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魚 拓 紹 介

          本 社 菊 池 一 錢 亭

 ひとり釣好きばかりでなく、どんな人にとつ

ても、魚拓といふものが、如何に趣味深き藝術

品であるかといふことを知つて頂くために、北

海道山林部の星直太郎氏から小林準一郎氏にお

くられた魚拓のうち、上掲の二枚を特に乞ふて

本誌上にかざらせてもらふことにした。

 この魚拓をみつめてゐると、星氏が念願の大

物を釣り上げられた瞬間の、なにものにも代へ

がたい、歡喜にみちあふれた表情が眼に見える

やうである。これは釣りに無經驗な人には分ら

ない法悦境である。

 星氏の魚信の一節に「私のみならず苫小牧工

場の人々はその後吾もわれもと釣熱心と相成

り、昨日の定休日は白老、社臺、敷生、小原魚

の各川にヤマベ釣り、早い組は午前二時半、次

は三時半、四時と各々自動車を飛し出掛け申

候。私共は(西岡君、工藤君と一行三人)矢張

り午前三時半出發錦多峰中市沼に出掛申候。収

穫は西岡君、鮒九寸八分を頭に五尾、工藤君は

鮒六七寸ものを十二尾、小生は鯉一尺四寸七

分、鮒九寸八分外三尾といふ成績にて、漸く念

願の大物を釣り上げ得て、溜飲を下げ申候。」

とあり、又「飜つて本年の本年の釣日誌を披き

見るに、正月六日東京出張中、狛江の釣堀にて

鯉二尾(九寸もの)を釣りあげたると筆頭に、

歸苫後北海道にて、五月六日を最初として(収

穫皆無)、十月二十一日を最終(収穫皆無)

に、その間鮒大物専問に車竿を携へ、毎定休日

を雨天の外缺かさずに出掛け申候、鮒の大物は

一尺二分を頭として、(昨年の記錄は一尺五

分)九寸八分、八寸處を上げ、鯉はあの一尺四

寸七分を最大として、その外七寸もの一尾丈け

に御座候。」とある。

 内地に比べて漁期が短い點は惠まれないが、

思ふ存分大物釣りの出來ることは羨望に堪へな

い。星氏を始め在北海道釣人諸氏の釣運益々旺

んなるを祈つてやまない次第である。

(「王友」九號 昭和九年十二月二十日発行 
                  より)

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           紙の博物館 図書室 所蔵



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