Excelで本当に理解すべきこととは
ITサポーターTsuchidaの土田です。私は起業する前に、パソコンの講師をやっていて、WordやExcelを教えていました。講師をしていた時に、テキストやカリキュラムに非常に疑問に思っていました。パソコン教室で教えることって、教えやすいシナリオで作成されていることと検定合格のためのものです。教える時にはこれは役に立ちますと言わなければいけないのですが、実際に実務ではそんなに役立たないのです。
私はLotus1-2-3の時代から表計算ソフトを知っているので、Excelの新しい便利な機能にはそれほど関心がありません。初期の頃からある標準的な機能を使えば効率的なことを、便利な機能を中心に教えることに非常に疑問を感じていました。
私がExcelを使うにあたって、重要なExcelの基本は2つだと思っています。
1つ目は、セルに扱うデータには文字列と数値の2種類があるということです。これはパソコンの講習で最初でちょろっと紹介しますが、これはとても重要なことです。文字列と数値の違いは計算できるかどうかなので、文字列と数値の違いが理解できていないと関数を使うときに上手くいきません。計算以外に、文字列はセルの左詰めに表示され、数値は右詰めに表示されたり、0から始まる数字を数値で取り込むと0が消えてしまうなど、文字列と数値には明確な違いがあります。だた案外紹介されないので、セルの書式設定で表示形式を設定する場合に、表示形式に影響されないのが文字列(一部例外はあり)で、表示形式に影響されるのが数値です。この違いを理解できていない人は意外と多いのです。
2つ目ですが、セルには複数の情報を持っているということです。この情報をプロパティと呼びます。複数のプロパティの中で大きく分けると、数式(Formula)・値(Value)・書式(Format)です。細かく言うと、書式の中に、表示形式・フォント・文字の色・罫線などがあります。Excelでセルに表示されているのは、値と書式の組み合わせであるということです。セルに複数の情報があるということで最もわかりやすい例を下に書きます。
例.
セルに「=TODAY()」という文字列を入力し、TODAY関数を入力します。すると表示されるのは今日の日付(2021/9/18)が表示されます。そのセルを選択している状態で、数式バーを見ると=TODAY()と表示されています。
このセルのプロパティは次の通りです。
数式:=TODAY()、値:44457、表示形式:yyyy/m/d
Excelの機能として日付関数を入力すると、値が1900/1/1からの何日目というシリアル値になり、表示形式も関数に応じた表示形式が設定されます。
セルには数式・値・表示形式などの書式のプロパティがあってそれぞれの設定でセルが表示されることが理解できると、関数やVBAを使うときにも理解が深まります。私はExcelを理解するうえで一番重要なのは、セル・列・行・シートをオブジェクトと呼びますが、オブジェクトごとに複数のプロパティがあり、プロパティにどのような状態になっているかを理解することです。
初心者はExcelの操作ばかり覚えようとしますが、Excelの基本は操作ではなく、文字列と数値の違いとオブジェクトのプロパティを理解することです。実はある程度Excelを使いこなしている人でもこの理解ができていないケースをよく見かけます。代表的なのは、計算結果の誤差です。割り算を使うと、割り切れない部分は小数点以下が出るのですが、表示形式で小数点を表示していないと、小数点以下の数字に掛け算をすると見かけでは誤差に見えます。割り算って、ROUND関数やINT関数を使わないと小数点以下が出るので、関数で小数点や小数点以下のどこかできちんと丸める必要があります。ヘルプデスクをやっている頃に、誤差が出るという問い合わせの多くが割り算を小数点以下があるにもかかわらず、表示形式で整数だけを表示していたため、小数点以下の数値を掛け算して合わないというものでした。これって按分計算でよくあることです。
今回はExcelの基本を紹介しましたが、パソコンの講習のExcelの無駄な教え方を、初心者用と上級者用では教え方を分ければいいという持論があります。初心者にはExcelでいかに入力作業を早くするかに特化する講習に絞り、上級者向けには処理を自動化するVBA講習です。関数やピボットテーブルはどこでもやっているので、本当に必要なのは初心者向けの入力特化講習と上級者向けのVBA講習なので、次回は初心者向けの入力特化講習について書くつもりです。