフロスするカードがほとんど)を連打して相手のライフを削り切るデッキです。

クリーチャーは少なめかつ小粒で、メインはスペルによるライフロスとなるので、除去やブロッカーに妨害されることはありません。

黒い本体火力のカードは同時にライフを回復するもの(君主の一噛み、大牙勢団の襲撃など)が多く、高速で安定して相手のライフを削りつつ、同時に防御手段も兼ねています。

また、黒いデッキであるが故のドローや妨害手段も備えており、赤いバーンデッキとは一味違った戦い方ができるのも特徴です。

反面、本質的にはバーンデッキであるためライフ回復をされると息切れに陥り、また本体しか狙うことのできないソーサリータイミングの行動がメインのため小回りが利きにくいという弱点はあります。
(代わりと言ってはなんですがピッチスペルのインスタント除去を2種類搭載可能です)

環境における立ち位置

現在のパウパー環境において、黒単バーンはトップメタの1つである赤単を意識した選択と言えます。
赤単に匹敵する速度を出せて、赤単相手にはかなり有利に立ち回れるのが強みです。
また、他のトップメタにもある程度優位に立ち回れると思っています。

テラー系:青単、青赤はライフ回復は持ち合わせておらずチャンプブロック等で耐えながら火力を撃てば十分に勝機あり。逆に青黒テラーは《予想外の牙》が辛いため何として阻止することが重要。

ゲート:速度で十分に勝るため相手が動き出す前に焼き切りたい。《聖なる猫》は殴らせないこと。防御手段である《虹色の断片》をライフロスで無効化できるのが強み。

グリクシス親和:アドバンテージを取りながらクリーチャーを展開するため、ギリギリ速度勝ちは出来るはず。もたついて《勢団の取り引き》を撃たれると黄色信号。

赤単が不利なデッキ、ライフ回復手段を持っているデッキに対しては基本的に不利ですが、赤単に対するメタカード《紅蓮破》《虹色の断片》などが効かないため相手の対策カードをかわしやすいのも利点です。

デッキを組むにあたってのコンセプト

今回、MOのPauper環境でオーソドックスなレシピをベースにしつつも、以下のようなコンセプトを持ってデッキを組んでみました。

・デッキ内のあらゆるカードはライフを削ることに貢献できるようにする。
 例外は相手に対する妨害だがライフロスに貢献できないカードでテンポを 失わないようにする。

・シナジーは意識するものの、シナジーが無いと機能しないカードを入れない。


結果、面白いギミックはあるものの、あくまでサブ要素であり、
いかにして最速で相手のライフを削るかが主軸になっています。

これは環境最速の赤単に速度負けないようにすることと、アドバンテージを意識して手札を溜める動きをするデッキが多いため、それらのカードを使わせる前に焼き切ることで戦術の否定をする狙いがあります。

カード解説

《夜の衝突》

ライフロスする理由は不明

黒が誇る最強火力。本体を狙うだけなら《稲妻》にも勝る性能です。
赤マナは命取りの論争の宝物、もしくはバウンスランドから確保します。
序盤に闇の旋動、ティゼルスの果実などで追放しなければいけない場合はあまり躊躇しない方が良いですが、マナを伸ばしてフラッシュバックを撃てるゲームになるかどうかの見極めが大事。

《ティゼルスの果実》

苦い実を食べる罰ゲーム

脱出付きの2点火力。夜の衝突同様、ロングゲームのオプションがあるのは嬉しい。
マナフラ受けをしながら2点ずつ削っていくのはそれなりに強いです。
反面、即効性やコストに難があり2枚以上引いても効果が薄いので1枚挿し。
手札にあって血トークンでドローに変換できるようなら率先して取り替えていくべき。

《血の署名》

夜の囁きの下位互換ではない

基本は自分を対象にして2ルーズ+2ドロー。《夜の囁き》と異なり対戦相手を対象に取り2点火力に出来るのが特徴。
デッキ内のカードは最大限ライフを削れるようにする、というコンセプトにマッチし、最後のひと押しにも使えるので優秀。

《魂の刈り取り》

特徴的な範囲に実用的な追加効果

条件付き2マナ除去+3点ライフロス。黒の呪文の事前キャストが出来れば黒い《焼尽の猛火》となり大きくゲームを傾けてくれます。
黒のクリーチャーを除去できるのも利点。
1マナの呪文やピッチスペルが多いデッキのため条件は達成しやすいものの、ソーサリー2マナのアクションで条件付きのため2枚に留めています。
インスタント除去が求められる相手には抜けていくカード。

《君主の一噛み》

5マナの君主のETB能力

黒が誇る最強火力その2。
本体を狙うだけなら《稲妻のらせん》と同じ効率の上下6点。
アグロ相手には《暴君の選択》よりも優先して撃っていくべきカード。逆にライフゲインが不要な相手にはやや効率が劣るカードになるので後回し。

《暴君の選択》

相手に選択権はない

ややこしいことが書いてあるが、1vs1では4点火力。赤でもここまで効率がいいカードはなく、決まれば大きく勝利に近づく。
反面ライフ回復は出来ないためマナが限られる場合、打ち消しを釣り出す場合などに優先順位付けが大切。

《吸血鬼の口づけ》

2マナでドレイン+血2つはかなりのコスパ

2マナ2点ドレインだが血トークンを2個生み出す。
ドローの安定化に大きく貢献し、命取りの論争の種になるアーティファクトも提供する。
最大限活用するには手札とマナが両方要るため、手札に余った土地をプレイするかは判断が必要になります。

《大牙勢団の襲撃》

1マナ2点ドレインだけでもなかなか
機体補助はこのデッキではインクの染み

ターンをかけて2点ドレイン後に2/2威迫が登場する。
非常にマナ効率が良く積極的にプレイしていきたい。変身後の2/2は非常に除去に狙われやすいので、相手によっては攻撃は通らない前提で動いた方が良い。
ブロッカー2体を釘付けにしてダメージレースを有利にできると最良。

《命取りの論争》

宝物を出す効果も重要

言わずと知れた強力ドロースペル。2マナですが宝物が出るため実質1マナと言え、夜の衝突のフラッシュバックのためにマナを伸ばすことにも貢献します。
基本的には相手の除去に狙われたクリーチャー、血トークン、余った囁きの大霊堂を生け贄にする動きになります。

《闇の旋動》

古の体ねじれているイラスト

クリーチャーを狙うだけならほぼ《稲妻のらせん》のピッチスペル。
キャスト条件は緩く、唱え終わったバーンスペルを追放していけば良いため唱えやすい。
対フェアリーなら《呪文詰まりのスプライト》を除去して実質カウンターのようにしたり《きらきらするすべて》に対応して除去したりと隙をみせないプレイングが可能。
赤単相手に時間稼ぎをするための全てが詰まった1枚。
ただし有効なデッキが限られ、本体を狙えないのでメインからの採用は最低限に留めています。

《悪性の強打》

今回のオタクカード枠

反復を持つパワー2修整+接死付与のスペル。反復のお陰で理論上1マナで4点与える呪文になるので採用。
これを付けた《鋸刃蠍》はブロックしたくないので序盤は比較的通りやすいはず。
また、インスタントタイミングで接死を付与できるのでテラー等を1マナで打ち取り返しで+2して殴ることも可能。
接死も含めた上振れ狙いのカードなので、除去が多いデッキ等、噛み合わない相手にはサイドアウト推奨。

《鋸刃蠍》

歴代トップクラスの黒1マナ生物

死亡誘発のコストパフォーマンスが異常な1/2。戦場に出して除去を浴びるだけでも十分な仕事人(?)。
ライフが少ない相手はこれが立っているだけで攻撃を躊躇してくれるので心理的圧力による防御性能も持ち合わせる。
出来れば除去やチャンプブロックに対応した命取りの論争で優位に立っていきたい。

《ジンジャーブルート》

かわいい顔してやりおる奴

地味ながら様々な仕事をできるいぶし銀。
マナはかかるものの序盤から細かく攻撃を通したり、チャンプブロックや除去に対応して大釜の使い魔の能力を起動して、1マナとしては十分すぎるほどにライフを削ってくれる。
また《きらきらするすべて》や《バジリスク門》の付いた《ジンジャーブルート》に対するブロッカーになる。
1マナ枠、食物枠ともに競合はありますが、ジンジャーブルートが相手のライフを攻めるにあたり最も効率が高そうだったので4積み。

《大釜の使い魔》

食物を生け贄に戻ってくる猫。1マナ1点ドレイン+1/1だけでもそれなりに仕事をしているので、このデッキにおいては墓地から戻す能力はオマケ程度に考えて良い。
上記を前提にすると無難な性能ではあるのでサイドとの調整枠になりがち。
ジンジャーブルートと組んでテラー相手に延々とブロッカーになり続ける動きはそこそこ強力ですが。


《やせた原野》

MH1のイラストが綺麗


サイクリングランド。基本的には2〜3枚で充分デッキが回るためサイクリングでデッキを回すが、マナが足りない時にタップインする。
《ドロス窟》は土地として利用しつつドローできるがマナが掛かるためサイクリングランドにしています。
ラクドスの肉儀場で戻せば血トークンを使用せずにドローに変換できる。

《ラクドスの肉儀場》

マナを伸ばす際に必要になる

テンポを犠牲に1枚で2マナを出すカード。戻した土地を血トークンのルーティングでドローに変換する等、カード枚数の水増しに貢献する。
夜の衝突のフラッシュバックが6マナのため、狙う場合は赤マナを含むこの土地を使ってマナを伸ばしていく必要がある。

《囁きの大霊堂》

地味にファクト破壊に注意


命取りの論争を意識してアーティファクト土地を投入。サイクリングランドとバウンスランドは土地の枚数の圧縮とマナフラ対策で調整。
アーティファクトランドで沼タイプを持たないことは良し悪しのため、相手がアーティファクト破壊を持っていそうな時や、殺しを構える際はプレイする順番に注意。

サイドボード

《強迫》

絵違い沢山。どのイラストが好き?

相手の《嵐の乗り切り》《予想外の牙》など致命的なライフ回復を落とすためにある。
それらを落とせば実質10点相当の火力になるため重要。
元々は4枚入れていたがカルニブラックはこれをやってなお不利なのと、青黒テラーは若干下火と思われるので1枚減らし。

《虚無の呪文爆弾》

バランスの良い墓地対策

墓地利用のコンボ、テラーを減速させる。
基本的には減速させるだけなのでこちらのテンポが削がれないように立ち回りたい。

《クォムバッジの魔女》

旧枠の愉快な見た目からイメチェン

フェアリー対策。フェアリーを一掃し忍者をブロックできるので除去されずに定着すればかなり有利に立ち回れる。
他に除去したいクリーチャーが少ないので《雪崩し》などを浴びがちですが、場に残れば本体火力にもなり得るため無駄にはなりません。

《悲哀まみれ》

インスタントの3マナ全除去も欲しい

様々なアグロ対策。ライフは削れないカードでトップメタに効く相手と効かない相手が混在するのでサイドに3枚。
トップデッキ頼みなので占術もかなり重要。

《殺し》

Pauperを象徴するカードだが高騰中

テンポを削がない万能除去。
ライフは回復できるので気軽に撃ちやすいが、ブリンクしようとする《黎明運びのクレリック》などライフレースで致命的なカードをしっかり狙いたい。

《税血の刃》

強い事しか書いていない

ほぼカルニブラック相手ピンポイント。
植物トークンを除けばクリーチャーの数が限られ、しかもクリーチャーによるビートがメインの勝ち手段になるため、布告除去はそれなりに仕事をします。
また、相手の税血の刃の作製に対抗してこちらも作製する「税血返し」によってロングゲームを優位に運ぶことができます。

採用検討枠

採用を検討したが入れなかったカードについても触れたいと思います。

《レンバス》
元にしたレシピではジンジャーの代わりに入っていましたが、相手のライフを削ることが出来ず軽いわけでもなくコンセプトには合わないので外す。

《シェロブの待ち伏せ》
食物枠候補。
悪性の強打と同様接死が優秀ですが、4打点の悪性の強打を発見してしまったため外れる。

《血管の施し》
黒単バーンを組む場合によく入るカードですが、素撃ちのパフォーマンスが悪くシナジー前提の動きになるので採用外。

《墓所のネズミ》
全体除去枠。
3以上のタフネスにも対応しているがマナがかかることと、本体にもダメージが入るので善し悪しがある。赤単の速度に間に合わせるために悲哀まみれを優先。

《望み無き悪夢》
エルドレインの王権で登場した新火力。
当初はその異常なコストパフォーマンスが注目されていたが、高速デッキである黒単バーンでは1枚ハンデスを活かしにくく、むしろテラー等の展開に寄与してしまう危険性もあるため不採用。

《不正相続》
4マナと重いが継続的にドレインを行えるため、ロングゲームになるカルニブラック対策として検討。
相手も《税血の刃》の裏面で継続的にドレインをしてくるため、その影響を相殺するために使おうと思いましたが、税血の刃の除去性能を当てにするため税血を採用。

《腐臭の地》
スレッショルドで全体1点火力の土地破壊。ゲート対策ピンポイントで、スレッショルド達成時のゲートに対する効果は非常に高いが、安定してスレッショルドを達成できるではないことと、サイドとしてピンポイントすぎるので外れる。

《押し寄せる砂》
こちらは本体にダメージが入るタイプ。
腐臭の地よりも安定するが、やはりピンポイントで、ゲートは特別苦手ということもなく悲哀まみれもあるため土地破壊自体を外す。

《侵入者への呪い》
特定の状況下で2マナ3点を超えるパフォーマンスを発揮するため、カルドーサ相手のサイドとして検討したが、後引きすると辛そうなので今回は採用外。

総括

今回の神挑戦者決定戦は、メタ読みと体力面(8回戦を戦い抜くには意外と重要)から黒単バーンを握りました。

黒単、そしてバーンゆえの利点と欠点が分かりやすいデッキではありますが、火力をプレイする順番やドロースペルを撃つタイミングなど、プレイングが介在する余地は沢山あり、ギリギリのライフの奪い合いが楽しいデッキとなっています。

後編は神挑戦者決定戦への準備と、実戦での結果についてレポートしていきます。

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