高速取引(HFT)のスピード競争と市場への影響:東証における実態と戦略の分析
以下は、PDF「高速取引(HFT)のスピード競争の現状とその影響」の概要と主なポイントのまとめです。
概要
本論文は、日本の東京証券取引所における高速取引(HFT)のスピード競争の現状を分析し、その市場への影響を検証しています。2021年9月15日から22日までの5営業日間のデータを基に、HFTが東証取引全体の約定ベースで22.8%を占め、全テイク注文件数の31%を構成する「スピード競争」(レース)を特定しました。また、HFT業者の取引戦略を「メイク型」「バランス型」「狙撃型」の3つに分類し、それぞれの特徴と影響を分析しています。
主なポイント
スピード競争の実態
東証での取引全体の約22.8%がHFTによるスピード競争に起因。
「レース」に参加する注文の31%がテイク注文として特定。
HFT業者の分類
メイク型(流動性供給型): 主に板への流動性供給を行うHFT業者。
バランス型(複合型): メイク注文とテイク注文を組み合わせる戦略。
狙撃型(スピード特化型): 主にテイク注文で約定を狙う。
レースにおける課題
一部のHFT業者による過剰なスピード競争は、マーケットメイク型プレーヤーに不利な影響を与える可能性。
流動性供給者の撤退や戦略変更のリスク。
戦略別の特徴
ETFにおけるアービトラージ戦略が、レース全体の売買代金の11~34%を占める。
狙撃型業者は板情報に反映されないIOC注文の失効が多く、隠れた注文の存在を示唆。
市場への影響
過剰なスピード競争が市場全体にとって有益であるかどうかは不明。
市場流動性や価格発見機能への貢献と、競争の不毛さや不公平感の間で議論が続く。
今後の展望
レースの影響をより詳細に分析し、HFT以外の投資家への影響を検証する必要性。
規制や市場設計の見直しの可能性。
この論文は、日本市場におけるHFTの影響を包括的に捉え、取引戦略やスピード競争が市場に与える利点と課題を深く考察しています。市場効率性と公平性の両立が今後の重要な課題として示唆されています。
https://www.fsa.go.jp/frtc/report/honbun/2022/20221025_SR_Article_HFT.pdf