推進陰謀論 vs 反対陰謀論
新型コロナウイルスのワクチン接種、一気に加速しそうな状況になってきました。私の仕事場でも、ワクチン接種に関するヒアリングなどがあり、いよいよ身近な問題になってきた気がします。
ワクチン接種を切望していた人々からすると、ようやく順番が回ってきたといった感じでしょうか。
ところで、直近のワクチン接種のカーブは、わずかながらやや横ばいに傾きかけているようにもみえます。
今まさに、本格的に接種を進めるという時期なので、これから一気に接種が加速する可能性もあります。しかし、ワクチン接種を進めたい側からすると、やや気になる動きです。そして正直、ワクチン接種を進めようとしている人々からしたら、私のように今回のワクチンを疑問視したり、それについて情報発信をするような人間は、邪魔でしかたないはずです。
なので、このタイミングで、あらためてそうした邪魔な人間には陰謀論者のレッテルを貼る必要があります。
はい、そしてやってきました。
新型コロナやワクチンを巡っては、誤った情報が大量に出回っている。
SNS上では、ワクチンに遺伝物質のメッセンジャーRNA(mRNA)が使われていることを理由に、接種すれば「遺伝子を組み換えられる」という投稿が拡散。厚生労働省や専門家によると、mRNAは、細胞の核内に入り込むことはなく、遺伝情報に変化を起こすことはないという。
※読売新聞オンライン「「コロナは存在しない」荒唐無稽な主張するグループも…誤った情報、大量に出回る」2021年6月21日より引用
相変わらずの手口です。極論を引っ張ってきて、ワクチンの危険性に対する真面目な議論をけむに巻く戦法です。これについては、既に過去の記事でまとめた通りです。詳細は、そちらをご覧ください。
ところで、今回の報道、少し興味深い点があります。1か月ほど前、同じ読売新聞オンラインでは、以下のような陰謀論を扱っていました。
通行人に配っていたビラでは「コロナはただの風邪。世界の資本家が各国の政府を操り、でっち上げている」「ワクチンで人間にマイクロチップを埋め込むのが目的」などと主張。
根拠のない話だが、男性は「ネットで調べて『真実』を知った」と言う。
※読売新聞オンライン「ワクチンで「黒幕が人類管理」「人口削減が狙い」…はびこる陰謀論、収束の妨げにも」2021年5月16日より引用
ここでは、ワクチン推進派には大資本を操る黒幕がいて、彼らがワクチン接種を進めているという陰謀論を取り上げています。この陰謀論の主張はこうです。
ワクチン進める人々=大資本を操る利権集団
覚えておいてください。陰謀論には、いろいろな切り口がありますが、ここがひとつの重要なポイントです。つまり、ワクチン接種を進めようとしている側には巨大な利権があって、その豊富な資金力によって陰謀が繰り広げられているという点です。陰謀ですから、資金がかかるのは当然です。
そんなことを念頭に置きつつ、こんな動画があったので、是非、ご紹介したいと思います。
※この動画のアップ主の方を中傷したいなどという意図は全くありません。
※純粋に論説として、私の考察を交えながらポイントを整理するものです。
こちらの動画で取り上げられているのは、以下の記事のようです。
調査によると、COVID-19に対するワクチンの展開を弱めるような誤った情報を広めている人々は、十分な資金と決意、そして規律を持っています。彼らの活動に対抗するためには、COVID-19の危険性やワクチン、医療関係者の誠実さに疑念を抱かせるような活動を行っている業界として理解する必要があります。
(中略)
実際には、「アンチワクチン産業」の主役は、プロのプロパガンダ集団である。主に米国で設立された数百万ドル規模の組織で、1人あたり60人ものスタッフを抱えています。彼らは、活動家のためのトレーニングマニュアルを作成し、さまざまな聴衆に合わせてメッセージを調整し、他の産業と同様に年次取引会議のような会議を手配しています。
※nature medicine「Dismantling the anti-vaxx industry」2021年3月15日より引用(機械翻訳)
なかなか興味深い指摘です。今一度、整理してみるとこんな感じです。
・コロナワクチン反対活動は十分な資金と規律をもって展開されている
・彼らはアンチワクチン産業のプロのプロパガンダ集団
・活動家のためのトレーニングマニュアルも作成してある
ここで思い出してほしいのです。「反対活動は十分な資金」をもって展開されているという部分です。何となく何かに似た匂いがしませんか?そう、陰謀論です。コロナワクチンの反対活動は、陰謀だと言っているのです。
上掲の読売新聞の記事では、「コロナワクチンの推進は陰謀だ」と騒ぐ人たちを陰謀論者扱いしていますが、こちらの論説を見る限り、「コロナワクチンの反対は陰謀だ」と主張する陰謀論者もいるようです。
つまり、こうした相反する2種類の陰謀論者が存在するということです。
1.コロナワクチン推進者は悪い奴らだ、陰謀だ!
2.コロナワクチン反対者は悪い奴らだ、陰謀だ!
さて、まず「1」について見てみましょう。
ワクチン接種を進めることで、たくさんのお金が動きます。もちろん、そこに巨大な利権が生まれることは間違いありません。
税金をじゃぶじゃぶ使って、ワクチンに関わる人や企業にお金が流れまくる仕組みになっていることは、誰も否定することができないでしょう。超巨大なスポンサーの話もあります。もちろん、それで潤う人や企業がいます。
一方で、「2」はどうでしょう?
どこにスポンサーがいるのか、この記事が参照しているURLまで見に行きましたが、ほとんど何も出てきません。Facebookの非公開グループがあるだの、Youtubeのグループのフォロワーの数がすごいことになっているだのという話はあるものの、「十分な資金力」の提供者に関する具体的な言及は皆無といっていい状況です。
こちらの記事には、コロナワクチン接種後の副反応として、ものすごい数の投稿が紹介されています。
ひとつひとつ見ているだけで、ゾッとします。全部ではないですが、試しにいくつかの投稿について、実際のアカウントを覗いてみると、確かにそういうアカウントが実在することは確認できます。これだけのアカウントを買い占めて、工作をするとしたら、相当の資金を必要とするはずです。なかには「ワクチンで人口削減とか言っている人たちは頭おかしい」といった具合に、本来自分たちの側である「コロナワクチン反対」の人たちを卑下するようなことを書いている人もいますので、工作だとしたらかなり巧妙でもあります。これだけの工作を展開するため、資金の裏付けや背景にはどんなものがあるのか、具体的な説明がないことはとても残念です。
「2」の陰謀論者は、さらに不思議な論を展開しています。
ソーシャルメディア上でアンチワクチンの誤報を目にしたとき、明らかな欠陥や虚偽を指摘したくても、それに加担してしまうことは避けなければなりません。ネット上の誤報に関与することは、誤報をさらに広めることになります。それよりも、信頼できる情報源からのワクチンに関する良い情報を共有する方が、はるかに有益で効果的です。
(中略)
すべての反ワクチンのメッセージは、3つの部分からなるマスターシナリオに集約されます。「COVID-19は危険ではない、ワクチンは危険である、医者や科学者を信用してはいけない」。くだらない陰謀論にいちいち反論するのではなく、開業医はこの3つの中心的な主張に対して予防接種を行うべきです。
※nature medicine「Dismantling the anti-vaxx industry」2021年3月15日より引用(機械翻訳)
この陰謀によって流される情報には、いちいち反論するなとアドバイスしているのです。なんでこんなことを言うのでしょうか?
「明らかな欠陥や虚偽」があるのならば、それを指摘して潰してしまえばいいだけのことです。オープンな議論こそが、嘘やデマを叩きのめすための最大の攻撃であることは間違いありません。それをわざわざ「反論するな」というのはどういうことでしょう?(あー、どっちが嘘かばれちゃうからかな・・・)
これ以上言ってしまうと、本当にいたたまれない気分になってくるので、これくらいにしておきます。いずれにしても、この2つの陰謀論を比べてみると、「2」の陰謀論はとんでもなく出来が悪いことだけは確かです。陰謀論の出来としては、「1」の方が圧倒的に緻密で、よく出来ていると言わざるを得ません。
ここで、一旦結論です。コロナワクチンを反対している人々の活動を「陰謀」として捉える陰謀論は、かなりの無理筋だと思います。もう一方の陰謀論を貶めるための工作(陰謀)である可能性すらあるので、注意が必要かもしれません。
ついでなので、こちらの動画で取り上げられているファイザーワクチンの有効性に関する内容についても触れておきたいと思います。元となっている記事は、こちらのようです。
ファイザー社のコロナウイルスワクチンは、重症患者に対して約97%、無症状の感染者に対して約94%の効果があることが、製薬会社と保健省が木曜日に共同で発表した新しいデータで明らかになった。
この研究では、1月17日から3月6日までにイスラエルで収集された情報を考慮した。ワクチンを接種していない人は、2週間前に2回目の接種を受けた人に比べて、COVID-19の症状が出る可能性が44倍、ウイルスに感染する可能性が29倍であることが分かりました。
※THE JERUSALEM POST「Pfizer: COVID vaccine 97% effective, Israeli data shows」2021年3月12日より引用(機械翻訳)
この記事では、接種後、2週間程度の人との比較をしています。たしかに、この程度の期間だと効果が出てもおかしくないと考えられます。以下の記事でも取り上げていますが、ワクチン接種後の初期段階で、ワクチンが奏功する可能性はあります。しかし、問題はその後なのです。
ボッシュ博士は、ワクチン接種は、支配的(より広範に伝染している)なウイルスには効くため、一時的に感染が収まったようにはみえるものの、より感染性の高い変異株の流行を抑えることはできないと警告しています。つまり罹患率は、ワクチン接種で一度は下がるものの、異なる変異株の流行により再び上昇すると予告しているのです。
※「ワクチンって逆効果なんじゃね?」より引用
実際に、そろそろイスラエルでもおかしなことが起こり始めた可能性もあります。
そのイスラエルでも新型コロナ感染再拡大の警告が出ている。最近、一部の学校で相次いで集団感染が発生したからだ。まだワクチンを接種していない数十人の生徒が感染し、防疫当局が緊張している。
(中略)
これとは別に17日、イスラエルの都市ベトシェアンで開かれた行事場所でも数人の感染者が発生した。こうした状況を受け、1けたまで減少していたイスラエルの新規感染者数は最近2けたに増えている。
※中央日報「マスク外して数日後…「接種率60%」イスラエルでも集団感染」2021年6月22日より引用
まだ詳細は分かりません。ただし、ワクチンが本当に有効かどうかは、もっときちんと時間をおいて検証すべきであることだけは確かです。2週間やそこらの時間で区切って、ワクチンの有効性を主張することが、適切であるとは思えません。
このあたりに反論の余地があるものについて、さも「ワクチンは有効である」という点ばかりを強調する内容には、注意深くみていく必要があるように思います。