移住1年備忘録——「田舎に来たからといって生きる力が伸びるわけじゃなかった」
ども。根羽村民のマギー(杉山泰彦)です。
1年前から村に移住して、村全体のPRやブランディング、地域資源を活かした事業・商品設計を担当。俗にいう“地域プロデューサー”の立ち位置ですが、内情は長野県根羽村のお悩み相談所として業務の1/3は村民と雑談をしてました。
僕が夫婦で移住をしたのはちょうど1年前。1年という節目を通して、ちょっと振り返ってみようと思います。もがいたおかげでこれから村で展開する未来がだんだん描けてきました。(今年はnoteで発信するぞ!!)
長くなりますが、お時間があれば読んでいただけますと嬉しいです。(感想を聞かせてもらえたらもっと嬉しいです〜!)
田舎に来たからといって、生きる力が伸びるわけじゃなかった
移住して1年が経ちました。端的に、変わった部分と変わらない部分からお伝えします。
まず変わったのは家族との時間は劇的に増えました。家にいる時間が増え、心の余裕度は上がりました。家賃は3分の1になったのに家の大きさは倍。家ご飯の割合も圧倒的に増えて、通勤時間もほとんどないのて1日8時間は寝れます。
一方、自然があふれたところへ行くから心が落ち着くかと思ったら、それはなく。ストレスは環境ではなく“自分の思考の癖から生まれる”ことを自覚できました。
夜遅くまで仕事をしちゃうとか、現実的なプランニングが出来ておらず納期ギリギリで巻き返すことに、自然の力は役に立ってくれません。笑
たまによぎるのは「社会から取り残されないだろうか」という不安。都会の一次情報に触れられなくなるので、同世代がどんな思考でどんな実力をつけているのか、不安に思うことは多々あります。
これは今回気づいたのですが、東京に居るときからの癖だったんです。周りとの比較の中で、自分の良いところや悪い部分を捉える。でも村内で似たようなステータスの同年代がいないから、比較ができない(比較癖が強い自分にとって、これが以外と大変だった)。自分の現在地を捉えづらいし、仮にもう一回東京でバリバリ働きたいと思ったときに、30代で持つべきスキルや経験を詰めていなかったらどうしよう…とかね。
つまり何がいいたいかというと、暮らしや仕事、人間関係、自分が要因で生むストレスは、環境を変化させても変わらず残っています。田舎に来たからといって自然と生きる力が伸びるわけじゃない。
環境変化の理を活かして、自分で意志を持ち、捉え方や内的を変化させることが必要なんだ、と痛感した1年を活かしたでした。
すごい当たり前のことを書いているかもしれませんが、こういう生きる実体験から得られる学びを求めていたので、総じて移住を通じて得たい体験は得られているのかもしれません。
移住したのは、点ではなく「線」で地域に関わりたかった
そもそもの移住のきっかけを遡ると、自分の結婚式で起きた心情の変化からでした。「一心」というコンセプトで行なった式は、自分たちが丁寧に心を込められる、ストーリーのあるものだけを装飾に使った空間で行いました。
装飾を派手にするのではなく、深めることを大切にした1日。
東京での仕事や暮らしは、新しいもの・価値観に出会える広げる路線になりがち。でも、僕は結婚式で体験した、深めるからくる“心地よさ”が忘れられなくて。
この原体験が、僕の今の価値観を作っています。
社会人3年目から地方創生に関わる仕事をしてました。それぞれの地域のニーズに合わせて、デザイン・採用・イベント・ツアー作りなど幅広い領域を体験し、地域ごとで新しい価値観や文化に触れることができたことは新鮮でした。
ただ、3ヶ月間のプロモーションなど単発の取り組みも多かったこともあり、自分の中で「たった3ヶ月では終わらせたくない」という気持ちが込み上げてきました。
広げるじゃなくて深めるがしたい。そこでも同じ感情にぶつかりました。
「本質を形にする」が自分が仕事で大切にしたいこと。だからそれは、点ではなく、そこにいる人の人生に線でしっかり寄り添えるものでありたい——
そう考えたときに、「暮らしと仕事が分かれた環境」に身を置くのではなく、「暮らしの中に仕事がある環境で生きたい」と思うようになった。
結婚して2年、社会人経験5年。どこかこなれてしまった日々から脱却するためにも、夫婦で村に移住するという選択も面白いと思ってしまいあれよあれよと移住してました。(笑)
「今しかできない仕事とは?」の答えが、村だった。
長野県根羽村は、人口約900人の小さな村。林業の6次産業化、森を活かした食や酪農、源流を活かした体験コンテンツづくりなど、地域資源を活かした活動が常日頃存在してます。
僕はそんな根羽村に3年前から関わってきました。最初は空き家のリノベーション。そこから特産品のプロモーションや地域ツアーづくり、HPのリニューアルなど。東京に住みながらも年間20回ほど通ったと思います。
ただ、そんなに深くかかっていた根羽村でも、仕事をするなかで「もっと中に入らないと見えないものがあるな…」と感じてました。
僕の仕事は地域の「面白い」を切り取って見える化するの仕事だけど、本当に面白い部分は、村民のふとした一面から出てくる誇り・信頼・常識など、“言葉にできない何か”なんじゃないかなあ、と。
特に70才以上のおじいちゃん・おばあちゃんの会話はネタの宝庫。
例えば、根羽村のおじいちゃんはほとんどが“山から木を切って、外に運び下ろす”やり方を当たり前のように教えてくれます。いやいや、知らんでしょ。(笑)
それに、おじいちゃんおばあちゃんの世代は「ないものねだり」をほとんどしない。ここにあるもの、自分が持っている知識と技能をフル回転させて、楽しい時間の過ごし方、自分を豊かにすることをやっている。(昨日は自家製ドクダミ化粧水をいただきました。)
生粋の根羽村民はとてもクリエイティブに生きているんです。
「朝起きたら、直感で自分の罠にイノシシや鹿がかかってるか分かる猟師」とか「1日100匹アユを釣る猟師」とか。
生粋の根羽村民は第六感ビンビンなんです。
そんなの楽しそうな、感性溢れる生き様にとにかく惹かれて、
“やりたい仕事は他にもあるけど、このおじいちゃんおばあちゃんたちがビンビンのうちに、生きる力のエキスをたくさんもらって、それで仕事するのが楽しそうだなあ”
と思ってしまいました。
「地域のお悩み相談屋」をずっとやってたら点が線になってきた
でも村での活動は予想外のスピードで進んでいます。元々は木のおもちゃの事業や、地域資源を生かしたツアー作りをする予定だったけど、今は全く違うテーマに取り組んでいる。
トマト農家の経営マーケティングのお手伝いをしたり、森林組合の組織づくりに関わったり、若者が集まるコミュニティを作ったり。トウモロコシでクラウドファンディング してみたり。運営している一棟貸しの古民家「まつや」は計150人の人にお越しいただき、面白い人が泊まりにくるたびに宿泊者と地域の方との合同飲み会をしてました。
そんなこんなを日々やりつづけたら、「村の明るい未来」について話し合う人が増えてきました。というか、みんなで共通のゴールが見れるようになっってきた。
12月にはSDGsのカードゲームで村の未来を考えるイベントも地元出身の若手主催で行われました。中学校の授業や総合学習でもSDGsが取り扱うようにもなったり、今度も村のメンバーで一緒に研修にいったり。
変化っぷりがすごいんです。
「Aさんの困りごとを聞いて、Bさんに相談して、BさんからCさんを紹介してもらって…1個1個相談すべき人に相談して進めていった結果、人とのご縁、対話の中で形になっていき、点が線になった。
それは凄く嬉しいし、そのおかげでこの1年で色々な人の信頼も得られたことは、自分でもよく頑張ったなあと思います。
田舎の利を活かして進む、村民らしく
1年目は守破離の「守」をやったように思います。2年目は「破」のフェーズ。ボトムアップ型で目線を合わせて進めていくだけでは限界を感じたので、村民の目を恐れず挑戦していこうと思います。
テーマは「教育」と「SDGs」。森林環境と、林業人のノウハウを掛け合わせて、「生きる力」を身につけられる事業を考えてます。国も「森林ESD」を推進しているので、連携できればと思います。
また、子育ても新米パパ頑張ります。田舎で育てるととても優しい子どもが育つと思います。あらゆるおじいちゃんおばあちゃんから抱っこされ、生きる力エキスがもらえるので。笑
一方で、都会で育てることに比べて村内で提供できる体験の選択肢は制限が生まれます。そこをどう補い、こどもの可能性を潰さないでいられるか。ここはパパとしての僕のテーマです。
田舎の利を活かせるかどうかは、自分次第。
環境に身を任せるだけでは変われない部分があることを知ったので、2年目は少し流れに任せることを手放し、向かいたい先に意思を持って進めていこうと思います。
1年後の2020年の12月末、もっと村民らしくなっていたら嬉しいです。田舎臭さが自分たちから滲み出るような。畑仕事ができるようになってたり、刈払機を当たり前に使えたり、木を使って何か作れるようになっていたり。
杉山泰彦
1991年8月25日生まれ。新卒1期生で株式会社CRAZY(CRAZY WEDDING)に入社。「イキイキとした社会づくり」を目指し、採用・マーケティング・組織づくりを担当。2017年2月より会社の新規事業として地方創生事業の株式会社WHEREに参画。「地域のライフスタイル事例の発信から、生き方の多様性を発信する」を目的に都心向けの地域PRを主に2年間で20地域の営業から案件納品まで行なった2018年12月、に長野県根羽村に夫婦で移住。7月には子供も生まれる。移住して1年、山村を舞台にした魅力・森の魅力を活かした教育/研修型の体験コンテンツを企画中。SDGs・マインドフルネス・ヨガ・リトリート・チームビルディングあたりがキーワードになりそう
執筆アシスタント : 水玉綾 フリーランスの編集者・ライター
株式会社CRAZYにて人事担当として、2016年10月に採用広報を目的としたオウンドメディア「CRAZY MAGAZINE」を立ち上げ、2018年7月に独立。現在は外部広報として「CRAZY MAGAZINE」の編集長をする傍、DeNAの採用メディア「フルスイング」で企画編集や、「新R25」「未来を変えるプロジェクト」等のメディアにて働きかた・組織論を中心としたインタビュー・記事制作を担当。
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