見出し画像

20.哺乳類の棘突起の観察 その3

つづきです。
今回も骨格標本の観察ポイントとして、棘突起を取り上げます。最初にヒトから。


ヒト

ヒトの脊椎

出典元:Vertebral column | Anatomy & Function | Britannica

頸椎と胸椎は下方向を向きますが、腰椎はどちらともいえません。
棘間はネコ科ほど広くは空いてませんが、有蹄類ほど近接もしていません。ということは、ネコ科ほどは背骨の丸まる反らす運動が出来ないが、有蹄類よりは出来るだろう、ということが読み取れます。

頸椎棘突起はみんな下向きであり、胸椎と同じ方向性の運動がメインと分かります。
上の図だと頸椎1番の棘突起は長いですが、普通はもっと短いです。とくに頸椎2番の棘突起よりもはっきり短いのが普通です。

これも上図ではちょっと分かりにくいですが、頸椎7番の棘突起が大きくて長いのがヒトの特徴です。直立姿勢となり、腕の重さを支えるようになったので、大きな骨となりました。人によって、頸椎6番で支えたり、胸椎1番で支えたり、違いが出るところでもあります。

胸椎12番は、下半分は腰椎の特徴をもち、棘突起も中間型となります。

サルの胸椎は13番まであるので、ヒトに至り、13番は腰椎化したことが推測できます。
目一杯バンザイをすると腰椎1番に力が集まるので、こうした動きがヒトへの方向を促したと思われます。もちろんこれだけではありません。分かりやすい話としてあげました。

カピバラ

カピバラの骨格

出典元:Skeleton capybaras by hontor on DeviantArt

最大のネズミ(齧歯目)です。
胸椎10と11番の間に境目があるのがよく分かります。棘突起の方向の境目のことです。また腰椎棘突起の幅が広く、棘間が狭いです。普通サイズのネズミのように背骨の丸める反らす運動は出来ないけれど、胸椎に関してはそれなりに出来ることが読み取れます。おそらく上部胸椎を反らすことも出来ると思います。

クマ

クマの骨格

出典元:Bear bones hi-res stock photography and images - Alamy

かなり整然とした棘突起です。胸腰椎の個性の無さは有蹄類に近いものがあります。ということは背骨の丸める反らす運動も乏しいということになります。胸椎13番と腰椎1番の棘突起が逆方向を向いているので、ここで運動方向が変わっているのが見て取れます。

頸椎棘突起は4〜7番がきれいに上向きです。胸椎1番からはきれいに下向きです。これも運動方向がここで分かれているのがよく見て取れます。

それにしても、ほとんどの哺乳類の頸椎2番棘突起は非常に大きいのですが、ヒトはなぜあんなに小さいのか?ここのところはまだ分析中です。

カモノハシとハリモグラ

カモノハシの骨格

出典元:Platypus Skeleton | at the Beaty Biodiversity Museum see mor… | Flickr

カモノハシは哺乳類ですが、単孔目に分類され、分化度の低い哺乳類となります。
下記は同じく単孔目のハリモグラです。

ハリモグラの骨格

出典元:Echidna Skeleton

胸椎棘突起は下方向へ傾き、カモノハシは胸椎全体に差異が少なく、ハリモグラは下部に向かうに連れ幅広になっていきます。

腰椎の数が2個?くらいで、まだ胸椎⇒腰椎化が進んでいないのが見て取れます。

頸椎の分化度は普通の哺乳類並にあるように見えます。単孔目の背骨に詳しくないのですが、大きな棘突起は頸椎2番だと思います。

余談ですが、肩甲骨が見慣れない印象だと思います。これは単孔目にしか見られない形態で、古生物にもいないと思います。しかしもしかすると、哺乳類創世期にはこの形態をたどったのかもしれません。そんなことを考えると、面白くなってきます。


棘突起シリーズ一旦終わりです。
いかがでしょうか?観察ポイントが分かると読み解けそうな気がしてくると思います。

合わせて⇓もお読みいただけると幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?