昭和湯
まさかいまになって銭湯に行くとは思わなかったな。
厳密には行けると思わなかった。
広く考えてみると、行けないことはない。
抱っこしてもらったり、担いでもらったり、お風呂用の車いすを用意したり。
まあでもそこまでするのもけっこう労力や勇気がいる。
だから人生の選択肢のなかで「銭湯に行く」というものがなかったわけで。
ぼくは「No」とはあまり言わない性分で(言えないわけではない)誘ってくれたから、いっかい行ってみようかなという感じで、小学校2年生以来、人生で2度目の銭湯へ。
尼崎の「昭和湯」
ダウンタウンもよく行ってたとか行ってなかったとか。
80年代の歌やら、時代劇やらで映像は見たことあったので、行く前はしこたまイメトレ。
入り口、段差は低いけど階段。
下駄箱があって、男湯女湯が分かれてて、男の暖簾。暖簾くぐるところも10センチくらいの段差。
ひゃー、テレビで見たのとおんなじ!
暖簾くぐると番頭さんの台、脱衣場、茶色い革のソファー、扇風機、すっぱだかのおっさんたち。
まず階段は、車いすのうしろを担いでもらって、下駄箱前で車いすからずり降りて、匍匐前進で脱衣場まで。番頭さんの視野には入れない。
家やったら自分専用超使いやすいイスがあるけど、まず座るとこがない。
ので、寝っ転がったまま服を脱ぎ脱ぎ。
脱衣場の床がコンクリートやったらたぶん背中お腹の皮膚はボロ雑巾のようになってたやろな。
さあさあいざ浴場へ。
まず浴場の入り口に亀の子たわしみたいなマットがひかれてて、むっちゃ背中とケツが痛かった!ほんまに痛かった!
そうそう、裸になると匍匐前進はしにくい(そないにたいそうなもんやないけど、むしろしたくない!)
なので、後頭部・背中・ケツ・かかとで進んでいくの。
浴場の入り口入ってすぐのところで体洗ってたおっさんに「おい、だいじょうぶか??」と言われ、わろた。
一応解説しておくと、そらそうやで。浴場で寝転がってるやつおったら心配もされるで。すごい素直な素の生の声やと思った。
自分の体を洗うイメトレができてなかったし、事前勉強不足で、銭湯へ手ぶらでいってたので、とりあえず寝そべってるぼくにシャワーをぶっかけてもらって、ごしごし。
さー、浸かるぞ!
浴槽もいっぱい種類があった。いちばんでっかい浴槽でも右が熱め、左がぬるめとかも別れてるんだと。
あと水風呂は別でちっちゃめの浴槽。あとサウナ。電気風呂。
動くので必死のパッチやったけど、見るものぜんぶ新鮮。
あと関西の銭湯は、大浴槽は階段式。浸かるまでに一段かましてくれてるのがぼく的にはありがたい。
まず一段目に腰かける感じ。次に浴槽のへりによじ登る(平均台に乗る感じでバランス命)。そこから下半身から滑り落ちるようにザブン。
あとは浮力さんが助けてくれる。けど助けられすぎるとどこかへ流されていきそう。まるでどざえもん。
なにゆうてもうあっついあっつい。家ではだいたい37度の湯に浸かってるから、もうあっついあっつい。
まあお決まりな感じやけど、浴槽からあがるときバランス崩して頭から突っ込みかけた。やけどナイスキャッチングしてくれて助かった。(ほんまに「あぁ〜〜・・。」しか言えんかった)
軽くのぼせて、再び脱衣場へ。
番頭のおばちゃんが「大丈夫?救急車呼ぼか?」ゆうて、またわろた。
一応解説しておくと、そらそうやで。風呂からあがってきて寝っ転がってるやつおったら、のぼせて倒れてる思うわな。純粋に心配してくれたんやろなと思いたい。
あんまりない話らしいけど、銭湯のバスタオルをもらった。金払わずにもらった。
一生の宝物にしようと思った、人生ほぼ初の銭湯でしたとさ。