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重要文化財指定記念特別展「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」

2021年11月3日〜12月19日、根津美術館にて開催。出掛けた日は、気持ち良い秋晴れでした。こんな日なら、表参道駅からのちょっとした道のりも苦になりません。

▪️展示室の端と端を見比べて

今回の展覧会の目玉、鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」は、偶然か意図的な配置か分かりませんが、酒井抱一の「青楓朱楓図せいふうしゅふうず屏風」と広い展示室の端と端に対置されていました。この師弟の作品は、どちらも6曲1双の同じスタイル、右隻と左隻のコントラストのある屏風で、見比べてみるととてもおもしろいのですが、そのために展示室の真ん中であっちとこっちをきょろきょろしているのは僕だけのようでした。

「青楓朱楓図屏風」では右隻が春で、青楓の下に縁が赤い花と菫も少し、左隻は紅葉の下に紺青の桔梗の花が咲く秋。右隻と左隻、またそれぞれの主従の要素(楓と花)で二重に青と朱が入れ替わっています。対する「夏秋渓流図屏風」は、右隻左隻とも常緑の檜と足元の渓流が主役で統一感がありますが、右隻の夏では百合と熊笹、左隻の秋では桜紅葉と若干の檜の黄葉がアクセントを添えます。

それにしても、この2つの屏風絵がいかに異様な表現かに改めて驚かされます。パターン化された葉の形、べったりした金地の背景、様式化された水の流れなど、デザイン画、イラストレーションと呼べそうです。写実とも伝統的な日本画ともかけ離れた、力強い鮮烈さが溢れた異形の美です。

▪️優しい琳派も良い

その他の其一の作品では、「藤花図」(11月3日〜28日展示)がよかったです。先程の屏風のような鮮烈さはなく、穏やかな様式美で藤の花の美しさのエッセンスを描き出し、晩春の季節感までも伝わるような魅力的な作品でした。

ところで、酒井抱一も鈴木其一も、隷書体か定家様のように見える書体で落款の署名を書いていることがあるのですが、これは琳派と王朝趣味・公家様のつながりを示すものでしょうか? 知りたいところです。

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