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釣 魚 部 年 誌（「王友」第十九號）
△ 春季鮒釣大會 △
巢離れより乗込み迄の會員有志試釣の情報
を綜合した結果、最有望視される千葉縣大須
賀川で十七年度幕開き春季鮒釣大會を開催。
三月廿九日兩國驛發銚子行列車（先發部隊
は六時五十五分、後續部隊は臨時七時六分に
分乗）にて大戶驛に向ふ。車中は例の通り神
崎水郷方面行の同好の士にて超滿員。混雜の
爲各驛停車時間次第に遅延して、目的の大戶
驛に一同勢揃したのは豫定時間よりもずつと
後の事であつた。加ふるに先發隊の一員鈴木
氏が次列車待合せの僅かの間に待合室に置い
た愛竿入サツクを盗難に遭ふ事件も勃潑し、
同氏は勿論同行者も大腐り。然し何とも致方
なく一行は鈴木氏を宥めつゝ釣場へと急ぐ。
大戶の町を過ぎ縣道の橋を渡つて對岸へ行
同志があれば、橋の手前の土堤から下流へ
と早速試みる連中もあり、更に六本松方面迄
も遠征する人達もあつて思ひ思ひに散開。數
實來晴天續きであつたが、今日は朝から曇り
勝ち、時々思ひ出した樣に雲が切れるが、氣
溫は低く水量も豫想より少くコンデツシヨン
不良、一般に成績も擧らぬ模樣であつた。更
に午後になり小雨さへ降り初めたので、見切
りを付けて歸つた人達もあつたが、五時過驛
前の成績審査の結果は次の通りであつた。
氏名 目方（匁） 順位
鈴木 400 1
永井 340 (大物賞)
依田 300 2
新田 260 3
石川 260 4
石井 240 5
田畑 200 6
高橋 190 7
佐藤 180 8A
横田 160 8B
片岡 160 10A
田代 150 10B
高木 140 12
坂田 100 13A
富本 100 13B
只腰 90 15
渡邊 80 16A
菊池 80 16B
關屋 60 18
加納 50 19
原 30 20
大物賞は鈴木氏八寸六分、永井氏八寸一分
なるも鈴木氏は一等に付、永井氏を大物賞と
する。
入竿前盗難に遭つた鈴木氏目方も型も最優
秀、「借りた竿でも腕は斯くの通り」と氣をよ
くした樣子。
歸りの汽車は超滿員、到底乗車不可能なの
で佐原迄逆行、漸く佐原發十九時三十分臨時
列車に乗車する事が出來た。
△清水の白鱚釣△
毎年書入れの清水遠征も列車混雜の昨今、
公式の團體遠征としては面白からずとの御注
意もあり、中止と決定したが、好きな道は格
別で二、三人の有志で計劃して行く事になつ
た。
五月三十日二十三時四十分東京發廣島行列
車に乗車、翌三十一日三時三十六分清水驛着
工場山林有志の出迎えを受け例年の船宿へ。
昨年、一昨年と續けて降雨、荒天に祟られ
たが、今年は精進のよい人達ばかりのせいか
天候も上乗で、往年の大漁を豫想させたが、
さて竿を下して見ると意外な程の不良成績で
あつた。とは言へ獲物の多寡は問題ではな
い。今年は出來ないと思つた清水へ來く事が
出來、靈峰富士を眼前に興津の海に船を浮べ
る只其事だけでも毎日を事務机に齧りつい
て暮す我々には滿足であつた。毎回遠征の度
に御迷惑を掛け、御厚意に甘えさせて頂く工
場山林關係有志の方々に誌上を拜借して御禮
を申上げる次第である。
△秋季海釣大會△
江戶前のハゼ釣は昔は秋の彼岸頃から始め
たものであつたが、近頃段々早くなり盛夏の
候から攻め始めるので、本當のハゼ釣季節迄
には獲物の數も減じて仕舞ふ。我釣魚部員有
志も昨年來お馴染の木更津へ八月頃から出漁
しては大漁を續けて來た。
さて愈々本季節となり、大會を計劃するに
當つて江戶前は船の入手困難、木更津は釣餌
（ゴカイ）の仕入困難ではあるが、然し大漁續
きならば其等困難をも突破して企劃しやうと
も思つたが、九月、十月と經過するに從ひ次
第に不漁の情報も入り等して豫定を變更、此
較的安全性のある船橋にて開催する事にし
た。
十一月一日七時省線船橋驛集合、同市湊町
の船宿鈴木春吉方から四艘に分乗出船した。
當日は海面にて實彈射撃演習の告知あり、
海上遠く出漁出來ないので、出船數十分にし
て釣初めたのであるが海立淺く底が見える程
なので釣惡く且つ雨さへ見るに至つたのでシ
ビの近く迄引返し、雨の晴間を見ては釣りつ
ゝ午後迄競技を續行したのであつた。
今回も順位決定に横並べ式を採用したので
各人多少の運不運があつた事と思ふ。宿船に
歸り小林會長より夫々賞品を授與の後獲物を
手に歸途に就いた。
以上を以て昭和十七年度行事を終る。
（一八、四、二〇）
成績（横並式に付各船一、二等中より順位を附す
各號船下番號は船の成績順）
魚 數 船別 總
船 席次 氏名 ハゼ 雜魚 計 順位 順位
１ 永井 124 1 125 1 1
一 ２ 堤 23 0 23 7
號 ３ 關屋 40 0 40 5
船 ４ 田畑 37 1 38 6
（２） ５ 石川 60 3 63 2 8
６ 矢島 44 3 47 4
７ 新田 57 1 58 3
計 385 9 394
１ 依田 65 2 67 2 7
２ 小林 70 3 73 1 4
二 ３ 富本 32 1 33 5
號 ４ 高田 13 0 13 7
船 ５ 田代 32 0 32 6
（４） ６ 富台 37 1 38 3
７ 高橋 35 3 38 4
計 284 10 294 3
１ 鈴木 90 2 92 3
２ 渡邊 112 0 112 1 2
三 ３ 片岡 95 1 96 2 5
號 ４ 加納 51 1 52 5
船 ５ 横井 40 0 40 6
（１） ６ 廣中 36 0 36 7
７ 八木 35 0 35 8
８ 横田 73 0 73 4
計 532 4 536
四 １ 宇野 46 1 47 5
號 ２ 新 58 1 59 4
船 ３ 原 75 5 80 1 3
（２） ４ 大石 44 0 44 6
５ 菊池 62 0 62 3
６ 澁谷 22 0 32 8
７ 妹尾 68 0 68 2 6
８ 辻 39 1 40 7
計 414 8 422
合計 1615 31 1646
平均 54 1 55
（「王友」第十九號
昭和十八年十二月二十八日發行 より）
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