【大会の記録】第14回一茶・山頭火俳句大会(2023年11月11日(土)開催)
一茶・山頭火俳句大会の記録記事です。
できれば第1回から14回までの記録が揃えられたらと思っています。
スタッフも大会記録に学び、より良い会へと繋げていて行きたいと思います。
会場・月見寺の記録も掘り起こして行きたいと思っていますが、様々な会を主催しておられ、膨大な紙や書籍の山山山。
「記録あるよー!」
「写真ならあるよ」
「提供してもいいよ」
という方、事務局へのご連絡をお待ちしております。
2023年11月11日(土)「第14回 一茶・山頭火俳句大会」
この日は急な冷え込みに秋というより、冬が迫ってきたような気候でした。
当日スタッフは9時から大会準備を開始。
11:30から当日投句を受付をスタート。
12時頃には先生方もお見えになり、慌ただしくも賑やかな月見寺でした。
投句は12:30に締め切られ、13時には本堂に先生方もお集まりいただき、いよいよ開会です。
開会挨拶は、大会委員長で月見寺ご住職の加茂一行氏。
選者先生方をご紹介した後、先生方には一旦控室へお戻りいただき、当日の選句を行っていただきます。
選句の間には、パリでも俳句を行っているサックスプレイヤー仲野麻紀さんによる公演「名句は名曲となりうるか」
加茂一行さんとのトークショーも交えつつ、俳句トークとサックス演奏という新しい試みでした。
そして、休憩をはさみいよいよ結果発表です。
選者
伊藤伊那男/「銀漢」主宰
井上弘美 /「汀」主宰
鳥居真里子/「門」主宰
土肥あき子/「絵空」同人
ながさく清江/「春野」顧問
行方克巳/「知音」代表
能村研三/「沖」主宰
檜山哲彦/「りいの」主宰
麻里伊/「や」同人
水内慶太/「月の匣主宰
(不調により伊藤伊那男先生は当日は欠席となりました)
第14回大会〜事前投句
事前投句の応募総数は108通、全278句の投句をいただきました。
事前投句は、伊藤伊那男先生、井上弘美先生、鳥居真理子先生、行方克巳先生、水内慶太先生、5名の先生に公正に選句いただきました。
披講は今大会よりスクリーンに投影。
「音声」と「文字」でしっかり鑑賞いたしました。
伊藤伊那男 選
特選
どぶろくにやがて話の濁り初む/杉阪大和
入選
夕映えの雲にすずめや一茶の忌/平井葵
赤子いま立てり銀河の尾を摑み/益子さとし
細糸の見えぬ縫目も菊枕/白井飛露
上向きのままになだるる葛の花/杉阪大和
ラフランス昔はこんな頭をり/加藤草児
その後は鼻歌となり薺打つ/牧野実奈
しろがねのこゑを封じて滝凍つる/執行香
井上弘美 選
特選
涼風のま中に吊るす十界図/加藤草児
入選
削られて削られて山眠りけり/柳堀悦子
せせらぎに光の破片草の花/斎藤謙子
鏡面の裏に広がる虫の闇/野上卓
一株ごと日溜り広げ晩稲刈/杉阪大和
鉄鉢に受くる雨月の雫かな/谷岡健彦
天橋に羽音風音鳥渡る/執行香
鳥渡る琥珀の町の琥珀玉/坂本昭子
鳥居真理子 選
特選
あれは山頭火の衣猿をがせ/松居舞
入選
赤子いま立てり銀河の尾を摑み/益子さとし
かあさんが桔梗の露となりてくる/戸川冨士子
葱刻むいつかどこかで聞きし音/長谷川明子
榠樝の実あかるき老いのおせつかい/中島悠美子
母ありて嫦娥の夢か月仰ぐ/武岡貴枝
椎の実の落着く窪のありにけり/増田信雄
鳩吹くや空の鈴緒を振るやうに/中澤美佳
行方克巳 選
特選
帰省して兄の売りたる喧嘩買ふ/栗林明弘
入選
あれは山頭火の衣猿をがせ/松居舞
削られて削られて山眠りけり/柳堀悦子
月今宵酒は旨いしみんなきれいだ/松居舞
味噌蔵の壁の味噌の香初しぐれ/岸根明
毛糸編む指のどれかは嘘隠し/歌代美遥
常備薬増えてかりがね寒き朝/小髙正子
熊打ちの長の隻眼のつぺ汁/市村和湖
水内慶太 選
特選
稲妻や祈り静かに土偶の目/あべゆう子
入選
モンゴルの大地のパオや銀河濃し/鈴木基之
山頭火・一茶・護や月の句座/執行香
赤子いま立てり銀河の尾を摑み/益子さとし
四万十の霧に浮かぶや沈下橋/長尾かおり
銀漢に兜太生まれし山河あり/柳堀悦子
寄せくるは光のつぶて春の浜/真隅素子
澄太の揮毫のぬくし月の寺/大熊峰子
第14回大会〜当日句
井上 弘美 選
特選
隕石はひかりの欠片山眠る/岸根明
入選
風は渺々乾鮭に星々に/若山真紗子
しぐるるや手風に細る仏の灯/市川浩実
別れたるとき風音のインバネス/市川浩美
冬北斗信濃秩父の荒凡夫/坂本昭子
どんぐりは転がる形一茶の忌/松居舞
ばつたんこ省略のなき寺仕事/松居舞
人は地を木の葉は空を急ぎけり/大山妙子
鳥居真理子 選
特選
碑の罅より一茶冬めくや/丸山一耕
入選
水重くなるまで鴨の来てゐたり/鈴木恭子
負けたんぢやない逃げるんぢやない枯蟷螂/田中喜翔
風の哭や墨の撥ねある雪女/高橋陽子
悼 斎藤槇爾先生
水とあり水に隠れず枯蓮/湯口昌彦
投函の音はつ冬の薄さかな/若山真紗子
ねぢれゐる闇一本の葱かな/村木節子
錦木や地球を離さぬごと根付き/中島亜紀
土肥あき子 選
特選
どんぐりは転がる形一茶の忌/松居舞
入選
歸り花過ぎ去りし日のみな淡し/若山千恵子
のびきつて平らかな猫冬ぬくし/菊野柚子
小春日や何処かに自分置き忘れ/沼田布美
投函の音はつ冬の薄さかな/若山真紗子
晴ればれと脱ぎちらかりし七五三/岡田登水子
マフラーの首振りて読む楽譜かな/吉田祥子
封の〆黒々と書く今朝の冬/山本ふぢな
ながさく清江 選
特選
腐葉土となりて枯葉の浄土かな/長尾かおり
入選
茎漬を噛みて平和を尊べり/祐森水香
腰おろす一会の石や草紅葉/平井葵
からつぽの巣箱を抱きて裸の木/若山千恵子
手を握るだけの介護や冬薔薇/関山恵一
死に水は酒がよろしと生身魂/関山恵一
老いの手を老いの手の取り花柊/加藤草児
芋届く一筆箋の癖字かな/鈴木基之
行方克巳 選
特選
燗酒の好きな婆さんジャズも好き/松本政女
入選
腰おろす一会の石や草紅葉/平井葵
枯菊の残る香りも焚かれけり/平井葵
風は渺々乾鮭に星々に/若山真紗子
じやんけんで渡る飛石小鳥来る/吉田しづこ
風音に山気まぎるる白障子/市川浩美
芋届く一筆箋の癖字かな/鈴木基之
飛び石のすき間すき間の草紅葉/小髙正子
能村研三 選
特選
冬銀河明日を作らぬ砂時計/菊野柚子
入選
水重くなるまで鴨の来てゐたり/鈴木恭子
切干の切り口撫づるほどの風/中村順子
しぐるるや手風に細る仏の灯/市川浩美
風音に山気まぎるる白障子/市川浩美
積み上げし薪のモザイク冬銀河/市村和湖
ばつたんこ省略のなき寺仕事/松居舞
神渡弁天さまも立たれけり/土方公二
檜山哲彦 選
特選
地固めの枯葉大きく大きな手/村木節子
入選
音といふ音を畳んで寒月夜/菊野柚子
水重くなるまで鴨の来てゐたり/鈴木恭子
水枯や浮いて重たき鯉の口/斎藤謙子
投函の音はつ冬の薄さかな/若山真紗子
曲り家の闇の一角枇杷の花/斎藤謙子
ねぢれゐる闇一本の葱かな/村木節子
枯庭に人あたたかき匂ひかな/長尾良子
麻里伊 選
特選
冬銀河明日を作らぬ砂時計/菊野柚子
入選
引つぱれば空が嫌がる烏瓜/若山千恵子
密航の廃船の貧冬ざるる/井上宣孝
山眠る地中に深き水の音/市村和湖
正露丸遺して逝きぬ今朝の冬/松居舞
人は地を木の葉は空を急ぎをり/大山妙子
害獣とさけぶ銃口冬青空/大山妙子
釣り人も鴨もかすかに動きけり/吉田祥子
水内慶太 選
特選
病みし生なれど永遠風鶴忌/湯口昌彦
入選
石狩鍋かまの睨みも隠し味/高橋陽子
負けたんぢやない逃げるんぢやない枯蟷螂/吉田喜翔
枯木立つまづ骨密度測るべし/菊野柚子
兜太の一語桜桃の粒ひからせて/菊野柚子
碧梧桐に熟柿を恃む中日和/石井きき
悼 斎藤槇爾先生
水とあり水に隠れず枯蓮/湯口昌彦
冬北斗信濃秩父の荒凡夫/坂本昭子
表彰の後は先生方の講評。
特選句を先生のお声であらためて披講いただき、講評を頂戴いたしました。
第14回大会4賞
一茶・山頭火俳句大会では後援いただいている、荒川区、本阿弥書店、ならびに大会賞、月見寺賞を設けています。
これらを4賞と呼び、特選句とともに、総合俳句誌「俳壇」に掲載されるのです!
一茶・山頭火俳句大会賞
冬銀河明日を作らぬ砂時計/菊野柚子
荒川区長賞
水重くなるまで鴨の来てゐたり/鈴木恭子
本阿弥賞
どんぐりは転がる形一茶の忌/松居舞
月見寺賞
投函の音はつ冬の薄さかな/若山真紗子
入選秀句には一筆箋・俳句手帳そして特別賞には美しいクリスタルの盾が贈られました。
また、特選句には先生方のお染筆も進呈されました。
投句された句は全句が冊子化!
一茶・山頭火俳句大会では、14回大会から作品集の冊子を作成いたしました。
写真つきで大会の様子、特選句受賞の言葉も掲載しています。
本記事もこの作品集を底本として作成しています。
この作品集は投句された方、みなさまにお渡ししています。
作品集は第15回も継続
作品集はもちろん、第15回大会でも作ります。
投句くださった方、全員にお配りします。事前投句のみの方には、大会終了後、発送いたします。(送料無料)
第15回一茶・山頭火俳句大会の開催要項はこちらの記事を御覧ください。
みなさまの投句、お待ちしております!