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怒る教頭会と怒りの感じられない教職員組合 ~共同実施導入からセンター化&事務職員無配置校激増に至った大分県の事例

学校事務の共同実施について調べている中で、「大分県公立学校教頭会」作成の報告資料に行き当たりました。

http://oita-ktk.com/downroad_files/jimu2022/jimu04.pdf


「令和3年度 全国公立学校教頭会の調査~全国と大分県の比較~の分析」と題されたこの報告では

・当然と思われることが大分県はできていません

・文字どおり、大分県はワーストワンです

・この原因は大分県教育委員会

・まさに、「無理が通れば道理が引っこむ」です

・全国的には全く評価されていません

と、大分県教委によるある施策を厳しく批判する言葉が並びます。

管理職集団である教頭会の報告としては異様とも映り、労使癒着のへたな教職員組合よりよほど痛烈です。


問題の施策というのは、大分県教委が義務標準法の定めを下回る、独自の事務職員配置基準を設けていること。

その結果、大量の事務職員無配置校が生み出され、教頭による事務職員兼務という状況がもう10年以上生み出され続けています。


義務標準法上の事務職員配置基準では、3学級の学校で3/4人、4学級以上の学校で1人、配置することとなっています。

それに対して大分県の基準は学級数ではなく児童生徒数でみることとし、250名以上の学校にフルタイムの事務職員を配置、80名~249名の学校には非常勤職員を配置、というものです。


加えて言えば、事務職員無配置校で新任の教頭が配置される学校については4月の1月間のみ、賃金職員を1名配置する、とされています。

このことは、事務職員無配置校においては教頭がそれを兼ねることを前提とした定めと、みることができます。

http://oita-ktk.com/downroad_files/jimu_06.pdf
(ちょっと古いですが…「平成30年度 事務職員等配置基準」)


大分県公立学校教頭会によれば、学校事務職を兼務している教頭の割合は全国では小中とも1%のところ、大分は小35%・中31%。

県ごとの該当校数では、小で福島10、鹿児島7、山梨6、愛媛5に対し大分83。中で福島7、北海道5、新潟・徳島4に対して大分35だといいます。まさにけた違いのワーストぶりです。
(大分も含めここに挙がった道県は比較的教職員組合の組織率の高いところが目立つのも興味深いところです)


こうした状況に教頭が怒るのも当然です。

同時に学校事務職員の立場から見れば、本来配置されるべき事務職員の配置がそれだけネグレクトされているということを意味します。

これは学校事務をひどく軽視するものであり、事務職員にとっても大きな問題です。


それにしてもなぜこんなことになったのでしょう。

このような状況に至るには、学校事務の共同実施がその導入路となりました。


「臼杵市立臼杵学校支援センター」のホームページに、その経緯がわかる大分県教委通知の抜粋が掲載されていました。

usukijimu.jimdofree.com

大分県では2006年に、学校事務の共同実施が全県的に導入されました。

効率的事務処理と教育支援、そして人材育成・活用を目指したものだといいます。

しかし、その後早々にこれらの目的を達成するうえでの共同実施の限界感が意識され、そして何より財政の有効活用が新たに目された末に、2010年に「学校支援センター」が設置されることとなりました。

これと同時に、共同実施はその役割を終えたものとみなされ、必要な機能を学校支援センターに移して消滅したものと推察されます。


学校支援センター設置に伴い、学校事務職員はセンターに引き上げられるとともに、義務標準法を下回る大分県独自の事務職員配置基準が策定されました。

250名未満の学校には非常勤事務職員のみを置き、80名未満の学校には一切の事務職員を配置しない、無配置校における学校事務は教頭が兼ねる、というものです。

この経緯は学校事務の共同実施が、学校事務のセンター化=事務職員定数崩し=事務職員削減合理化=教頭による兼務=いびつな学校運営体制の、露払いとなったことを意味します。


効率的事務処理、教育支援、人材育成・活用。

目的として掲げられるこれらの理念を、肯定的に捉える方は少なくないと思います。

私とて、それらを一概に全否定する気はありません。というか学校事務業務について、効率的に処理することによって負担を軽くしたり、必要な知識等を正しく身につけて正確に学校事務職務を遂行できるようになることは、何よりも当の事務職員にとって有益なことであると思いますので、その限りにおいては私も肯定します。


ただ。

今もなお共同実施や共同学校事務室を設置する必要性・意義として語られるこれらの理念の先に、教頭会をしてその県の学校運営体制を「ワーストワン」と言わしめ、県教委に対して「無理が通れば道理が引っこむ」と言わしめる状況が作り出されたことは、重く重く捉えるべきでしょう。


学校事務の共同実施・共同学校事務室を推進する人たち、組織レベルで言えば日教組や全事研ですが、その方々はこういった問題をどう考えているのでしょう。

日教組あたりは「教職員組合がグリップするから大丈夫」とでも言うのかもしれませんが、大分県は日教組の組織率が高いところです。


今年8月にオンラインで開催された日教組全国学校事務研究集会では、大分県日田市から発表があったそうです。そこで日田市の状況として、小中合わせて30校中実に22校が事務職員無配置という報告もなされたといいます。にもかかわらず、発表内容そのものは「よりよい就学援助制度をめざして」なる演題。


「よりよい就学援助制度」を目指すことそのものを否定はもちろんしません。

しかし、組合としてまずやるべきは「よりよい事務職員配置体制をめざして」、いやそれよりもっと手前、「法に基づく事務職員配置体制をめざして」でしょう。全国集会でなすべきは、大分県における事務職員配置基準の不当性であり、それがいかにして生み出されたかという教訓を共有することでしょう。


これは推測ですが、大分県教組は、少なくとも06年の共同実施導入には、積極的に賛同・推進したのではないでしょうか。

学校支援センター設置に対してどうであったかはわかりませんが、現在のような悲惨が事務職員配置体制=学校運営体制を招いた責任の一端が、確かにあるのではないでしょうか。だから今の事務職員配置基準を、当局の横暴として声高に批判・否定することができないのではないでしょうか。

私などは、過去は取り返せないのだから方針の過ちは過ちとして認めて反省したうえで、改善に取り組むべきだと思いますが。


いずれにせよ、他県にある私たちは大分県の経緯を十分に教訓化し、学校事務の共同実施・共同学校事務室導入の動きに相対していかなければいけないと考えます。


川崎市教委も、将来の共同実施導入を否定はしていません。

川教組事務職員部は当局以上に共同実施推進の姿勢です。

私は、所属する学労川崎で共同実施反対の論陣を張り、今後も導入させない取り組みを続けていきます。


そもそも私が学労に入った最大の理由は、「共同実施はダメだ」ということです。そう簡単に引けません。



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