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東北大が発見した音波の新現象、通信技術革新への道を開く

記事概要とポイント

この記事は、東北大学を中心とする研究グループが発見した、新しい音波現象「非相反回折」について解説しています。この現象は、表面弾性波(物質表面を伝わる音波)がナノメートルスケールの磁性材料を回折格子に使用することによって引き起こされます。これにより、音波の進行方向が磁場によって制御可能になる可能性が示唆されています。

主な内容:

  1. 非相反回折の発見:

    • 非相反回折は、通常の回折現象と異なり、音波の強度分布が非対称になるという特徴を持ちます。この現象は、磁場の方向によって変化し、将来的には磁場を用いて表面弾性波の経路を制御できる可能性があります。

    • 光ではこの現象は既に知られていましたが、音波においては初めて確認されたことになります。

  2. 実験結果と方法:

    • 研究グループは、ナノスケールの磁性体回折格子を使用し、実験によって非相反回折の振る舞いを確認しました。実験では、表面弾性波の角運動量と磁性体の角運動量が相互作用し、非相反回折が生じることが実証されました。

  3. 応用の可能性:

    • この発見は、音波を利用した新しい通信技術の開発に繋がる可能性があります。特に、周波数フィルターセンサー量子デバイスなど、音波の制御が可能となることで、通信技術の革新が期待されます。

通信技術の革新への展開の考察

  1. 音波と磁場の相互作用の制御:

    • この発見によって、音波(特に表面弾性波)の進行方向を磁場で精密に制御することが可能になるため、今後の通信技術において、より高精度で効率的な信号制御が可能になると考えられます。これにより、既存の電磁波ベースの通信に加えて、音波を利用した新しい通信方式が登場する可能性があります。

  2. 新しい周波数フィルターとセンサー:

    • 非相反回折を利用することで、音波の周波数を制御したり、音波を利用した高精度なセンサーを開発したりすることが可能になるでしょう。これにより、音波を使った通信やセンシング技術がより高性能かつ多用途に展開されることが期待されます。

  3. 量子デバイスへの応用:

    • 非相反回折の性質を利用することで、量子通信や量子計算において新たなデバイスや技術が登場する可能性があります。量子デバイスにおける高精度な制御や、量子ビットの操作が音波を通じて行われることで、より高度な量子技術の実現に向けた道が開かれるかもしれません。

  4. 高密度情報伝送の可能性:

    • 音波を利用した通信技術は、電磁波を使った通信に比べて、特定の周波数帯域で高い情報密度を持つ可能性があるため、今後は無線通信技術の発展において重要な役割を果たすかもしれません。特に、5G以降の次世代通信においては、音波を使った新しい通信プロトコルが登場する可能性が考えられます。

結論

この新しい音波現象「非相反回折」の発見は、通信技術の革新に大きな可能性を秘めています。音波と磁場の相互作用を制御することで、従来の通信技術では実現が難しい高精度な信号制御や、新しいセンサー、量子デバイスの開発が進むことが期待されます。この発見が今後、通信技術や量子技術の分野で新たな進展を生む契機となるでしょう。


図1 「非相反回折」では波の強度分布が非対称になる 図中の(a)は通常の回折の様子で強度分布は対称的。一方で、図中の(b)は非相反回折の様子で、非対称性が磁場によって変化する(出所:東北大学)


図2 磁性体回折格子を用いた実験で非相反性を確認した 回折格子の作製では、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)圧電基板の中央に強磁性ニッケル(Ni)を入れた。図中(a)は実験装置の概念図。図中(b)が実験結果のグラフで、磁場の符号を反転させると回折波の信号強度が変化することが見て取れる(出所:東北大学)


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