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沖縄で感じる「ローカル」の可能性
沖縄に行ってきました。
まず・・・海がきれい!!
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この季節、海中のプランクトンが少ないらしく、海の透明度も高いといいます。夏場のように海でのアクティビティーはできないものの、上から海を眺めるというだけでいうと最高の季節なのかもしれません。
ところで今回、沖縄に行ってみて感じたことは、「ローカル」の素晴らしさと可能性です。
分かる人には分かることですが、今のグローバリズムというのは、大変、ヒドイものになってきてしまいました。簡単に言えば、国家を含む地域性の壁を取っ払い、大資本を操る人間が、大多数の人々の生活をコントロールできてしまうような仕組みです。
グローバリズムの進展は、経済性や効率性という意味において、大変なメリットがあると思われます。しかし一方で、これからの時代、そうしたグローバリズムによって、人々の生活が、ごく少数の人々に簡単に制御されてしまうような社会になっていくことがみえてきています。その点、大変危惧すべきポイントです。食料危機の問題なども、深く関係しています。
しかし今回、沖縄に行ってみると、そうしたものの影響が、まだだいぶ薄いように感じられました。沖縄のスーパーに行けば、沖縄県産の商品が、数多く並んでいます。
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グローバリズムの波が押し寄せているなか、まだ多少なりとも、昔ながらの「独自経済圏」を保っているようにもみえるのです。
そもそも、沖縄の歴史は、独自に紡がれてきたようです。
例えば、観光地としても有名な首里城などは、14~15世紀のものです。詳細は省きますが、いわゆる「日本史」として、日本人が広く学んでくる歴史から考えると、沖縄の歴史は、そんなに長いとは言えなさそうです。
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しかし、当たり前のことですが、だからといって、沖縄に歴史がなかったわけではありません。沖縄には、沖縄独自の歴史があります。
今回、沖縄に訪れた際、久高島という島に行ってきました。
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ここは、「神の島」などと呼ばれることもあり、一般の人は、けっして足を踏み入れることができない聖域もあります。島の北端には、沖縄の創世神といわれるアマミキヨという神様が降臨した場所というところもあります。古事記や日本書紀風にいえば、天孫降臨のような話かもしれません。
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今、沖縄は日本の一部となっていますが、沖縄には、元来、独自の世界観があるのです。
「古事記?日本書紀?知らねえよ」
そんなところかもしれません。
天孫降臨だけではないです。沖縄には、「アダムとイブ」や「イザナギとイザナミ」のような人類発祥にまつわる名所もあります。
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美ら海水族館から、少し東に行ったところにある古宇利島は、古宇利大橋やハートロックでも有名な観光名所です。その古宇利大橋を渡ってすぐのところには、「はじまりの洞穴」という人類発祥の地とされる場所があります。
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二カ所あるらしいので、両方とも行ってみた。こちらは、西側の方。
なかなかに壮大です。壮大ですけど、そんな壮大な話が、沖縄のなかにあるということに、高い関心を覚えます。私たちからすると、日本における最初の男女神といえば、「イザナギとイザナミ」です。けれども、沖縄では(広く知られているかはどうかの議論はあるにしても)必ずしもそうではないのです。世界観における源流に近い歴史について、これだけ違う言い伝えがあるというのは、それだけ独自性があるということでもあります。
神社にしたって、面白いです。
沖縄には、あまり神社がありません。そんななかで、珍しく那覇市内にある沖宮という神社のご祭神は、元々、ご霊木です。つまり、特定の名前がある神様というのではなく、あくまでも自然信仰のなかから、それをかたちにした神社ということです。
一七一三年琉球王府発刊の「琉球国由来記」によると
那覇港に光り輝くものがあり
奇瑞奇妙に思われた時の琉球国王が探索させたところ
引き上げられた枯木は尋常ならざる木で
「これぞ蓬莱の霊木なり」と社寺を建て祀った。
このことから感じ取れるのは、沖縄では15世紀より以前、誰が支配者で、人民がどんな管理をされていて、どのように争いを収めていたとか、そういうものがあまりみえてこないということです。
それは、そうした社会システムを構築できない「未開の地」だったとか、けっしてそういうことではなく、自然を信仰して、そこに神性を見出し、そうした社会システムを必要とせずとも、人々が生活できる社会基盤を構築できていたのかもしれないという可能性です。
そして、そう考えたら、沖縄はエラく進んでいるようにもみえるのです。
注目すべきは、「グローバリズムなど知ったこっちゃない。こっちにはこっちの世界観があるんだよ」というところです。沖縄県産の物品で溢れているのをみれば、経済圏だって、それなりの規模を保ちながら、自分たちのなかで回していることをうかがい知ることができます。
今、日本はもちろんのこと、世界中でグローバリズムが幅をきかせ始めています。そんななか、一見、歴史も浅くて、深みがないようにも感じられる沖縄ですが、それはまったくの逆で、その実、これからの時代、私たちが生きていくうえで、とても重要なヒントが隠れているように思うのです。
そのことは、例えば、中世から近世にかけて、中国大陸や日本(江戸幕府?)の影響を受けつつ、独自の文化圏・経済圏を維持してきたことにも繋がるのかもしれません。当時の中国大陸や日本からの政治的な圧力というのは、今でいうところのグローバリズム(全体主義)のようなものとも言えます。地域性の壁が打ち破られ、より全体的で集権的な体制への移行を強いられるという政治的力学があったと考えられるのです。
しかし沖縄は、そうした圧力をうまく受け流しながら、独自性を保ってきました。そこに今を生きる私たちにとって、大いに見習うべきポイントがあるように思うのです。
今の沖縄には、米軍基地が置かれていたり、中国からの進出が目立っていたり・・・なかなか大変な事情も見え隠れします。それだけをみると、そんなに希望があるようにみえないかもしれません。でも、そうでもないと思います。
沖縄には、グローバリズムに負けない「ローカル」としての生き方が詰まっている・・・訪れる機会がある方は、是非一度、そんな目で沖縄を見てみてはいかがでしょうか。