ヨーロッパ古典絵画の輝き 模写に見る技法と表現
■めったに見られない展覧会
茅ヶ崎市美術館にて、2022年4月2日~6月5日開催。
古典的表現を今も守り続ける東方正教会のイコン、そしてルネサンス前夜=中世後期(15-16世紀)のイタリアとフランドルの絵画が(模写で)見られるという、日本ではめったにない機会です。私の一番好きな絵画のジャンルなので、喜び勇んで茅ヶ崎に出かけてきました。
見た目を同じにすることを目標にする複製画は、高精細プリンターでも陶板画でもよいのですが、模写再現は原画の技法や素材の研究と、可能な限りの再現を目標としています。どちらが上ということではないと思いますが、原画の分析や模写の工夫を知ると、一層興味深く見ることができました。
模写再現だからこそ、これほど近くで見ることも、写真撮影も可能になったのですから、ありがたい展覧会だったと思います。
■イコン
イコンの模写では、以下の2つを紹介しましょう。2枚ともまったく同じ構図「エレウサ型」(慈憫の聖母)のイコンです。イコンはこうした形式や表現技法が定められていて、変わることなく現代まで伝えられています。「祈りのためのかたち」に個性は必要ないという、東方正教会の考えかたによるものです。とは言ってもこの2枚から受ける印象は、少し違いますね。どちらがお好みですか?
■イタリア絵画・フランドル絵画
中世イタリア絵画からはフラ・アンジェリコとシモーネ・マルティーニ(およびリッポ・メンミ)、中世フランドル絵画からはロベール・カンパンの作品です。
フラ・アンジェリコの祭壇画では、中世絵画によく見られる背景の金地の美しいパターンに注目しました。マルティーニの天使に見られる衣裳の見事な文様も、金箔を貼った下地を生かした表現です。カンパンの磔刑図は、色彩の鮮やかさに驚かされます。
■近現代絵画
実は、近現代の絵画の模写も展示されていたのです。その中から1枚、19世紀イギリス・ラファエル前派の画家、エドワード・バーン=ジョーンズの水彩画を紹介します。当然かもしれませんが、近現代の絵画も技法や素材が研究対象になりうるのですね。
普段なかなか足を運ばない場所でしたが、行って良かったと思える展覧会でした。模写再現を手掛けられた画家のみなさんに、お話をうかがってみたいと思いました。
ついでに海岸まで足を伸ばしてきましたよ。江ノ島が見えました(タイトル画像)。