ゴールベース・アプローチと新NISAについて
先の記事では、ゴールベース・アプローチの主な流れについてお話しました。
今回は、少額投資非課税制度、いわゆる新NISAで活用できるゴールベース・アプローチの考え方についてお話ししたいと思います。
新NISAでは制度の恒久化や投資枠の拡大などが図られ、より個人の長期的な資産形成に寄与することが期待されています。
■ 新NISAとは
NISAは毎年一定金額の範囲で投資した株式や投資信託などから得られる配当金・分配金、譲渡益が非課税になる制度です。
▼新NISAのポイント(金融庁ホームぺージの情報から)
・非課税保有期間の無期限化
・口座開設期間の恒久化
・つみたて投資枠と、成長投資枠の併用が可能
・年間投資枠の拡大(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円まで投資が可能)
・非課税保有限度額は、全体で1800万円。(成長投資枠は、1200万円。また、枠の再利用が可能)
旧NISA制度では、「一般NISA」と、「つみたてNISA」のどちらかを選択する必要がありましたが、新NISAではそれぞれ「成長投資枠」と「つみたて投資枠」に名称が変更され、両枠を併用することが可能になりました。
両枠の併用で年間投資枠は成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円の計360万円となり、旧制度から大幅に引き上げられます。
(※旧一般NISAなら120万円、旧つみたてNISAなら40万円)
また、非課税保有限度額は旧一般NISAが実質600万円、旧つみたてNISAが同800万円ですが、新NISAは最大1800万円に増え、さらに非課税保有期間は無期限となります。
(※一般NISAが実質600万円(年間上限120万円×非課税保有期間5年))
(※つみたてNISAが同800万円(同40万円×同20年))
(※新NISAは最大1800万円(=非課税保有限度額、うち成長投資枠は1200万円まで))
新NISAの非課税保有限度額は、買い付け金額ベースで、一部もしくは全部を売却すると、その買い付け金額分の枠が復活し、その分の再投資が可能になるという仕組みです。
新NISAでは口座開設期間の恒久化が実現
非課税保有期間が無期限になることと合わせ、新NISAではより長期の目線に立って投資することが可能になります。
つまり新NISAで大きく拡充された内容は、
1)非課税保有期間が無期限になることで長期的な「ゴール」の設定が可能になった。
2)非課税保有限度額の枠の再利用により、定期的なプランの見直しが非課税保有枠内で再利用が可能になった。
ゴールベース・アプローチと新NISAとの相性
NISA口座開設期間の恒久化により、いつでも始められるようになった
長期目線で運用を実践していくゴールベース・アプローチと新NISAとの相性が良いと言えます。
ゴールベース・アプローチ運用では、短期的な相場の浮き沈みには一喜一憂せず、あくまでも長期的な視点でゴール実現への目標達成確率の変化を適宜確認しながら運用していくのが特徴です。
そして、投資枠の再利用ができることは、1つの目標(ゴール)を達成したら、必要資金を取り崩し、復活した分の投資枠を次のゴールを新たに決めて計画立てて非課税枠運用していくことができるのです。
その時の人生設計に応じてゴールを再設定し、目標金額と期間、リスク許容度に応じた運用方針を決めた上で運用を再スタートすることで、新NISAのメリットを最大限に活かすことができます。
■売却時にNISAの非課税メリット
そして、NISA運用でのメリットは売却時に、大きく享受できます。
課税口座での売却益には、2024現在、復興特別所得税と併せて、20.315%の譲渡所得税を税金として納めることになりますが、NISAなら非課税ですので、その分も運用益となります。
ただ、証券投資は、相場変動等の影響を受け、元本割れのリスクもあり、この場合だと非課税制度の恩恵を受けられない点や他口座との損益通算ができない点は注意が必要です。
■ゴールを決めたら運用を始めてみる
余裕資金がありNISAをまだ利用していない人は、新NISAでゴールベース・アプローチを実践し、5年以内の中期的な目標で構わないので、新NISAでの運用を始めてみるのも良いかもしれません。
中長期の資産形成・資産運用を前提とするゴールベース・アプローチを活用し、新NISAの有効利用を考えてみてください。
■ プロダクトアウト型からゴールベース・アプローチに切り替える転換期
証券投資で典型的な例は、個別企業の業績に大きな落ち込みもないのに、株価が下がったので「この株価は割安だ」と考えて投資します。
これは、プロダクト、つまり個別銘柄をベースに投資先を検討するスタイルであり、単に値上りしそうな銘柄の選定であり、必ずしもご自身の「ゴール」に適合したアプローチにはなっていない場合があります。
また、こうしたスタイルは、本来、長期的な視野で運用を考えるべきゴールに、短期的な収益がどの程度対応できているのかどうかなどの問題があります。
ゴールベース・アプローチを実践する場合においてはですが、
プロダクトアウト型からゴールベース・アプローチへと切り替え、長期的な視点で資産運用をしていくことで、相対的に長期間で安定した資産運用を必要とするゴールに適した運用手法を考えることが必要です。