テレワークを「すぐに」導入できる会社が圧倒的に少ないわけ
厚生省発のLINEアンケートで、2400万人が回答してテレワークを行っている人たちは5%弱に過ぎなかったという話です。もっと少ないと思ってました。
大きく分ければ「その場所に行かなければ出来ない事業」と「就業環境さえ整備できればいける事業」があると思います。
前者は、警察/消防/光熱/水道/医療/福祉/保育/交通機関/物流/建設/工事/ビルメン/観光/宿泊などが代表例。サービスを提供するためにその場所に行かねばならない・移動しなくてはならない業態では、テレワークも何もない。エアコン取り付け、バーチャルじゃ出来ない。
なので「就業環境が整備できればいける事業」のテレワーク普及率を上げるしか無いと思うのですが、テレワークを実現するための壁が大きく4つあります。
- 会社のFAXと電話対応
- 業務の徹底したペーパーレス化
- 在宅での就業環境整備
- 対面が楽だからそこに逃げたい症候群
顧客や取引先からの会社にかかってきた電話/FAXの対応って、意外と難しい。全員が在宅した場合、誰が会社にかかってきた電話に出るんですか、流れてきたFAXを誰が処理するのかという。え、そこ?みたいな話ですよね。でも、廃止以外の解決策が無い。
電話は電話代行に切り替え、FAXはインターネットFAXに切り替えて、Slack等に集約しつつ、電話/FAX対応をチケットを切るかのようにタスク依頼してみたいな、そんな形なら回せそう。SlackやTeamsのチャネルをフル活用してWebで全てが完結するようにする。
FAXが無くならない理由は、注文受注コストが極めて安く、学習コストも低いから。FAXの使い方がわからない人、なかなかいない。メールはサーバのセットアップだソフトの使い方だ...と色々覚えないといけません。
FAXなら電話料金だけ、Webアプリ作ったらウン百万。ふつーの中小企業の経営者、どっちを取ると思います?
次、ペーパーレス化。ペーパーレスと言ってるのは「仕事の受け渡しが、紙媒体でしか行えない状況を廃止せよ」という話です。データが連携してワークフローがその流れについて回るのがペーパーレス化の意味です。
社内の稟議がExcel方眼紙フォーマットになっていて、それを印刷して捺印してメールに添付して回覧して判子が増えて返ってくるとか。システムで入力したいが、業務のシステム化を実現する人材が会社にいないし、依頼をするにしても、何をシステム化すればよいか、どこにお金と時間をかけるべきか判断つかない。そこで止まるでしょう。
在宅の就業環境構築も、コストがかかりますよね。単純にこれだけのコストが必要になります。
- PC端末
- ネットワーク回線(自宅や会社ネットワークへのアクセス)
- Webカメラ / ヘッドセットもしくはマイク
- システム投資(Zoom/Slack/グループウェア/社内システム etc..)
- 就業用スペースの確保、机や椅子等のファシリティ
- 光熱費
一番の壁が、就業用スペース。物理的な場所がない。就業用のマイルームがあるご家庭、すごく少ないと思います。自分は高速インターネット回線のない自宅は商売柄あり得ないのですが、自宅にネット回線を引かないご家庭も多いと聞きます。
また、社内システムがWeb化されておらず、サーバが会社LANにあるケースも非常に多い。そうなるとVPNやリモート・デスクトップで入るしか無いがVPNは素人の手に負えないし、トラブったときが大変です。
最後は人の行動心理で、対話しながら自分のレベルに合わせて説明して欲しかったり、驚くほど自分の主張を文字化することが出来ない人がいたりします。対面のほうが手っ取り早いですからね。悪く言えば丸投げできるから。が、そこはグッとこらえて頂きたい。
対話を前提とした、社内コミュニケーションを減らしましょう。最たるものが電話。電話は凶暴な武器です。電話対応が最優先になってしまうと、電話が鳴る度に内容をこっちが咀嚼して、噛み砕いて、タスクに落として、優先順位が見えない何かのために、他の優先事項が潰れます。
文字やデータ(システム)で非同期で行えるコミュニケーションを軸に業務設計をして、判断基準を明確にし、自然と業務の標準化が行われるように、育てていかねばならない。
さて、どうでしょうか。皆さんの会社では、テレワークができそうな環境ですか? 何から手を付けてよいか、わかりましたか?
アフターコロナの時代は、「出退勤そのものがリスクとなることを認識し、そのリスク管理できない企業が淘汰される時代」の始まりかもしれません。
コロナウイルスが過ぎ去ったとしても、その次にまた同じような天災地変が起こらない理由はない。ネクスト・コロナウィルスが来る可能性もあります。2019年の台風の水害を思い出してください。計画運休があったことを、忘れてしまっていませんか?江戸川区が「ここにいるな、逃げろ」と警鐘を鳴らし、大変な騒動になったことを忘れていませんか?
テレワークが根付くために必要な幾重の課題を乗り越えて、業務の生産性を向上させ、ホワイトな企業作りへ挑戦する会社を増やすのが、今後のIT業界に求められる責務のように感じました。
その旅路を、ご一緒できれば嬉しいです。私のプロフィールは以下の通りです。お気軽にSNSで会話しましょう〜。