ぼやけた世界
朝起きてまっさきに、瞳に一滴落とす。
そんな朝を高校生の時から迎えている。
朝ごはんを食べるよりも、化粧をするよりも、レンズを瞳に入れることで私の世界は目を覚ます。
初めてレンズを入れた日は忘れない。
枠に囲われていないこの世界に驚いた。
なくてはならない存在。なくてはならない存在?
眠ったままの世界で踏み出してみたらどうだろう
少しの興味と少しの不安
思い出したぼやけた世界
信号が、車が、すれ違う人の顔がぼやけてる
人の視線から解放されたようで、悪くない
何も変わらない時間が過ぎていく
昼間には乾きと不快感で、瞳に一滴落とす。
いつからだろう、そんな日々が続くようになったのは。
化粧を落とすよりも、お風呂に入るよりも、瞳に直接注ぐことで、一日から解放される瞬間。
そして枠に囚われた世界に戻っていく。
時折ズレたり、曇ったりするその世界は夜だけの時間。
解放されたい。距離をとりたい。
無防備のまま踏み出したくなった
アトラクションのような、非日常に。
思い出したぼやけた世界
信号が、車が、すれ違う人の顔がぼやけてる
人の視線から解放されたようで、悪くない
何も変わらない時間が過ぎていく
忘れたくない、この時間。
覚えていたい、この時間。
もう、すぐには戻って来れなくなるけれど、また味わいたいこの時間。
本当に人目を気にしなくなる頃に、また体感しよう。
その頃には、すべてのものから解放されることができるだろうから。