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インテルの逆襲~1.8nmの戦い(2024-07-21)

インテルは2020年代前半、10nmおよび7nm世代の量産に苦戦し、微細化技術の競争でTSMCやサムスン電子に遅れをとりました。しかし、2021年にPat Gelsinger氏がCEOに就任して以降、インテルは「5 Nodes in 4 Years」(5N4Y)という戦略を掲げ、巻き返しを図っています。インテルの逆襲の道筋は以下のように展開されています。

1. 「5 Nodes in 4 Years」戦略

インテルは2021年から2024年までの4年間で5つの技術世代を投入する計画を打ち立てました。この戦略は、半導体製造技術の進化を加速させ、市場での地位を取り戻すことを目的としています。

  • Intel 7(10nm Enhanced SuperFin):2021年に導入

  • Intel 4(7nm):2022年に導入

  • Intel 3(3nm):2024年初頭に量産開始

  • Intel 20A(2nm):2024年内に量産開始予定

  • Intel 18A(1.8nm):2025年に量産開始予定

この計画は、GAA(Gate All Around)技術や裏面電源供給技術(BSPDN)の導入を含む、最先端の製造プロセス技術を特徴としています。特に、Intel 18AはGAAおよびBSPDNを採用し、インテルの新たな成長エンジンとして期待されています。

2. 技術革新と製品ラインナップ

インテルは、技術革新の一環として、高NAのEUV(極端紫外線)露光技術を導入し、2026~2027年には1.4nm世代(Intel 14A)の量産を目指しています。これにより、チップの解像度を向上させ、チップ面積の縮小や製造工程の効率化を図ります。

さらに、インテルは新たなプロセッサー「Panther Lake」の開発を進め、2025年にはノートPC向けに量産を開始する予定です。このプロセッサーは、Intel 18Aの技術を使用して製造され、競争力の高い製品ラインナップを構築します。

3. ファウンドリー事業の強化

インテルは製品事業部門とファウンドリー事業部門を分離し、外部顧客向けの半導体製造サービスを強化しています。特に、Microsoftなどの大手企業がIntel 18A技術を採用することを表明しており、インテルのファウンドリー事業は再び注目を集めています。

また、インテルは先端パッケージ技術「EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)」を提供し、複数の半導体チップを効率的に接続する技術を進化させています。これにより、コスト効率を高めるだけでなく、顧客に対して高度なソリューションを提供しています。

4. エコシステムの拡大

インテルはEDA(電子設計自動化)ツールのベンダーと協力し、2nm世代以降の技術に対応する設計環境を整備しています。これにより、設計から製造までのプロセスを一貫してサポートし、顧客が先端技術を迅速に活用できるようにしています。

また、AI活用や光電融合などの先端技術に対応するプラットフォームを提供し、新たなアプリケーション分野での展開を進めています。これにより、インテルは次世代の技術革新をリードする立場を確立しつつあります。

結論

インテルの逆襲は、技術革新、製品ラインナップの強化、ファウンドリー事業の強化、エコシステムの拡大という多方面にわたる戦略によって進められています。Pat Gelsinger氏のリーダーシップの下、インテルは再び半導体業界の最前線に立つことを目指しており、その努力は確実に実を結びつつあります。2025年以降、インテルの技術と市場シェアの回復が注目されるでしょう。

参考)



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