せめて笑わせろ

私は面食いだ。

イケメンは良い。見ているだけで心が踊る。

イケメンを見るだけで幸せになるのなら単純で素晴らしい。

ただ、面食いには大きなデメリットがある。

かつて好きだった人と似ている人を見たときの感情だ。

まず前提として、「イケメンは似ている顔の人が結構いる」ということを説明しておく。

男女問わず、人が美しいと思う顔は平均的なバランスのとれた顔だとよく言われる。

そうなると、似ている人が多い人はイケメン、唯一無二の顔は……まあ、唯一無二だ。そういうことだ。

ということで、面食いだと元彼やかつて好きだった人と似ている顔との遭遇率が上がってしまう。

そうなるとどうなるか

当然、どうしてもその人を思い出してしまう。

どんなに傷つけられてその人の顔が憎く感じられても、かつてイケメンだと思ったのならその人がイケメンだということには変わりない。

似ている顔が多いのには変わりない。

似ている顔は思いもよらない瞬間に出会ってしまう。

元彼の上位互換みたいな顔のアイドルを見ると、そのパフォーマンス力に魅了されつつも、時々元彼がちらついてもやもやとした感覚に襲われる。

「青春」を絵に描いたような、いや私が「青春の再現に利用された」日々がフラッシュバックして、胸がちくっとする。

そのアイドルは本当に素敵なのに、なんで。

ある日、かつて好きだった人にそっくりなイラストが目に飛び込んできた。イラストに似ているとは、相当特徴的な表情と顔の整い方をしているんだなと感心した。MVのサムネイルだった。

好きだった頃も、好きじゃなくなりつつも関わっていた頃も、今思うと胸が震えていた。

明確な別れがなくとももう二度と会わないかもな、なんて思っていたのにまさかイラストで出会うなんて。やるなあ（何もやってない）