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【工事中】論理的思考 5つの基本

注:書きかけですが一旦公開します。

はじめに

ITエンジニア(注:ITコンサルタントを含む)の必須スキルとして、論理的思考(Logical Thinking)があります。私もそう教わってきたし、多くの人もそう言います。Web記事でも多数書かれています。たとえば、次です。

Web記事や書籍などで書かれていることは、間違っていないと思います。しかし、私にとって8年くらい前までは、論理的思考で学んだことが役に立ちませんでした。

たとえば、次があります。

  • 論理的思考を構成する要素の一つ「物事に筋道が通っている」は、ITエンジニアの現場では当たり前のこと。論理的思考を学ぶまでもない。それに、論理的思考だけでは、何をもって「筋道が通っている」と言えるかは分からない。

  • ロジックツリーは、ITエンジニアの現場で役立つ場面がほとんどない。

  • システム要求・要件定義やソフトウェアテストなどの場面では、MECEのように「漏れなく網羅する」ことは不可能。

    ※ロジックツリー、MECEとも論理的思考で使う代表的なフレームワーク

ITエンジニアの現場では、論理的思考を実践で使える場面がほとんどなく、論理的思考について時間やお金をかけて学ぶだけ無駄だと感じていました。

その無駄だと感じていたことを払拭したのは、次の本(以下、参考書籍)を読んでからです。

 『そもそも「論理的に考える」って何から始めればいいの?
   ― 考える力が身につく「数学的思考」の授業』
  (深沢 真太郎/著、日本実業出版社/出版)

払拭した理由は、参考書籍が「数学的思考」に基づいており、コンピュータが数学と相性が良いため、と思っています。

参考書籍で学んだことのうち、ITエンジニアとして特に役立つ次の5つを、私は論理的思考の基本としました。

  1. ゴールを決める

  2. ゴールから考える

  3. 線でつなぐ

  4. 3つ挙げる

  5. 表で整理する

5つの基本について以下にまとめました。なお、IT基礎との関連については別の記事で書きます。

論理的思考 5つの基本

1.ゴールを決める

【参考書籍から抜粋】

図1-1:何かを考えるときはテーマを設定する
図1-2:ゴールを決める

【私の補足】

  • 「ゴール」を、必要に応じて「目的」や「テーマ」、「結論」、「解決対象」などに置き換えて使います。

  • 「ゴール」には、達成できないが目指す対象も含みます。
     例)「究極の料理」、「理想的なキャリア」、など

【適用例】
基本1「ゴールを決める」にあたる主な例を挙げます。

  • ビジネス・マナーの一つ「結論から述べる」

  • ロジックツリーの起点(解決対象など)を決める

  • 仮説思考の起点となる「仮説」を決める

2.ゴールから考える

【参考書籍から抜粋】

図2-1:ムダなことをしないために逆から考えよう
図2-2:ゴールから考える

【私の補足】

  • ゴールと前提条件を適切に組み合わせて考えます。

【適用例】
基本2「ゴールから考える」の適用例については、基本3の適用例を参照。

3.線でつなぐ

【参考書籍から抜粋】

図3-1:線のない状態、線のある状態とは?

 三段論法は、基本3「線でつなぐ」の応用です。

図3-2:三段論法は、”線”でつなげる考え方
図3-3:三段論法の例
図3-4:線でつなぐ

【私の補足】

  • ゴールと前提条件および必要な要素をつなげます。

  • ゴールと直接または間接的につなげます。
    なお、「間接的につなげる」とは、「前提条件と要素をつなげる」や「要素間をつなげる」を指します。

  • 実践では、基本1~3を組み合わせることも多い。

  • 三段論法を使って報告や説明などで述べる場合、図3-3の表現ではなく、図3-5のように変えて使います。三段論法で習ったとおりに使わないように注意しましょう。

図3-5:三段論法を実践的な使い方に変えた例

【適用例】
基本3「線でつなぐ」にあたる主な例を、比較、構成および変化それぞれの視点で挙げます。

  • 比較:「大 - 小」「高 - 低」「前 - 後」「利点 - 欠点」「過去 - 現在 - 未来」など

  • 構成:「コンピュータ - 部品群」「損益計算書 - 勘定科目」など

  • 変化:「体重 - 時間変化」「売上高 - 時間変化」など

基本1~3を組み合わせた主な例を挙げます。

  • 結論を述べ、その根拠や理由を挙げる。さらに具体的な情報も追加する。
     ※「線でつなぐ」表現にすると、次になります。
       「結論(=ゴール)- 根拠や理由  - 具体的な情報」

  • ロジックツリーや仮説思考において、起点から要素や部分に分解する。

  • 「文章のテーマ」(ゴール)に対し「章 → 節 → 項」の形式でまとめる。
     ※本の目次も同じ形式です。

なお、最後の例のような形にまとめることを、一般的に「構造化」または「体系化」と呼びます。ITエンジニアの場合、大事な基礎「構造化設計」などで使います。

4.3つ挙げる

この基本は帰納法の応用です。参考書籍も帰納法を使って説明しています。

【参考書籍から抜粋】

図4-1:帰納的な考え方とは
図4-2:帰納的に考えるメリット
図4-3:3つ挙げる

【私の補足】

  • 基本3「線でつなぐ」と同様、ゴールと直接または間接的につながる3つを挙げます。

  • 3つ挙がらない場合は、考慮漏れがないか十分に検討します。思いつかない場合は、他の人に意見を聞いたり相談したりして3つ挙げる努力をします。

  • 4つ以上挙がった場合は優先度をつけて3つに絞るか、3つに集約します。
     ※この集約で使う技術として「ラベリング」があります。
      詳しくは、次の書籍を参照してください。
       『エンジニアを説明上手にする本
         - 相手に応じた技術情報や知識の伝え方』
        (開米瑞浩/著、翔泳社/出版)

  • 挙げた3つを何らかのルールに基づいて並べます。一般的には、言いたいことや重要なことから並べるか、「松竹梅」のようなフレームワークに従います。
     ※何も考えずに並べると「考慮が足りない」と感じる読み手もいます。   
      注意しましょう。

【適用例】
基本4「3つ挙げる」にあたる主な例を挙げます。

  • 「ポイントは3つ」の型
     これは多くの方が本などで書いています。たとえば、次の本です。
     『コンサル思考術100の法則
      ― ビジネスパーソンにも必要なコンサルタントの思考と仕事』
      (大嶋祥誉/監修、日本能率協会マネジメントセンター/出版)
     『伝え方図鑑 ― 当てはめるだけで「結果」が変わる!
      コミュニケーション・フレーム73』
      (井手やすたか /著、SBソフトクリエティブ/出版)

  • 一般的なフレームワーク「松竹梅」
     たとえば、提案する場合に、採用してほしい案を「竹」とし、「竹」案より便利だが高価な「松」案、「竹」案より不便だが安価な「梅」案を一緒に提示します。
      注)これは、私が新人の時に先輩から教わりました。

  • マーケティングで使うフレームワーク:「3C分析」、「STP分析」

  • 管理会計や在庫管理などで使うフレームワーク:「鳥の目、虫の目、魚の目」、「ABC分析」、など

5.表で整理する

【参考書籍から抜粋】

図5-1:整理方法の比較
図5-2:整理の切り口が複数あった場合の整理方法
図5-3:表で整理する

【私の補足】

  • 一般的なフレームワーク「ポジショニング・マップ」のように、表形式以外に「2軸で整理する」も含みます。

  • MS Excelのピボットテーブルのように、ある表(テーブル)から別の表(クロス集計表など)をつくる場合も、基本5に含みます。図5-2が該当します。

【適用例】
基本5「表で整理する」にあたる主な例を挙げます。(上記補足を除く)

  • MS Excelのピボットテーブルで使えるような表をつくる。
     ※そうでない場合は、単に列挙した一覧と変わりません。

  • 経営で使う一般的なフレームワーク:「SWOT分析」「アンゾフの成長マトリクス」「PPM分析」「PM理論」など

  • 普段の仕事で使う一般的なフレームワーク:「重要度/緊急度マトリクス」「ジョハリの窓」など

応用力を上げるための留意点

一般的に、基本を学んだだけでは実践力は上がりません。それは論理的思考でも同じです。実践力を上げるために必要な留意点をいくつか挙げます。

留意点1:論理的思考だけでは「ゴールの正しさ」は分からない

基本1~2の「ゴール」には、「間違ったゴール」も含まれます。間違ったゴールから考えて基本3~5を使っても、期待に沿う結果は得られません。

「正しいゴール」にするためには、論理的思考だけでなく、「批判的思考」(Critical Thinking)や「水平思考」(Lateral Thinking)も組み合わせたり、前提条件を見直したりすることが大事です。

留意点2:既存の知識や経験だけに頼らない

いまはVUCAの時代と言われます。具体的には、
 環境が変化しやすい(=変動性が高い)、
 多くが関係して複雑になっている(=複雑性が高い)、
 それらの影響であいまいなことも増えている(=曖昧性が高い)、
 結果として、
 先が読みにくくなっている(=不確実性が高い)、
そんな時代です。

既存の知識や経験が通用しない場面が増えています。既存の知識や経験を根拠にして論理的に考えても期待外れの結果になりやすいです。注意しましょう。

留意点3:相手と前提条件を合わせる

基本2「ゴールから考える」で補足したとおり、ゴールと前提条件を「適切に」組み合わせて考えることが必要です。

適切な前提条件になるための必須条件の一つが、「相手と前提条件を合わせる」です。次のような状態を避ける努力が必要です。

  ①自分だけが分かっている前提条件を使う
  ②同じ用語の意味が相手と自分で異なる、

①の代表例が、IT技術に疎いお客様と話す場合や、上司が部下に指示する場合です。

②の代表例が、他のIT会社と一緒に仕事をする場合です。たとえば、「詳細設計」は会社ごとに意味や内容が異なる場合が多いです。「詳細設計」という言葉だけでプロジェクトを進めると失敗につながります。

いずれの場合も、くどい(または面倒くさい)と思うかもしれませんが、用語の定義や説明などを明記して互いに合意しておく工夫が必要です。

留意点4:認知バイアスに気をつける

認知バイアスの説明は割愛しますが、ここでは「思い込み」や「条件反射」と思ってよいです。認知バイアスの多くは、人間が生き残るためのしくみの表れなので避けられません。そのことを踏まえて、普段の行動で気をつけることが大事です。

人は、目の前のことに対し、自分の知識や経験に基づいて瞬時に判断します。それは、人の、危険に対して瞬時に対応する特性に起因します。その代表的な表れが「思い込み」や「条件反射」です。いずれも無意識な反応です。

無意識な反応に対して、「意識する」「思い込みを無くす」のような対策は無意味です。現実的には、認知バイアスがあることを認め、普段から習慣づけする対策(※)を考えて実行することが大事です。
  ※対策例)アンガーマネジメントの「6秒ルール」

留意点5:ゴールから考えない場合もある

たとえば、KJ法などでアイディアをたくさん出す場合。

この場合、図1-1の右のような明確なテーマを設定すると、期待した量と質のアイディアが得られる可能性を下げます。可能性を高めるため、あいまいなテーマから始めることがよくあります。アイディアをたくさん出し、それらのアイディアを取捨選択、統合、結合などして、ゴールを明確にしていきます。

ゴールが明確になった後(=基本1)、基本2~5を使ってまとめていきます。

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