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鍋島焼 -200年の軌跡-
■鍋島焼と渋谷区松濤
久しぶりの戸栗美術館、開館35周年記念特別展とのことです。2022年4月1日~7月18日。
伊万里・鍋島のコレクションで知られる戸栗美術館の所在地、渋谷区松濤は、お屋敷の立ち並ぶ高級住宅地です。もとは紀州徳川家の下屋敷があったところで、明治になってから旧佐賀藩のお殿様、鍋島家に払い下げられた所縁の地なのです。いつも静かで落ち着いて鑑賞でき、私の好きな美術館の一つです。
■鍋島焼の歴史
今回は、鍋島焼の始まりから、明治維新による江戸幕府献上品としての歴史の終わりまで、200年の歴史をたどる展覧会でした。
鍋島焼は、もともと佐賀藩(鍋島藩)から幕府への献上品だった中国の磁器が、1644年の明滅亡・清の中国支配の混乱で輸入できなくなり、秀吉の朝鮮出兵以来の伊万里焼をベースに、高級磁器の国産化を目指したところから始まるようです。
それが、17世紀末から18世紀初めの盛期鍋島では、ずば抜けて精確で美しい文様の磁器となります。組揃いの皿では、量産したかのようにぴったりです。色鍋島に用いられたのは、赤と染付の青、あるいは赤・青に加えて緑と黄。植物文様が多いのですが、皿の円形や余白を生かした斬新な意匠もあり、高いデザイン性が特長です。
ところが18世紀初めに出された倹約令の影響で、幕府の側から「今後献上品は青と緑だけを用いたものにするよう」要請され、その後は地味な配色に変化します。
地味とは言え、鍋島染付や鍋島青磁の技術や意匠性は高く、特に青磁では花瓶や、獅子や瓜をかたどった具象的なモチーフの作品に素晴らしいものがありました。
すでに見たことのある作品も多かったのですが、歴史に沿って知識を整理できた展覧会でした。