見出し画像

その日まで

個展まで、今日を入れてあと3日だ。
表具店まで絵を受け取りに行く。ギャラリーを兼ねたお店は中央線沿線にある。通学に使っていた訳でもないのに、中央線に乗ると学生時代の自分が近くなるような、ノスタルジックな気持ちになる。
大学自体に懐くよりもずっと近い肌ざわりで、ただ若いだけの頃が慕わしく迫ってくる。


絹に描くようになってから、いつも個展の間際には必ず中央線に乗り、打ち上がった絵を受け取ると、胸に抱いて帰ってくる。絵とともにさまざまな感情が胸にある。晴れ晴れとした清々しさ、小さな悔恨、苦さも、時には。それらを中央線の揺れに溶かして、これからやるべきことを脳内でさらう。


記憶の中では、いつも絵を受け取って帰る日は晴れている。きょうも突き離さんばかりに青く晴れた空がそこにある。ホームドアのないホームに、線路と同じカーブを描いて風が吹く。
線路の遠く先に目を凝らす。いつか、中央線とともに学生の頃ではなく今を、懐かしく思い出す時がくる。
その日まで。

.
.
.
[展覧会のお知らせ]
五十棲さやか
ー雨のあとに

2021年11月15日(月)-21日(日)
11時-19時 最終日は17時まで

ギャラリーモーツァルト
東京都中央区京橋1-6-14YKビル1F
Tel 03-6228-6848
www.g-mozart.jp


ご覧いただけましたら幸いです
どうぞよろしくお願い申し上げます

.

.

.


いただいたサポートは災害義援金もしくはUNHCR、ユニセフにお送りします。