黒単バーンの挑戦録② 第8回パウパー神挑戦者決定戦 〜M:tG Pauperのデッキ構築を考える〜
はじめましての人ははじめまして。
すでに御存知の方はこんにちは。
9月28日に晴れる屋トーナメントセンターで行われた「第8回パウパー神挑戦者決定戦」に黒単バーンというデッキで参加してきました。
デッキ紹介
デッキレシピはこちら。
黒単バーンに関する解説記事、および第6回神決の記録はこちら。
今回は各カードの細かい解説は省き、変化した点のみ説明していきます。
構築については以下の変化が大きいです。
サンダージャンクションの無法者の《不吉な前兆の鴉》《鋸歯のやせ地》追加
悪事を働くと1点ドレインを行い、1/2飛行という優秀なスタッツを持つ《不吉な前兆の鴉》と、その鴉とも相性が良く、ライフをいち早く削ることが出来る土地=サンダーランドが追加され、より直接的にライフを狙える構築ができるようになりました。
メインからの妨害札の増量
黒単バーンに許された強力除去《魂の刈り取り》をフル投入し、安定して沼がセットできることを活かした《殺し》、墓地にカードが溜まるので《闇の旋動》もメイン採用しています。
除去を増やしている理由として《日を浴びる繁殖鱗》を使うグリザードコンボなど盤面ノータッチだと死ぬデッキが一定数存在すること、ピッチスペル2種は自分の動きを阻害せず相手の虚を突くことができ、やはり強力だからです。また「緑でない」「黒でない」の条件も無色、赤、青のクリーチャーが隆盛しているため突破しやすいです。
各デッキとの対戦相性
カルドーサレッド
直近のダスクモーンで強化を受けている、速くて強いデッキということでおそらく最多だろうと踏んでいました。
黒単バーンはカルドーサにはかなり強く、ブン回りさえなければほぼ完封できることもあります。
(そのブン回りの頻度が多いのですが……
青単テラー
ライフ回復手段がなく《謎めいた海蛇》《秘密を掘り下げる者》は除去で対応可能で比較的有利です。相手が回り出す前に焼き切りたい。
グルールエルドラージ
《東屋のエルフ》さえ止めてしまえば速度は間に合うはず。ピッチで《殺し》を積極的に当てたい。
《魂の刈り取り》が効きにくいが《のたうつ蛹》には当たるので諦めない。
トランプル持ちはチャンプでしのげないので盤面展開されると厳しい。
サイド後は全力で《嵐の乗り切り》を落としに行く。
グリザードコンボ
最速で決められると流石に厳しいが《殺し》はあるので対抗できないわけではない。
繁殖鱗には《魂の刈り取り》も当たる。
アド稼ぐ動きをされてもその間に焼き切ってしまえばよい。
サイド後は全力で《嵐の乗り切り》を落としに行く。ついでに《サディスト的喜び》を落とせれば御の字。
グリクシス親和
アドを取って盤面で優位に立つデッキなのでやってる間に焼き切る。
《勢団の取り引き》での7点ゲインが鬼門なのでされないように立ち回ること。
青黒テラー
青単テラーから一転辛いマッチアップ。
《トレイリアの恐怖》《グルマグのアンコウ》が除去しにくく《予想外の牙》もあるためかなり厳しい。
《強迫》で相手のプランを崩していきたい。
青×フェアリー系
《呪文詰まりのスプライト》が当たりやすいので苦手と言われていたが《不吉な前兆の鴉》の登場により多少相性が改善している。強力なブロッカー+打ち消されないダメージソースなので大事にしたい。
相性は青赤>青単>青黒の順に有利で、特に青黒は《無孤勢団の伏兵》が採用されているとかなり厳しい。
ブラッドバーン
《目標の強奪》を得たため増える予測はあり。
デッキとしての特徴は後述するので、対戦相手として。
あちらが得意とする盤面コントロール力はこちらにはあまり通らず、しかし8枚のドレインがあるので持久戦に持ち込まれると厳しい。
こちらの方がドレイン枚数は多いものの、相手の土俵に立つとこちらが持久力で負けるので速く焼き切ることを目指すべき。
お互いの引き次第という面もある。
ブラッドバーンという存在
黒単バーンを持っていくことを決める前は、ブラッドバーンを練習していました。
ブラッドバーンは回った時の速度と持久力を両立したデッキです。
基本のカードでライフ回復が出来て飛行クロックも粘り強いため中速のダメージレースに非常に強く、火力での盤面干渉も容易です。
一方で、火力を溜め込んで2桁ライフを削る爆発力も備えており、環境デッキに負けないだけのスピードは持っています。
この爆発力は《目標の強奪》により加速し、マッドネスを絡めてアドバンテージを稼ぎつつ5点のライフを削るという最早理不尽と言える動きが可能になっています。
(そして、神決の結果を見る限りそれは功を奏しているように見えます)
黒単を握った理由
黒単バーンとブラッドバーンは、《吸血鬼の口づけ》《血管の施し》など共通するカードも多く、一見似たようなデッキなのではないかと思われますが、両方使ってみてかなり違うデッキだということが分かりました。
①速度
ほとんどのカードが1~2マナで唱えられて、ライフを攻めるカードで構成されている黒単バーンはカルドーサレッドの速度帯に負けない「速い」デッキです。
ブラッドバーンは2マナのドローカードを絡めながら4ターン目位からエンジンがかかるデッキなので、目標にしているゲームレンジがだいぶ違います。
②持久力
ブラッドバーンは手札を切らさずに走り切ることもできる持久力がありますが、黒単バーンではドローのアクション自体が遂行スピードの低下につながらないよう、ドロー枚数は抑える必要があると思っています。
ライフ回復力はあるためダメージレースという意味での耐久力はありますが、息切れした場合はトップ勝負にならざるを得ない場合もあります。
③盤面干渉力
黒単バーンでは《殺し》を取ることができ、ピッチコストの4ライフも回復があるため比較的楽に支払うことができます。
《魂の刈り取り》も盤面に触りつつ本体を削れるため重要です。
ブラッドバーンの盤面干渉は火力で、本体へのダメージも期待できるため腐りにくい、インスタントの柔軟性が強力な一方、どの対象にいつ当てるかの判断が難しく、また高タフネスが除去しにくいといった課題があります。
④安定感
確実性の高いダメージソース(「黒い」「ライフロス」のカード)を主体にしていて、カード同士のシナジーに依存するのが《不吉な前兆の鴉》くらいであるため、中盤くらいまでは非常に動きが安定しているデッキです。
ここはアーティファクトシナジーを多用し《目標の強奪》など赤いカードが中心で、シナジー前提カードの多いブラッドバーンに比べて大きく優れている点だと言えます。
怖いのはライフゲイン、特に《嵐の乗り切り》《勢団の取引》《予想外の牙》あたりになるため、これを全力で落とす《強迫》をフル投入しますが、それ以外の対策は刺さりにくいためかなり相手を選ばず戦えると言えるでしょう。
大型大会を戦い抜く武器としてのデッキ選択
神挑戦者決定戦に参加するにあたって、自分というプレイヤーがそれなりに勝つためにはどんなデッキを握るのが良いかと考えてみました。
・全7~8ラウンドの長期戦になり、体力、メンタルの面から試合時間は長くならない方が良い。
→元々プレイが遅いのもあり、中速より遅いデッキでは時間との戦いになることは想定できたので、速いデッキを握りたかった。
・平日大会に参加することは少なく、練習の回数をとることが出来ない。
→複雑なデッキやメタ読みが求められるデッキは避け、できるだけシンプルなデッキを選択する
・どんな相手に当たってもそれなりに戦えるデッキを使いたい(=すべての試合を楽しみたいという嗜好)
ブラッドバーンをはじめ、候補はいくつかあったものの、
前回の神決でも握った黒単バーンがやはり条件に合致していて、モダンホライゾン3以降の環境でもまだまだ戦えると信じて臨みました。
大会の結果
大会の結果はいつも通りの3ー4。
各試合の運びは簡単にレポしておきます。
R1 カルドーサレッド1-2 ※何故かフィーチャー席
テーブル番号2の偶然にもフィーチャー席での初戦。
吸血鬼の口づけの血トークンの発生忘れでジャッジを呼ぶことになったりで、
想定外の緊張があったかもしれません。
お相手は仮想敵のカルドーサレッドでかなり有利に試合運びもできたものの、あと一歩がおよばず。
R2 親和2-1
スタンダードなグリクシス親和。スピードでは勝るため《勢団の取り引き》を撃たれた試合は負け、撃たれなかった試合では何とか差し切る。
常にギリギリ。
R3 ブラッドバーン1-2(うどんさん)
赤バーン使いとして有名なうどんさんは今回ブラッドバーンでの参戦。
一般的な構築ならドレインの枚数ではこちらが勝るのですが、固めて引かれてしまうとジリ貧になり継戦能力の高いの多いブラッドバーンが有利になります。
《目標の強奪》はやはり強かった。
R4 カルニブラック0-2
お相手は食物軸のカルニブラック。
1戦目は壮絶なバーンvs食物でのライフゲインの壮絶な争い。残り1まで削った時点でトップ勝負になり4ターン位有効札を引けずに敗北。
2戦目は土地が1で止まり完全に事故。
R5 ブラッドバーン0-2(とりにくさん)
私が学マスの沼に落ちた原因となったひとりのとりにくさんとの対戦。
大会中もブラッドバーンの良し悪しを話していて、回り次第のデッキだという話をしていてまさしく吉と出るか凶と出るか。
序盤はライフで優位に立つものの、相手にもドレインがあるため削り切れず持久戦に持ち込まれる。
お互いサイドが刺さりにくく同じ試合運びでストレート負け。
ブラッドバーンは思った以上に苦手なのかもしれません。
R6 青黒フェアリー2-1
負け越しは避けられないラインに。
サイドボード後は《無孤勢団の伏兵》を展開されて1本ロスしたものの3戦目は上手く試合を運べて勝利。
R7 親和2-0
お相手の事故もありましたが《勢団の取り引き》を使わせたり捌いたりで無難な試合運び。
負け越しが決まってからの連勝で3-4というあまりにもいつも通りの戦績でしたが、Tierデッキともしっかり戦えており「想定通り」の結果は出せたような気がします。
まとめとこれから
黒単バーンは、大型大会に臨むにあたっての自分の軸をしっかり満たすことのできる、ある意味で現時点の理想のデッキと言えたと思います。
そして、勝ちパターンと負けパターンについてもある程度予測できる展開になったので、戦果はともかく、黒単バーンというデッキと共に走り抜けた満足感はありました。
しかし、想定通りの戦績を「想定以上」にしていくにはデッキパワーがやや足りていないと感じています。
具体的に言うと僅かにライフゲインされただけで速度不足に陥るため長期戦になり、アド差で負けるというパターンになりやすいと感じています。
上記のパワー不足を補うこと、そして「ライフゲインに寄りすぎていない、ダメージレースをする環境」が上手く合致すれば、まだまだ戦えるデッキだと思っていますので、引き続き研究していきたいです。