人工意識について⑥ - まとめ
近年、fMRIや光計測などの脳計測技術の進展や脳科学と情報科学を融合した脳情報科学の発展によって、脳の役割や機能を解明する研究が進んでいますが、意識が発生する原理については、未だほとんど分かっていません。
人間の大脳にある神経細胞の数は約140億個と言われており、脳内でこの神経細胞が複雑に結びつき合って巨大なネットワークを形成しているため、脳神経を詳細に調べることによって、意識が発生する仕組みを明らかにすることは、非常に時間がかかり、今の技術では難しいでしょう。
したがって、人工意識の開発は、これまでに分かった脳の働きに関する知識を参考にして、意識が発生する原理を考察し、インスピレーションによって意識が発生する仕組みに関する仮説を立てて、それを検証していくことになります。
ディープラーニング技術も、神経細胞の働きを参考にして、この方法で開発されて、想定を上回る成果を上げています。
こうしてできた仮説を基にプログラムを組んで、ロボットに実装したり、シミュレーションを行ったりして、意識の働きを実現できているかを検証します。
このような方法で人工意識を開発するには、ニュートンがリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見したような天才的なひらめきとセレンディピティー(幸運な偶然により予想外の発見をすること)が必要となります。
こうして人工意識を実現することができれば、人間のように様々な課題や新しい状況に対応できる汎用人工知能(AGI)の開発が可能となり、シンギュラリティを超えて人工知能が活用できる範囲が飛躍的に広がることでしょう。
人間と同じような感覚や感情を持つ人間そっくりのアンドロイドを開発することも可能になるかもしれません。
社会のあらゆる分野にAGIが進出し、人間そっくりのアンドロイドが普及した場合に、人間の暮らしは今よりも豊かになるのでしょうか、それとも人間が人工知能に支配されるような暗い未来が待っているのでしょうか。
人工意識やAGIが開発されるまでには、まだまだ時間がかかり、その間に、人類がこれらの人工知能とどのように付き合っていくのかを検討する時間は十分にあるはずです。
その間に、人類が優れた人工知能と上手く付き合っていく方法を見つけ、人工知能を最大限に活用して豊かな社会を築いていく明るい未来が待っていることを願って止みません。