「半沢直樹」が教えてくれること
ひょんなことから、とある動画配信サイトに会員登録をすることになり、3周遅れくらい(?)で、「半沢直樹」というドラマをみました。
今さら?って感じかもしれませんが、今さらです(笑)。
いろいろと申し述べてみたいことは山積みです。ただそのなかで、このドラマを通じて、かつて自分が人間社会にまみれて、ビジネスマンをしていた頃のことを思い出したので、ここではひとつ、それについて書いてみたいと思います。
それは、これからの厳しい社会を生き抜くためのヒントになりそうなので、少しだけお付き合いください。
「半沢直樹」はドラマなので、たくさんの奇跡的なことが起こり続けます。
ドラマだから当たり前?
いえ、私は違う感想でした。現実も、そんな感じでドラマチックだったりします。
例えば、半沢直樹が金融庁調査で絶体絶命の状況にあり、いよいよ最終結論を申し渡されるシーン・・・半沢直樹も諦めかけます。しかし、ちょうどそのとき、彼の携帯電話にメールが入って、形勢が逆転し、半沢直樹側が大勝利を収めます。会議室はお祭り騒ぎです。
そんなタイミングで、そんな奇跡ありうる???
ここで私の実体験です。
私は昔、アイピーモバイルという会社で、携帯電話の新規参入の仕事をしていました。
無事、周波数を使うための免許をいただき、事業の準備を進めていました。
ただし、この会社を立ち上げるには、大きな問題がありました。詳述は避けますが、携帯電話事業を展開するためには、初期の資金調達で根本的な問題があったのです。
それはさておき、なかなか思うように資金調達が進まなかったため、株主の意向によって、経営陣が刷新されることになりました。結果、社長だけ据え置いたまま、それより下の創業者メンバーである取締役は、全員退任となったのです。
当時、私も取締役だったため、退任させられることになりました。
そして、それまでの役員たちは、私を除いて、みんな会社を去りました。私だけが会社に残った理由は、来るべき大逆転劇に備えて、一人は会社に残った方がいいということでした。
創業メンバーは、大逆転劇を目論んでいて、まだまだ諦めていなかったのです。
かくして、アイピーモバイルには、めでたく新しい役員たちが入ってきて、私は平社員となりました。平社員となった私は、総務部で稟議書の採番係を仰せつかりました。
そのとき、上司となった総務部長さんからは、「こんな仕事も、まともにできないのですか?」と、だいぶなじられました。ついこの間まで取締役だった年下の若造が、転がり落ちてきて、自分の部下になったというシチュエーションが、痛快だったのかもしれません。
そんなわけで、私はなじられ続けながら、平社員の稟議書の採番係としての日々を送ります。同時に、創業メンバーの元役員たちは、次の資金調達のために動き回っていました。時折、資金調達の打合せということで、勤務時間中に近くのホテルに呼び出されたりすることもありました。しかし、稟議書採番係の平社員が、勤務時間中に長時間席を外すのは一苦労で、窓際&不良社員としての毎日を過ごしていました。
そうこうしているうちに、いよいよ資金も底をついてきます。
結局、新しくやってきた経営陣も、その難局をどうすることもできず、ついにこんな記事が出るようになりました。
この記事が出たのが、2007年4月8日の日曜日でした。
記事にもある通り、この一週間前の4月2日、新しい経営陣によって、総務省に対して、周波数免許を返上するという申し出がなされていたのです。資金不足が理由でした。
別途資金調達を画策していた創業メンバーの元役員と窓際&不良社員の私は、この動きを察知して、当時の総務大臣である菅義偉氏に極秘裏に会いに行きました。菅大臣には、このことは口外するなと言われていましたが、もうさすがに時効だと思うので、書いちゃいます。
このように総務省からは、週明けから2~3日は待ってもらえることになっていたのです。しかし一方で、週末の日曜日、上掲のように「携帯電話事業への参入を取りやめる」という記事が出ており、10日には記者会見が行われる予定になっていたため、私たちには、ほとんど時間が残されていませんでした。
そして火曜日・・・アイピーモバイルの会議室では、正式に免許返上を決める取締役会が開かれていました。取締役会での決定が出たら、それを即、記者会見で発表する手はずになっています。
その同時刻、窓際&不良社員の私は、最後の望みをかけて、資金調達に向けた話し合いの場所に出向いていました(徹底的に不良社員でした)。結論が間に合わなければ、取締役会で正式決定されて、そのまま記者会見で発表されてしまう状況です。
そして、そのギリギリのタイミングで、森トラストがアイピーモバイルに出資するという話がまとまりました。本当にギリギリです。
話がまとまった瞬間、私はすぐに取締役会に出席中の社長に電話をかけました。
「今、森トラストから出資の合意を取り付けたので、取締役会での正式決定は、待ってください!!今すぐ、そっちに行きます!!!」
私は外出先から、急いでアイピーモバイルの会議室に向かいました。会議室に飛び込むと、キツネにつままれたような表情をした取締役の面々が、私を迎え入れてくれました。
「森トラストが出資に合意してくれたので、免許の返上は必要なくなりました」
それを聞いた役員たちは、何と言っていいのか分からない様子です。そのうちの一人は、無言のまま、震えた手でお茶を飲んでいたのを、今でも鮮明に覚えています。
「資金の目途が立ったので、記者会見では、免許の返上は必要なくなったということでお願いします」
私がそう言うと、そこにいた主要役員が口を開いて言いました。
「森トラストの話は、ここにいる全員が何も分からない。竹内さんが記者会見に出てください」
「はい?でも、私は取締役でも何でもない、ただの平社員ですよ?」
「いや、でも森トラストの話は誰も分からないんだから、竹内さんが出るしかない。執行役員として出てください」
「へ・・・(マジで)?」
ということで、行われた記者会見がこれでした。
その時の私・・・
執行役員ということになっていますが、実際には、稟議書採番係の平社員です。
正直、ちょっと怖い顔してます(笑)。「半沢直樹」もそうですが、人間社会にまみれて、ビジネスマンをするというのは、ちょっとした闘争本能のようなものがないと、生き残れないのかもしれません。このときの私は、そういう顔をしている気がします。
いずれにしても、この直前まで、免許返上が決まりかけていたのは事実で、奇跡の大逆転劇であることは間違いありませんでした。
「半沢直樹」をみて、(他にもいろいろありますが)例えば、こういうことを思い出したのです。
ここで言いたいことは、ギリギリまでやっている人間には、奇跡的なことが起こるということです。ドラマは、ドラマだから奇跡的なことが起こるわけではありません。現実もまた、とてつもなくドラマチックであることを知る必要があります。
ただし、それにはコツがあります。無我の境地に達するような、心持ちで成し遂げることが肝要です。
「半沢直樹」というドラマをみて、「あんなのドラマだ。現実世界では、あんなふうにはならない」と決めつける人は、本当にギリギリまでやった人ではないのかもしれません。
現実世界は、とてつもなくドラマチックなのです。
そのことを知るくらいギリギリまでやった人間は、この世には見えない壁があり、それを打ち破ることができることを理解できるようになります。自分の人生には、次々と奇跡的なことが起こることを知るのです。
それこそが、これからの厳しい時代を生き抜くためのヒントです。私たちには、奇跡的なことを起こせる力があるということです。
ちなみに、この後、アイピーモバイルは失敗し、会社はなくなりました。
しかし、振り返ってみると、あの失敗のおかげで、私は現在、人生をかけて成し遂げるべき仕事、進むべき道を歩めるようになっていると思っています。今、私は全然違う仕事をしています。時間の使い方も、すっかり変わりました。
それは、あのときギリギリの挑戦をして、人間社会の限界や淵を覗いたからです。その結果、この世には見えない壁があり、それは自分で打ち破れることを知りました。そのことで、人間社会のくだらないルールに縛られたゲームからは卒業できたのです。
そして、いよいよここからが本番です。
「半沢直樹」のような話は、ただのドラマではなく現実世界にも起こりうる・・・今、置かれている環境で、それくらいギリギリまでやってみるといいと思います。そうしたら、現実世界が想像以上にドラマチックであることに気付くかもしれません。
そうすることで、そのくだらないルールから卒業し、人生は次のステージに移行できる・・・かもですよ?
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