金沢旅行記
先日金沢旅行に行ってきた。金沢はとても良い街で、街並みや食事など印象に残るものが多かったので、その記録を書き留めておこうと思う。以前書いた九州旅行記は書き上げるのにとんでもなく時間が掛かってしまったので、今回はもう少しあっさりめに書いてみた。
0日目
大学の先輩が金沢で働き始めたというTweetを目にして、今度遊びに行きますよ!とリプライを飛ばしたのは4月初めのことだった。僕の「今度行く」は全く社交辞令ではないので、ぜひと返信が届いて即DMで日程の打ち合わせを始めたのだった。まったく迷惑はなはだしい後輩である。
金曜日、僕は仕事を終えて帰宅すると、10分ほどで荷物をリュックサックに突っ込むと深夜の北陸道をカッ飛ばし(注1)、一路金沢を目指したのだった。
(注1)はやる気持ちを比喩的に表現したもので、スピード超過などの道路交通法違反を示唆するものではないことを断っておく。
金沢に到着したのは22時半ごろだった。帰宅してすぐに出発したので、ほとんど食事らしい食事をする時間がなかった。金曜日だし(実家では毎週金曜日はカレーが出ていた。海軍?)、金沢といえば金沢カレーと思い、ゴーゴーカレーを検索すると、ちょうど金沢本店が23時まで営業しており、ラストオーダー間際に到着することができた。
これから店じまいというときに迷惑な客であるという自覚はあったので、少しでも高そうなものをと思いマンハッタンカレーを注文した。これはトッピングとしてカツ、エビフライ、ソーセージが付くもので揚げ物が多くボリュームたっぷりである。
金沢カレーの濃いルーは、まるでソースのように絡むので揚げ物との相性は抜群である。近所にも金沢カレーのお店があればよいのだが、最寄りでも名古屋にしかないようだ。名古屋なら喫茶店のカレーを食べたいかな……
夕食を済ませて、お風呂にすることにした。市内にはいくつか温泉があるが、鉱物臭の強いモール泉が多く、太平洋側にはあまりないタイプの温泉なので楽しみにしていた。最終受付時刻が23時半で、23時20分ごろに到着することができた。今回の旅はタイミングに恵まれている。
大浴場入口には飲泉コーナーがあり、迷わずお湯を頂いた。どんなに不味いお湯だろうと温泉好きとしては五感で味わうのが礼儀というものだ。口に含むと、塩味が強く、わずかににがりのような滋味を少し感じる。モール泉特有の鉱物臭はあるものの、鉄臭さやえぐみは全くなく、今まで飲んだ中ではかなり飲みやすい温泉だと思う。
湯船にはドバドバとお湯が流れており、湯量も十分ある。市街地で入れる温泉としてはかなり良い泉質ではないだろうか?閉館時間ギリギリということもあり、大浴場をほぼ独り占めすることができたのは幸運だった。
温泉で長居しすぎてホテルのチェックイン時刻を過ぎてしまっていたのだが、インターホンを鳴らしてもなかなかホテルの方に気づいてもらえず焦った。
荷物を部屋に置いてから、少し夜の駅前を散歩することにした。
さすがに0時を過ぎた金沢駅前は閑散としていた。鼓門は月の光に静かに照らされていた。
1日目
先輩とは金沢駅前で合流し、まずは街歩きをしながら主計町(かずえまち)茶屋街を散策した。
茶屋街の奥には金沢城の西内惣構(にしうちそうがまえ)跡がある。
こういった説明看板があると、つい英文と読み比べてしまうのは職業病だ。
浅野川を挟んで、主計町の対岸には昭和感あふれる町並みが広がっている。川を挟んでガラッと街並みが変わるのは当時の町割りを反映しているのだろう。こういう発見があるのが、城下町を歩く楽しさのひとつだと思う。
「HATCHi 金沢」で加賀棒茶プリンを食べた。
棒茶というのはチャノキの茎を焙煎して作られるお茶だそうである。プリンはお茶の濃厚な香りでたいへんおいしかった。
お茶と甘味で一息ついてから、金沢城まで散歩することにした。
先週は花見客でかなりごった返していたそうだが、時期を少し過ぎていたためかそれほどの混雑ではなかった。僕としては、葉桜の新緑の色も、青空に映えてとても好きなのだけれど。
昼は混雑するから少し時間をずらして食事にしようということで、国立工芸館に立ち寄った。焼き物展示がされていて、こちらの知識不足で詳しいことは分からなかったが、どれも粘土や釉薬にこだわって作られた独特な形をしており、こういった茶碗でお茶を飲んだら美味しいだろうなと思った。金沢城周辺はいわゆる文教地区で、博物館や美術館がたくさん立地している。二十一世紀美術館は地震の影響で無料展示のみ公開ということで今回はパスしたが、また金沢に旅行する際には訪問したい。
近江町市場に移動して、「近江町市場寿し 本店」で昼食にした。すぐ隣の支店と比べると混雑しておらず、すぐに席に着くことができた。
回転寿司の名残を感じるレーンつきのカウンターだったが、どのネタも非常に美味しかった。
一度金沢駅前に戻って車に乗り、卯辰山公園に向かった。
展望台はなかなか眺めがよく、金沢市街を一望することができる。ただ、下界と比べると風が強く、徐々に曇ってきたためにけっこう肌寒かった。
身体が冷えてしまったので、温泉で身体を温めることにした。卯辰山のさらに山奥にある、湯涌(ゆわく)温泉の「銭がめ」を訪問した。
前知識なしで訪問したのだが、建物は古民家のようで風情がある。建物の中も民宿といったたたずまいだ。「ポケモンにゼニガメっていたよな」と思っていたら、ゼニガメのぬいぐるみがあった。小さい男の子が番台に座っていて雑な接客をしてくれるのも、いかにも田舎の温泉という味わいがある。
ふたたび金沢駅前に戻って駐車場に車を停め、片町で夕食をとることにした。
ところが片町の混雑が予想以上で、どこも予約でいっぱいだった。こういうとき空いているお店は時代だと相場が決まっている。コンコルド開発の例を持ち出すまでもなく、ズルズルと探し続けるのは結果的に微妙な店を引いてしまう可能性が高い。ここはいったん戻ろうということになった。
金沢駅から香林坊に向かう途中にあった「そばのはな」というお店の佇まいが印象に残っていたので、だめもとで電話をしてみたところ、運よく予約を取ることができた。金沢は観光客の多い街なので、観光客の入りやすいエリアとそうでないエリアで混雑の程度はかなり違う印象を受けた。
「常きげん風神」がすっきりとした飲み口ながらフルーティーな香りもあって気に入った。山形の日本酒と傾向が似ているかもしれない。
一番感動したのはホタルイカの沖漬けだ。熱した石の上で軽く炙ると特有のえぐみが香ばしさに変わり、とても美味しい。
珍味が多く、料理がどれもこれも美味しかった。
ノドグロも頼んだが、これも身がほくほくとしていて美味しかった。
飲みながら先輩には酒に関する蘊蓄を色々と教えてもらったけれど、お酒と料理が美味しすぎてその記憶ですべて上書きされてしまったような気がする。またいろいろと教えてください。
店員さんは気さくな方で、私も焼いたホタルイカの沖漬けがこんなに美味しいとは知らなかったんですよ~ということだった。
結局閉店時間まで居座ってしまったけれど、たらふく食べてふたりで1万円位でかなり満足感が高かった。料理とお酒に夢中で蕎麦を食べ損ねてしまったので、次に訪れるときはそちらもチャレンジしたい。
飲んだ後は「〆や」というラーメン屋に行こうと思っていたのだが、かなりの混雑で待たされそうだったので、すぐ隣の「新天地ポルシェ」で締めのお蕎麦をいただいた。
山形の異常量蕎麦に慣れていると、この量で900円はちょっとコスパが悪いかなと思ってしまうが、そこは基準が麻痺しているというものだろう。ちなみに山形には普通盛で通常の大盛、大盛にすると4枚分位の量が出てくる異常な蕎麦屋があります。けっこう良い麺を使っているのか、ツルツルとした食感は悪くない。
香林坊でタクシーを拾って、先輩と解散した。タクシーのおじいちゃんは金沢弁がきつくて、何を言っているのかさっぱりわからなかったが、「適当に曲がってください」みたいなことを言ったら無事宿に辿り着くことができた。僕はお酒に弱いので、結構酔いが回っており、シャワーをざっと浴びるとそのまま眠ってしまった。
2日目
午後から天気が悪化するということだったので、エムザ近くの駐車場に車を停めて、近江町市場でお土産を買いつつ朝食をとることにした。
まずは「潮屋 近江町いちば店」で海鮮丼をいただいた。
他の店よりもやや奥まった場所にあり、それほど混雑していなかった(市場入口の店などは大行列だった)けれど、ネタはどれも新鮮でとても食べ応えのあるものだった。そんなに大きな丼ではなかったけれど、お腹はかなり満たされた。
かなりお腹は満たされたが、まだ金沢おでんを食べていなかったので「金沢おでん いっぷくや」に立ち寄る。
まずは定番が良いだろうと、車麩、バイ貝、赤巻、大根を選んだ。出汁が普通のおでんとちょっと違っていて、塩気が控えめでじんわりと出汁の味が広がる優しい味わいだった。これは飲んだ翌日の身体に染み渡る。
本当はルーローハンも食べてみたかったが、胃が満杯だったので市場でホタルイカの素干しなどを買って金沢を後にした。
金沢、車で3時間あれば着いてしまうので土日の手軽な旅行先としてとても良い選択肢だと感じた。また時間を見つけて訪問したい。最後になりましたが、突然の訪問にも関わらず、快く案内していただいた先輩には大変感謝いたします。
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