「@cosme」エンジニア社員インタビューVol.9 松田 進也さん(前編)~ マネージングを経験したからこそ実感したモノづくりへの想い
日本最大級の美容系総合ポータルサイト「@cosme」のVPoE(技術部門マネジメント責任者)近藤俊太郎が、アイスタイルで活躍中のエンジニアに「突撃インタビュー」!
第9回目は、長年IT業界に従事し、アイスタイルでCTOを務めたのち2023年6月に退職してモノづくりに一層近い働き方をすることを選んだ松田進也さんにお話を伺いました。
近藤俊太郎(以下、近藤)
今回は異例の「退職したメンバー」のインタビューです。2023年6月末日をもって退職されて業務委託というスタイルに変わる松田さんのように、新しい形で携わる方が今後増えてくると思うんですね。
IT業界って歴史が浅いので、大きくて歴史のある銀行やメーカーみたいに部長になって定年退職するという例が少ない業界ですよね。松田さんがどんな未来図を描いているのかを伺うことで、若いエンジニアに向けて、五十代、六十代のひとつのロールモデルを紹介できたらなぁと思っています。よろしくお願いします!
松田進也(以下、松田)
はーい。よろしくお願いします。
趣味の延長がエンジニアだった
(近藤)どんなきっかけでエンジニアになろうと思ったんですか?松田さんの世代的に SE はそこまでメジャーではありませんでしたよね。
(松田)そうですね…小さい頃からコンピューターは好きでした。小学生の時にコンピューターを買ってもらってから、生活の中につねにコンピューターがあって。ただ、大学時代はホンダF1全盛期だったので、機械工学科を出て車関係とかF1をやりたいと思ってました。それが、大学卒業直前にホンダが F1 から撤退して愕然(笑)。
(近藤)(笑)
(松田)同期はトヨタをはじめ、重工業に進む中、私は知り合いが勤めていた「アクセンチュア」というコンサルティング会社に就職しました。アクセンチュアには当時からシステム部門があって、ほかのコンサル会社と違ってコンサルのあとにシステムを作るところまでやっていたんです。しかも初任給が「さすが外資!」みたいな感じで(笑)。
(近藤)なるほど(笑)。
(松田)それと「研修でシカゴに行けるらしい」みたいなノリで入社したんですよね。「エンジニアになるぞ!」という意気込みがあったわけではなく、どちらかというと待遇面に惹かれて。96年入社なので、タイミング的にはちょうど web が出はじめた頃ですね。
(近藤)職業としてエンジニアになろうとしたというよりは、幼い頃からの趣味の延長がエンジニアだった、に近いんですかね。ちなみに、松田さんがパソコンを触りはじめた頃は、DOS でこんな大きなフロッピーをガシャッと入れないと起動しないみたいな…?
(松田)あ、フロッピーより前です。カセットテープ(笑)。
(近藤)(爆笑)
(松田)今や「カセットテープってなんだ!?」って話ですけど(笑)。
当時のベンチャー企業は全員もれなくフルスタックエンジニア
(近藤)もともとはモノづくりをしたかったけど、時代の流れもあり、リアルなモノではなくシステムを作るほうに舵を切ってキャリアをスタートしたんですね。
(松田)そうですね。それまでやってきたコンピューターの知識も無駄にならないですしね。
(近藤)たしかに。アクセンチュアにはどれくらい在籍されてたんですか?
(松田)4年くらいですね。上司が2000年に独立して会社を作ることになった際に誘われて一緒に辞めました。ちょうどiモードが出た時で、これからはこういうのが来るんじゃないかということで。
(近藤)その会社はiモード、ガラケーのいわゆる公式サイトなどを作る会社だったんですか?
(松田)そうです。ただ、いかんせん出はじめの頃で、食っていけるかわからなかったので、SI部門半分、コンテンツとか公式サイト半分くらいのバランスからスタートしました。
(近藤)松田さんはその両方を手がけていたんですか?
(松田)はい。創業当時は社員が10人もいない規模だったので、システムに関することはなんでもやりましたね。データセンター借りて、サーバー買って、自分でラックにマウントして…みたいなところからやったので、当時はフルスタックエンジニアなんていう言葉はなかったけれど、全員がもれなく全部をやらなきゃいけなかったから…。
(近藤)ですよね。
(松田)結果としてフルスタックエンジニアになる要素をあの時にひと通りやったんですよね。
(近藤)エンジニアとして実際に開発してる期間は長かったんですか?
(松田)はい。創業から5年くらいはひたすら開発してました。
大きな会社で働いてみたい
(近藤)アイスタイル入社は2015年ですよね。
(松田)はい。創業した会社にはなんの不満もありませんでしたが、「もうちょっと大きいところで働いてみたい」と思って。アクセンチュアはマネージャーになる前に辞めてるし、あまり大きなプロジェクトは手がけたことがなかったので、大企業で何かをやることに興味が湧いて。そんな時、会長の吉松さんから「うちに来ない?」というお話をいただいたんです。
(近藤)2015年だと新しいことしよう、新サービスを作ろうとしてた時期ですね。M&A もして新しいサービスがグループに入ってきたり。ある意味一番活気があった時代に入社されたんですね。
(松田)今は200人くらいの T&C が100人くらいだった頃。「これからもっと増やしていくぞ」っていう時代ですね。
(近藤)「規模が大きい」という側面以外でアイスタイルが「おもしろそう」と思ったポイントありますか?
(松田)それまで「モノ」を扱ったことがなかったんですよね。公式サイトとか着メロとか、バーチャルコンテンツみたいなものばっかりで。だから化粧品そのものにはあまり興味はないものの、リアルな商材があってお店もあるアイスタイルの裏側でどんな業務の進め方をしているのか興味がありました。
(近藤)なるほど。化粧品というプロダクトを我々が作っているわけではなくても、取り扱ってるから。
(松田)しかもちょうどグローバル展開しようとしている時だったので、海外でも何かできるのかなという期待もありました。
(近藤)実際、松田さんはグローバルに関わってましたよね。
(松田)はい。マレーシアにも行かせてもらいました。笑
マネージメントの大切さを学んだ
(近藤)アイスタイル入社当初はどんなポジションでどんな役割を担われていましたか?
(松田)当時のテクノロジー本部で副本部長を務めさせてもらいました。当時の本部長が出ていたミーティングにはつねに出席させてもらって、企画も開発もいるアイスタイルという組織の中でどのように考えて仕事を進めていくかをオンボーディングのような形で3カ月ほど学ばせてもらえたのはすごくよかったですね。
(近藤)その後は社内でどのような動きをされていたんですか?
(松田)会員とか、決済とかの共通基盤の実務的なものが半分、本部長と一緒にテクノロジー本部の今後について考えるのが半分というバランスで働いてました。
(近藤)その間に社内エンジニアの数が倍増したわけですけど、組織が大きくなったことで変わったと感じる部分はありましたか?
(松田)なんといっても部長陣が充実しましたよね。私が入社した時は部長は一人だけでした。すぐに部長が新たに3人増えて、私が入社した直後と比べると、部長&マネージャーの層が厚くなりました。
(近藤)現場ではすでにしっかり仕事をしていた皆さんですが、手を動かす業務ではなく、仕事の考え方や進め方をイメージするポジションの人が増えたということですよね。
(松田)そうですね。それまでいた小さい会社だと、部長でも手を動かす前提で、もちろん開発もしてました。でもアイスタイルのような大きい会社になると、手は動かさずにイメージとか方針を考えることに専念する人が必要だということがわかって勉強になりました。
やっぱり「モノづくり」が好き
(近藤)アイスタイルに副本部長として入ったということは、入社後、手を動かすことがだいぶ減りましたか?
(松田)ほとんどなくなりました。作ったのは1システムくらい。それ以外は、いいか悪いかは別としてひたすらミーティングですね(笑)。「こんなにミーティングするの!?」っていうくらい打ち合わせが多くなりました。
(近藤)事業サイドが何をやりたいかを確認しながら作るので、受託して「はい、このとおりに作って」というわけにはいきませんからね。
改めて「モノづくりがしたい」と思いますか? それともプロジェクト マネージメントとかピープル マネージメントとか、組織を強くしていく仕事に興味がありますか?
(松田)アイスタイルに入る前はしっかりモノづくりをしていて、アイスタイルでは大きい会社の運営の仕方を見させてもらいました。どちらも組織の中で必要な業務だということがよくわかりました。で、キャリアもあと10年くらいだなと思った時、「何をやりたいですか?」と尋ねられれば、やっぱりモノづくりがしたいというのが今の心境です。
システムを自分でコーディングして作ったり、プロジェクトマネージャーとしてサービスを形にしたり。モノを形にして世に送り出す部分をやりたいと思ってます。
(近藤)両方やってみて、作るほうが好きだなぁと改めて実感する出来事があったんですか?
(松田)まぁ物心ついた頃からずっとモノづくりが好きだし、システムづくりとかコーディングも含め、モノづくりが好きという気持ちはずっと変わらずで。組織に入って経営方針を決めていくことの大切さに気づいたと同時に、「これ、自分に向いているのか?」とも感じました。
(近藤)なるほど。
(松田)経営方針を考えることもモノづくりも、会社にとっては同じくらい大事なのは重々承知してるんですけど、やり甲斐とか、純粋に「楽しい!」という気持ちの大小で言うと、モノを作っている時のやり甲斐や楽しさのほうが大きいんですよね。
やってみなけりゃわからない適性
(近藤)これまでインタビューさせてもらった方々の中には、「モノを作るのも好きだけど、マネージメントを通じて人が成長していくのを見ると喜びと感じる」という人もいました。
自分がどちらに向いているのかを知るのはすごく大事。松田さんも、「もっとモノを作りたかった…」と悔いを残してキャリアを終えるより、組織を離れ、違う形でモノづくりに関わるという選択をしたのはよかったのかもしれませんね。
(松田)結果的に「やっぱりモノづくりが好きなんだな」と実感できたのは、マネージメントもやってみたからだと思うんです。せっかく規模も機会もあるアイスタイルにいるなら、マネージメントも絶対やってみたほうがいいと思いますね。ベンチャーだとモノを作るしかないので。
(近藤)うんうん。
(松田)さらに少しドライに市場価値的なことを言えば、組織から出ていく人にとって、マネージメントの経験もあるエンジニアって食いっぱぐれがないと思ってて。だから、アイスタイルでいろんな体験をして、両方の経験を積んでから、「さて自分はどっちだろう」って考えればいいんじゃないかと思うんですよね。
【編集後記】後半は退社後の夢を聞き出します!
「前編」では、物心ついた時から三度の飯よりコンピューターが好きだった松田さんが運命に導かれるようにエンジニアになり、エンジニアの可能性を最大限に引き出すためのマネージメントがいかに大切かを知ったアイスタイル時代について語っていただきました。
「後編」では、モノづくりへの冷めやらぬ愛を貫くため、アイスタイルを卒業して次のステップへと進む松田さんが退社後にやりたいことを伺います!
過去インタビュー記事まとめ
過去記事や取材記事などはこちらにまとまってます!