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古美術逍遥 東洋へのまなざし

■リニューアル後、初訪問

泉屋博古館東京にて、2022年9月10日~10月23日開催。泉屋博古館東京のリニューアルオープン後、初めて見に行った美術展になりました。リニューアル後の館内の構造は、ちょっと微妙です。中央のホールを4つの展示室が取り囲む配置なので、必ずホールに一度戻ってから別の展示室に入ることになります。泉屋博古館東京はいつも落ち着いた雰囲気ではありますが、もしすごく混雑したら、この動線だとえらいことになりそうですね?

■注目の作品

徐九方「水月観音像」は、本当に美しい仏画でした。ちょっと衝撃的な美しさで、必見だと思います。14世紀初頭の高麗で描かれ、高野山に伝わったものの、一度イギリスに渡り、その後住友コレクションに加わったようです。
伊藤若冲「海棠目白図」も良かったです。海棠の枝に身を寄せ合って並ぶメジロたちがかわいらしく、早春の気配が漂ってくるようです。「若冲の白」という言葉があるかどうか知りませんが、この絵でも白の表現が若冲は独特で、とても効果的だと見るたびに思います(「若冲と京の美術」「日本美術をひも解く」参照)。

■近代数寄者と明末清初

ところで、この展覧会の本当のテーマは、東洋古美術の名品の公開ということにとどまらなかったように思います。
茶席の再現や文房(中国式の書斎)の再現からは、プライベートの空気感、数寄ごころがよく伝わってきますし、住友の当主を始めとする関西の数寄者たちが、中国の明末清初の画人・文人に寄せた思いが、数々の中国絵画や文房具・煎茶道具のコレクションにこもっているようでした。明末清初への共感というのは、日本の近代を理解するうえで一つの新しい視点(私にとっては)だと思えます。
一方で、住友コレクションや三井コレクションの美術品を見ているだけでは、彼らの実業家としての像、ビジネスの空気感がよく分からないんですよね。それを知るためには、何かそれなりの本を読まなくてはいけない気がします。

■HARIO CAFE

泉屋博古館東京のリニューアルに先行オープンして話題になった、併設のカフェにも寄ってみました。カフェオレは、さすがのおいしさでした。

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