てるやまもみじ
いい時代になりました。
作家がことごとくTwitterをやっていますからね。
感想を書いたりすれば、けっこう「いいね」が飛んできたりする。
批評をうっかり書いても、「いいね」が飛んでくる。
い、いい時代なのか、なんなのか。。
Twitterを見てると、作家の素の姿が見えたりして、面白いです。
こんなこというとあれですけど、けっこうみんな、ふつうだったりして、おもしろい。
すげえおもしろい小説、というのは、すげえおもしろい作家、が書くものだと思ってた。
そうじゃないんだなって(←失礼だな!)
すげえおもしろい小説を書く作家でも、意外とどうでもいいことで悩んでたり、つまらないネタで笑ってたり、社会にそこまで造詣が深くなかったり、万事やる気がなかったりする。
なんだ、私とおなじじゃん、って(←失礼だな!!)
ただ、小説がとびきり面白いっていう、それだけ。
それだけでいいんだ、と思えば、もっと書くことに前向きになれる、気がします。気がするだけで、書けるわけじゃないんで、ポジティブシンキングではあっても、ポジティブではない。
まあ、勘違いしていこう。
さて夏ごろ「なつきにけらし」という企画をやりました。
見てのとおり、タイトルが「な」「つ」「き」「に」「け」「ら」「し」から始まる本を挙げて、語ったり語らなかったりする企画です。
これの秋版「てるやまもみじ」に誘われたので、やります。
まず「て」。
うおおお、ちなみにこれはまだ読んでません。誕生日に妻からもらった本です。名作なので、一度読みたかったし、やっぱり村上春樹訳なのがいい。村上春樹の文体好きですからね。そうじゃない人にとっては異論もあるようですけど、好きな人にとっては彼の文体で読めるのは幸多かれかな。読むのがたのしみです。
つづいて「る」。
「る」はむずかしいやろ~と思ったら、あった。しかも大好きな山際淳司。スポーツノンフィクションの大家があの「キヨハラ」を書いたという、野球好きにとっては垂涎の本。といっても、この本は山際淳司のなかでは好きなほうではないけれど(それはやはり「キヨハラ」のキャラが強すぎるからだと思う)、彼が彼を書いたということに、大きな意味がある本だと思う。
「や」。
ごめんなさい、おもいきり守りに入りました。これはずるいやろ。サン=テグジュペリの名作。彼はどこまでいっても「星の王子さま」で語られる作家で、それは残念なことではないけれど、「星の~」で入った読者たちが「夜間飛行」なんかにハマっていくのは、いいよね。
「ま」。
うーん…これは映画がよすぎるので。でも、小説版もすごくいい。というか、映画を補完できるような作りになってるので、どっちも見てほしい。私はできるなら小説を先に読んだほうがいいと思うかなあ。映画と小説と、どっちがいいか、という議論に参加するつもりはないですが、安藤サクラのあの伝説のアドリブは小説では表現できないことはたしか。
「も」。
作家を五人挙げろといわれたら宮部みゆきを選ぶぐらいには好きなので、なにか入れたいなーと思ってたら、あるやん、宮部みゆきの最強本が「も」に当てはまってしまう。うん、宮部みゆきのなかでは「模倣犯」がいちばん面白いと思ってます。というか、これまで読んできた小説のなかでも、トップを争う一冊だと思う。ピースとのラストバトルがすごい好き。「模倣犯」のタイトルが回収されるあの場面ね。そういうできるだけ小さな一点のためにほかの全てが存在するような小説は卓越した構成のなせる技だと思うし、すごく好きです。
「み」。
恩田陸のベストは「六番目の小夜子」だと思うし、恩田陸は構成の人だと思ってるので、そこまで描写にエッジの効いてない「蜜蜂と遠雷」は直木賞(さらに本屋大賞も)受賞作とはいえ私はそこまで評価していないのだけど、すくなくとも栄伝亜夜は素晴らしいと思う。この作品の主人公は彼女ですよね。音楽の作品としてではなく、彼女の成長物語としては、「蜜蜂と遠雷」はすごく好きです。
「じ」。
最近の群像新人文学賞受賞作のなかで、芥川賞の候補作のなかで、韓国文学作品のなかで、いちばん好きなのがこれ。ある面では純文学の理想像だなと思う。真似できないけど。いまも崔実さんの文体には憧れて、それはほとんど嫉妬にちかいのだと、さいきん出た崔実さんの本を買えなかったときに気づきました。この感情は今風にいう「推し」ではないよな。なんていうんでしょうね。とにかく、応援してます。ずっと崔実さんの背中を見ていたい。が、抜いてやるともこっそり思ってる。
というわけで、「てるやまもみじ」でした。
ちっとも秋っぽくなくて草。
でも強い本ばかりですね!
よかったらみなさんもやってみてください「てるやまもみじ」。
どっからでもかかってこい(こい!)
p.s.ゆらさんもやるようなので(というか彼女が言い出しっぺである)よかったらまた見てみてね。
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