ITエンジニアに就職/転職しようかなと思ってる人に読んで欲しいじゃがいも農家の話【ep.2】
前回のあらまし。
あんたはITエンジニアになろうと思った。
俺は警鐘を鳴らした。
今回は、それでもあんたがITに進むなら知っておくべき会社選びとビジネスモデルの話。
少し古い話だけど2023年1月。ニトリグループの新入社員はIT人材であっても1年半の現場研修を行う事を発表。物議を醸した。
反対派からは「エンジニアとしてキャリアを積みたい人間にとって1年半の研修は長すぎる」「エンジニアとして働きたいなら選ばない」「現場業務よりも先にIT人材適性を測る為にIT業務に就かせるべき」等の声が上がる。
エンジニアにIT以外の業務を長期間やらせる事への反発が目立った。
対して社長兼COOは「ニトリの考えるIT人材とは、単なる開発要員ではない」「業務の仕組みとITは表裏一体であり、どちらか一方だけが分かっていてもだめ」と説明。
エンジニアに求めるものの違いが浮き彫りになった。
あんたが知るべきは【事業会社とITベンダーでは要求も資質も違う】って事だ。
ニトリは事業会社だ。
肝は商品をつくって売る事。ITはその為の道具に過ぎない。
事業を成長させる事が求められるから、当然現場を知らなければいけないし、極端な技術志向はむしろ邪魔になるだろう。
俺はニトリの打ち出しに何ら違和を感じない。
ちなみにこの発表に強く反発していたのは転職周りの業者だったように見えた。ニトリのIT人材育成投資に乗っかって転職市場での価値を上げ、数年後に給与アップ転職を狙う、いわゆるジョブホッパーもしくはそれを後押しする業者。
ニトリはそいつらを排除したかったんじゃないかと思う。
一方でSIerやソフトハウス等のITベンダーは事業会社等へのシステムの納品によって対価を得る。
ベンダー(vendor)は販売業者って意味で、例えば自動販売機(vending machine)の事をベンダーって言ったりもするよな。ITベンダーはITに関する製品やサービスを提供する会社だ。
でかいシステムなら事業会社等(エンドユーザーと呼ぶ)からSIerに発注。SIer(元請)はサブシステム毎にそれぞれ二次請の会社に発注。場合によっては二次請会社は更に三次請の別会社に発注して、出来上がった物をSIerが統合する。
いくつかのシステムを統合(integrate)するからSystem Integrator、略してSIer。
ここに登場した二次請三次請を含む全ての会社がITを売る会社、つまりITベンダーだ。
例えよう。
じゃがいもを育てて収穫、食品会社に売る→中小ベンダー
食品会社は各社から仕入れた材料を調理してカレーをつくり、飲食店に売る→SIer
飲食店は仕入れたカレーを使って、カツカレーやカレー南蛮を売る→エンドユーザー
じゃがいも生産者は高品質を目指し、こだわりを持ってじゃがいもを育てる。
植物としてのじゃがいもの特性も知り尽くしているし、ポテトハーベスタ等の機械の取り扱いも完璧だ。
職人気質なところもあるかも知れない。
食品会社は厳選した食材を仕入れ、試作を繰り返し商品を開発する。
工場は大規模だ。徹底した衛生管理の下で調理を行う。
そして納期までに納品する。
飲食店は安くて旨い商品を提供する。
カレーは数あるメニューのひとつだから、業務用を仕入れる。
飲食店の目的はカレーを売ることじゃない。客足を途絶えさせずに売上を上げる続ける事だ。
ちなみにSESはじゃがいも農家のバイトくらいに思っておけばいい。
事程左様に本来全く別であるビジネスが一括りにまとめられてしまっている。それがITエンジニアだ。
あんたはどこに行って何をしたいのか、まずそれを決めるべきだ。