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スペシャルニーズのある子ども向けの靴下やトップスを開発〜Borderless Kids代表 高橋奈津子さん

「息子のような特性を持つ子どもが、
堂々と生きていける社会になってほしい」

スペシャルニーズのある子どもが着脱しやすい靴下やトップスを開発・販売している高橋 奈津子さんにインタビューしました。


「自分の周りから良い環境を作り、拡げていく」。
「自分らしい選択をしていく」。
子どもたちの未来のために活動しているパパさんやママさんに、仕事への想いや未来への展望、公私のバランスなどについて伺い、より良い環境づくりをしていくヒントを探るインタビュー企画の第4弾です。


今回ご紹介するのは、スペシャルニーズを持つ子どもが着脱しやすい靴下やトップスを開発・販売している高橋奈津子さん。開発の背景には、ご自身の子育て経験がありました。開発を始めたきっかけや背景にある思い、将来へ向けての展望を伺いました。

<プロフィール写真>

高橋奈津子さん Borderless Kids代表
2004年大手アパレルに入社。販売・店舗でのディスプレイなどを担当。2011年人気ヘアサロンTWIGGYにてオリジナルプロダクトの商品責任者を4年に渡って勤め、製品企画から営業まで幅広く担当。出産を機に退職。
長男に中等度知的障がいがあることがわかり、療育機関でのアドバイスをもとに2018年からスペシャルニーズを持つ子ども向けの靴下開発に着手。
自身の子どもに合うものを求める中で在米のおもちゃメーカーとの取引を開始。2019年にBorderless Kidsを立ち上げ、商品の企画・販売とともに、スペシャルニーズを持つ子どもたちが使いやすい商品はどんな子どもたちにもやさしく使いやすい商品をモットーに、ひとりひとりが希望をもって生きていけるボーダーレス(境界のない)な社会を目指して活動を広げている。

Borderless Kids

療育の先生からのアドバイスで、スペシャルニーズのある子ども向け靴下のニーズに気づく

Borderless Kidsの高橋奈津子さんは、2014年に第一子を出産しました。
我が子が中等度知的障害を併せ持つ自閉症スペクトラムであることがわかり、「特に3〜4歳ぐらいの時がものすごく大変だった」と話す高橋さん。言葉で伝えられないわが子は泣いて訴えるしかなく、癇癪を起すこともあった息子にイライラしてしまうこともありました。

「療育の先生に相談したところ、理由があって癇癪起こすことを教えていただき目から鱗でした。年長組さんになってから身辺の自立の第一歩でもあるお着替えの練習を療育でスタートしました。まずは靴下からの練習。だけど履く時に目線が泳いでしまって手元を見ていられないし、指先の力が弱く、ちゃんと掴めないから全然履けなくて。どうしようかなと思っていたところ、療育の先生から“つまむ部分にシールを貼ったり、ワッペンなどをつけたりしてみたらどうですか。そうしたらそこに注視できるようになるから”と言われたのです」。

そこで高橋さんは「もともとつまみ部分がある靴下」をネットで探し始めます。

「つまみが付いていたら、指先の発達が未熟な2〜3歳頃の子どもも履きやすいからどこかのオンラインストアにはあるだろう」と考え、時間のある時に海外のサイトなども探しました。

ようやく1つのオンラインストアで見つけたものの、高齢者向けのあずき色の大きなサイズ。でも、ここで確信したのは、筋力が弱くなったおじいちゃん・おばあちゃんの指先でも、つまみがあれば簡単に靴下が履けるということ。
そこで、高橋さんは自分で作ることを思いつきます。

「多少高くついても最小ロットで作ってみようかと。お着替えの練習は息子のような知的障がいを持つ子どもにとって、大切な自立への第一歩でもあります。だから、世の中には欲しがっている人も多いのではないか、と夫に背中を押してもらい自分で作ることを決めました」。

ツマミ部分が猫耳になっている可愛らしい靴下。ISSHO NI storesでも限定3足で販売しています。画像をクリック!
ボーダー柄の靴下。ツマミの赤がおしゃれなアクセントに。ISSHO NI storesでも限定3足で販売しています。画像をクリック!


靴下作りに着手すると同時に、高橋さんはわが子に合ったお助けグッズをネットで探していきます

「息子は、不安なときに指をくわえている時期がありました。指のタコもすごくて、衛生的にも良くないので、どうしたら良いかと療育の先生に相談したところ、スペシャルニーズのある人向けのグッズを扱っているオンラインショップを紹介してもらいました。そこで、アメリカから仕入れている良いグッズを見つけたのです」。

安全で毒性のないシリコンで作られた“噛むための”おもちゃやネックレスなどを見つけた高橋さん。それは見た目にも可愛く、手に取るだけで心が弾むデザイン。実際にわが子も気に入り、それを使うことでお互いにストレスフリーになりました。

「とても良い商品だったので他にも必要な人がいるのではないかと思い、多めに仕入れてアメリカと同じ価格で売ろうと思い、ショップを開設しました」。

そして、2019年に開業。Borderless Kids立ち上げに至ります。

【SKOOLZY】BUTTERFLY EDUCATIONAL TOYS/カラフルなちょうちょのマスコットとお花の形になるカップのキット。つまみやすいトングも付属されているので、指先や手先の細やかな動きの練習にも。
【SKOOLZY】COUNTING BEARS WITH COLOR MATCHING CUP TOYS/カラフルなクマさんを並べたり、数をかぞえたり、色ごとにクマさんをスコップで掬って同じ色のカップに入れたり.... 手と目の協調と細かい運動能力の向上を促します。

応援の輪の拡がり

2019年に開業した高橋さん。わが子との日々に奮闘しながらもゆっくりと活動を進めていきます。

「スペシャルニーズの子ども用の靴下が必要だ」と思っても「自分で作ろう」と思い、実際に動ける人は多くはありません。
そこにハードルがなかったのかを尋ねると、それまでの高橋さんの経験が活きていることがわかりました。

息子が生まれる前まで勤めていた職場での経験は本当に価値あるものになっています。販売店との営業交渉や製造元とのやりとり、原価交渉、新作発表会の段取りなど、なんでも関わらせていただきました。前職とは扱う製品は異なるものの、“思いを乗せたものづくり”という点では共通しています。案ずるより行動を起こすことで次のステップが見えてくるのは経験上、理解していたので自分の『作りたい!』という気持ちをセーブしないように行動を起こすことを心がけました。」

高橋さんが目指す靴下は特殊な型。そこでまずはOEMを請け負ってくれる企業を探したという高橋さん。小ロットで対応してくれるOEMは少なく、たまたま連絡した会社が靴下の名産地・奈良県広陵町の工場と繋がりのあるところでした。価格は少し高めでしたが、出来上がってみたら品質と履き心地は想像以上。感覚過敏のある次男は「この靴下じゃなきゃいや!」と言うくらいだそう。程よい締めつけ感と編地の風合いがとても良いことが証明されています。

靴下の次に考えていたのが、身体が硬い子がスムーズに着脱できるトップスの開発でした。

パターンナーさんを自力で探してサンプルを作ってもらうのですが、なかなか理想の形にあがって来ず悩んでいたところ、人気セレクトショップShinzone代表の染谷氏を紹介していただく機会に恵まれました

染谷氏から「障がいを持った子の親となり、育児の中で感じてきたことはほかにも同じ思いでいるお母さんがいると思いますよ。そういう子のお母さんになったからこそ、できること。あなたの使命ですね」という言葉をかけられたと高橋さん。

すぐに儲かることは考えず、試練もあるでしょうけれどまずは10年頑張りなさいとももおっしゃって下さいました。諦めたらそこで終わり。だからまずは10年。これが今の課題です」。

「話し、動いていく中で、いろいろな方々と出会うことができました。改めて人の縁のありがたさを感じています」と高橋さん。
前の職場であるTWIGGYでもポップアップ開催が叶うなど、高橋さんの思いが応援の輪を広げています。

「前職の方々に久々に会った時にも、みなさん気さくに声をかけてくれました。私の活動について話したところ、ギャラリーを貸してくださるという話になり、ポップアップが実現しました」。

ポップアップでは、靴下に続いて開発した「着脱しやすいトップス」も販売。このトップスは染谷氏のアドバイスに基づいて開発した「究極の1枚」。わき周りがゆったりと作られ着脱しやすく、ボーダー柄のおしゃれなデザインになっています。ポップアップでも確かな手応えを感じたと高橋さんは話します。

わき周りがゆったりと作られ着脱しやすい「究極の1枚」。

子どもが自分自身でつかみとってくるものを大切にしたい

商品をただ売るだけではなくて、想いも一緒にメッセージとして広げていきたい」と話す高橋さん。

「障がいではなくても、子どもはひとりひとり個性豊かなものですよね。でも日本は周りの目を気にして生きづらい社会だと度々感じることがあります。子どもは“空気が読めてない”と言われたり、親は“子どもを見てない”と言われることがあったり。息子のように特性を持つ子どもが大人になった時、のびのびと、そして堂々と生きていける社会になってほしいと心から願ってます」。

わが子に肩身の狭い思いをさせたくないと真剣に語る高橋さんが、現在、力を入れているのはどんな子どもでも楽しめるリアルな場の提供です。

「息子が通う特別支援学校で、アートワークのイベントや身だしなみを楽しく学ぶセミナーを計画しています。自治体の任意団体とも繋がり、どのように活動を広げていこうかと一緒に考えているところです」。

子どもが自分自身で“伸びよう”とする力を信じて応援してあげたいと思っています。日本の教育は戦後から変わらず、全員一緒のことを一緒のタイミングでやらせますよね。でも実はひとりひとり子どもの伸びようとする力は違うので、そこにフォーカスを当てた教育になってほしいと切に願っています。そのために私の立場でできることを続けていきたいと思っています」。

「スペシャルニーズを持つ子どもの母として、大変でつらいこともあるけれど、楽観的に心の余白をもって育児をすることで子どもとの新たな発見があって楽しい!ということを発信していきたい」と話す高橋さん。Borderless Kidsを通して、理解の輪を拡げていきたいと話します。

子どもたちとの時間は「原点に立ち返る時間」

活動をますます広げている高橋さんですが、子どもたちとの時間は「原点に立ち返る時間」。オンオフの切り替えを大切にし、休日は仕事を入れないようにしているそうです。

「忙しい平日は時間との戦いなので、土日祝日はよほどのことがない限り、仕事を入れないようにしています。天気の良い日は大きな公園に行ったり、長男が大好きな東京タワーに行ったり。平日、離れて過ごす時間が長い分、1日中一緒にいる時間はとても大事です。長男と次男のふたり兄弟なのですが、ふたりとも体力がついてきて、外で発散しないとエネルギーがあり余って家じゅうでドタバタしています。雨じゃない限りは公園がお約束。こちらはハァハァしてしまいますけどね」。

子育てをする中で子どもたちに教えてもらうことが多く、原点に立ち返る時間が土日祝日だと話す高橋さん。
子どもたちと歩調を合わせながら、誰もが個性を尊重される社会を目指して進んでいます。

ISSHO NIは、ひとりひとりが大切にされ、みんなで子育てできる文化・環境づくりを目指し、「子育ての学びをもっと楽しく」をコンセプトに発信しています。LINEの「育児クイズパパ力検定」では、これからパパになる方・現在0歳の育児中の方向けにクイズで楽しく育児に役立つ知識が身に付くサービスをご提供。アンケートや、みなさまとの交流を通じてパパやママたちの「今」のリアルな体験や想いを集め発信していきます。

ISSHO NI(stores)でも、高橋さんが開発した靴下の応援販売をしています。


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