岡山・鳥取旅行記
「ゆっくりと温泉に浸かって日々の疲れを癒しましょう」
そんなコンセプトで温泉旅行に行くことになった。私たちももう歳なので、温泉最高という気持ちが日々高まっている。
仕事を終えた私たちは友人の車に乗り込み、夕食を済ませると深夜の高速道路をひた走った。土日休みを利用した旅行では、金曜夜を移動時間に充てるのが定番となりつつある。
0日目の宿は、岡山県津山市のビジネスホテルである。深夜にも関わらずチェックイン可能なのはありがたい。
翌朝、朝食のために津山駅前に繰り出してみる。津山駅前は昭和の香りが漂っていて、こういった趣のある建物が今も現役の街は良いものだ。
津山駅前の居酒屋で焼きそば(陣笠焼)を食べる。おそらく地元民御用達の店のようだが、店主が気さくな方でリラックスして食事を楽しめた。
朝食後は津山市内を散策し、津山城や歴史的建造物を巡る予定だったが、日差しが強くとても外を歩く気にはなれなかったので、すぐに車に乗り込む。
車を走らせて30分ほどで、本日最初の目的地、岡山県郷緑温泉に到着する。
駐車場には先客の方の車が1台停まっており、「温泉むすめ」のステッカーがたくさん貼られていた。かなりの温泉好きの方と見受けられる。
郷緑温泉は足元からお湯が湧出していることが特徴である。1グループ30分の貸切だが、ぬるめのお湯はいくらでも浸かれる適温で、あっという間の時間だった。岡山や鳥取には足元湧出の温泉が複数存在するが、さっそくそのポテンシャルの高さに驚く。
湯上りにひるぜんジャージーランドでソフトクリームを食べる。
かなり濃厚な味で美味しかったが、35度を超えてじんじんと日差しが照り付ける日には、少々重たく感じられた。
続いて北に車を走らせ、鳥取県関金温泉の共同温泉「関乃湯」を訪問する。
いかにも地元の方向けといった雰囲気で、2、3人が入ると一杯になってしまう小さな内湯があるだけの、こじんまりとした温泉である。お湯はかなり熱めで最初は足を少し入れただけですぐに引っ込めてしまいたくなるような温度である。しかし、掛け湯を何度もして徐々に身体に馴染ませてゆくと、肌触りの良いお湯がじんわりと沁みてくる。
鳥取県の回転寿司チェーン「北海道」で少し遅めの昼食。
一般的なチェーン店の回転寿司よりもネタが分厚く満足感が高い。印象的だったのは写真のサザエで、コリコリとした食感と肝の濃厚な旨味がとても美味しかった。
昼食を終えて、倉吉市のなしっこ館を見学した。
なしっこ館は地方に時々見られる商業施設と行政施設が一体となった施設で、特産のナシに関する展示を見学することができる。
入館料300円とは思えないほどナシに関する農業・文化・歴史に関する展示が充実しており、勉強になる。また追加料金なしで3種類のナシを食べ比べることができ、しかもそれが地物だけあってとても美味しい。
本日3つめの温泉である、鳥取県三朝温泉「株湯」に到着する。地元のおじさんたちから元々温泉だった場所を足湯に変えたこと、現在は新たなボーリングを制限しており、源泉のお湯を他の温泉に回していることなどを教えてもらう。こういった地元の方との会話も楽しい。
お湯は関金よりもさらに熱く、一度は肩まで浸かってみたものの1分もしないうちに上がってしまった。
倉吉市内の居酒屋で夕食。蕎麦をメインとしているらしく、九割蕎麦は濃厚な蕎麦の旨味があり、特に塩によく合う。
一つ一つの料理が丁寧に作られていて、とても美味しかった。
食事を終えて、倉吉の有名な蔵のある街並みを眺めながら帰ろうと思っていたら、ぞろぞろと人が歩いてくるのが目についた。ちょうど夏祭りの日だったらしく、文字通り「後の祭り」だったようだ。祭りの後の熱気と寂しさだけを摂取して、私たちは宿への帰路についた。
鳥取県はわい温泉「湯の宿彩香」に宿泊。適温かつじんわりと温まる塩化物泉で、パンチの利いたお湯に浸かった疲れがよく解れた。
一番安い部屋に宿泊したのだが、宿の外には東郷湖を望むことができ、満足度は高かった。いい旅館だけあって、朝食のみのプランにも関わらず大変丁寧におもてなし頂いて申し訳ない位だった。
翌日は鳥取砂丘に立ち寄り、道中のお土産を漁りながら家路についた。
最後に訪問した温泉は兵庫県吉川温泉「よかたん」。
全体的には観光地のスーパー銭湯といった趣だが、炭酸泉の源泉があるのが特徴である。けっこうな入浴客で賑わっていたので空くまで結構待たされたが、源泉は底が見えないほど濁った濃厚なお湯で、また炭酸泉の名に恥じずゴボゴボと泡を立てながら間歇的にお湯が吐出されている。私は湯口の近くに陣取ったのだが、お湯が湧き出たタイミングで息を吸うと、ときに炭酸ガスで息が一瞬詰まる感覚があり、ちょっと危ない程の濃度のようだ。ただ同じ炭酸泉でも長湯ラムネ温泉のように身体に泡がシュワシュワとまとわりつく感覚は全くなく、同じ炭酸泉でもこのような湯触りの違いが生まれるのは不思議である。
吉川町は山田錦の生産が日本一の場所だそうで、温泉と併設する道の駅では山田錦のお酒がたくさん並んでいる。幾つかお土産に購入したので飲むのが楽しみである。
ゆっくりと温泉に浸かろうというコンセプトとは裏腹に、パンチのある温泉を突貫で巡るというなかなかな強行軍だったけれど、それぞれの温泉の個性がよく分かり、また鳥取・岡山の温泉の充実度に驚かされた休日だった。有名観光地を巡る旅も楽しいけれど、こういったテーマを決めて、各々の違いを楽しむような旅も良いですね。
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