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新規事業を成功に導くPoCの進め方 Part8. 明確な事業の継続基準
[注意事項]
本記事は私個人の見解や知見を文章化したものであり、私の勤務先を含め、特定の企業や組織としての考えや見解は一切含まれておりません。
新規事業のスペシャリストが成功の秘訣を伝授
私、えいるですが普段はITコンサル系企業で、皆さまのビジネスを成功に導くために日々、ITサービスにおける提案・設計・構築などをしております。
また、今の会社に転職する前は、大手IT企業で自ら新規サービスの企画立案・経営戦略策定・営業訪問・サービス構築と0→1の段階で必要なことのほぼすべてを経験してきました。
ITコンサルとしてクライアントの要望を形にしてきた経験
自分でサービス立ち上げた経験
両方の成功体験を知る私の経験から得た「新規事業を成功に導くノウハウ」を皆さんに紹介したく記事を連載しております。
今回のテーマはPoCから新規事業をつなぐ「明確な事業の継続基準」
第5回の記事ではPoCと、その先にある新規事業を成功に導くメソッドとして以下3を紹介させて頂きました。
定量的な評価指標の事前策定
適切な検証サイクルの構築
明確な事業の継続基準
第8回となる今回は、そのメソッドから「明確な事業の継続基準」をテーマに、PoCでプロジェクトを終了させず、その先にある新規事業への継続を成功させるための実践術を紹介していきます。
PoCに潜む落とし穴。事業継続の壁とは!?
新規事業に向けたPoC。数カ月かけて行った検証でも一定の成果が得られ「この企画は行ける!!」と現場では手応えを感じていたはずなのに…なぜか、事業の継続にはSTOPの判断が…。
私がこれまで見聞きしていた現場でも残念ながら、このような話は少なくありません。PoCの結果に手応えを感じていただけに、この結末は非常にショッキングなものです。
なぜ、このような事態が発生してしまうのか!?その原因を実際にあった失敗談を例に分析していきましょう。
失敗談:成功したはずのPoCが…まさかの結末を!!
それでは、失敗談として、ある製造業のPoC分野でおきたステークホルダー間のすれ違いによる事例を紹介します。
製造現場で何らかのトラブルがあった場合、管理部門が遠隔にあるため、発見や対処が遅れ、それが納期遅延に繋がっているという課題がありました。
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そこで「現場に異常があった場合、それがわかる仕組み」という内容で現場からのデータ収集を中心としたPoCが開始されました。
PoCの責任者は「異常がわかる仕組み」というテーマをメンバーと検討し、
異常発生時にメールとランプ点灯で関係者に即時通知できる仕組み
をターゲットに定めました。
そこから数ヶ月におよぶ構築と検証を行い、期待通り遠隔地のトラブルが早い段階で検出できる仕組みの構築に成功しました。
この成果と手応えを持ってPoCの最終報告を迎えたのですが…本事業の継続を最終判断する重要人物(経営層)からは「思っていたものと違う」という厳しい評価が…。
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結果、PoCの結果は「保留」と判断され改めて計画を見直すことに…
原因:関係者間での期待値のすれ違い
なぜ、成功したと思われるPoCが評価されなかったのか?
今回の失敗における最大の原因は、事業継続を判断する意思決定者(経営層)の声を確認しないままPoCを最初から最後まで進めてしまったことにありました。
実際に経営層が望んでいたのは、異常が発生時の通知など「短期的な対策」もそうですが、過去に発生したトラブルの傾向などを分析・可視化し、再発防止策による「長期的な利益を得られる対策」を期待していたのです。
このようにプロジェクトの課題が関係者全員に共通認識化されていたとしても、対策として求めるアウトプットは関係者の立場や役割によって異なることが往々にしてあります。
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これは
経営層は、会社および経営を安定させることがミッション
中長期的な目線で会社の組織運営に貢献する対策を求める
現場責任者は、生産現場の供給を安定させることがミッション
目前の課題を確実に潰し、安定化に貢献する対策を求める
といったように各自のミッションの違いがあることに起因しています。
事業の継続=投資を判断するのは経営層に位置するステークホルダーであり、今回の投資が会社の発展や安定に繋がらないと判断される、もしくはそのように誤解を受けてしまうと新規事業の継続は難しいものとなります。
「課題に対する対策は通知を行う仕組みが正解だろう」と決めつけず、計画や検証の段階で関係者の意見を取りいていたら、結果は変わっていたかもしれません。
「PoCの成功=新規事業の継続となる3つの秘策
ここかららは、先程の失敗と原因を踏まえて「PoCの成功=事業の継続」をなし得るために有効な3つの秘策について紹介していきます。
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