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16.エイの泳ぎ方 ヒレの運動構造

ヒレの動きにご注目ください。この動きは背骨と同じ運動構造です。
仮りに90度横倒ししたなら、ヒレの波は背骨の波と何ら変わらない印象となるでしょう。

背骨の場合は右と左が逆位相ですが、エイのヒレは背側と腹側が逆位相です。
背骨の運動構造をそのままヒレに転用したのが理解できると思います。

ヒレはあとから出来た器官なので、新しい運動構造を採用することも難しくはなかったと思いますが、背骨で培った運動構造、およびそれに付随する認識を転用しているところが興味深いところです。

運動のイメージと抽象概念

脳科学では、脳の運動指令に先んじてイメージの想起があるとされております。仮りにそのイメージが「波」のようなものであったとします。「波イメージ」は元々背骨とその筋肉への神経指令にくっついていたものです。ところがその「波イメージ」が今度はヒレに転用されました。

さて、転用される「波イメージ」は背骨への運動指令から切り離して転用したのでしょうか?
それとも、「波イメージ」のより上位に、「抽象概念としての波」があり、そこから背骨とヒレに「波イメージ」を分配するのでしょうか?

なにが言いたいかと言いますと、転用できるということは、「なんらかの認識」が単独で存在しうるという証左であり、その単独で存在しうる「なんらかの認識」は、脳の運動指令系のどの階梯にあるのか?という問いです。

わたしが思うには、「抽象概念としての波」があり、それが各運動部位に「波イメージ」を想起させ、具体的な神経指令に及ぶというプロセスなのだと思います。

ヒレの同位相と逆位相

今一度先ほどの動画。
0:26〜、左右のヒレが逆位相です。よく観ていると、同位相のときもあれば逆位相のときもあります。

「抽象概念としての波」は背骨の左右では逆位相です。ということは、エイにいたり、左右同位相の認識も獲得したことになります。またこれとともに「背腹方向への胴体の反り(曲がり)」という認識も獲得したと思われます。

マンタの泳ぎ方

ヒレが翼のようになったマンタは、背骨のような波を描きませんが、遠心性に波を描くようになります。「抽象概念としての波」が同じヒレを相手にしながら、「頭方⇒尾方」から「中心⇒左右の末端」へと転用されています。
また先ほどのエイと同じように、左右の逆位相も見られます。
例えば、0:58〜、左右のヒレを互い違いに扇いでおります。

この動画はカッショクペリカンの羽ばたき(0:00〜)もスローで出してくれているので、面白いです。
トリの翼も遠心性に扇がれている様子が観察できます。

また分かりにくいのですが、翼の水平面上の折りたたみも遠心性であり、伸ばすときも遠心性に伸ばされていきます。多少分かりやすいのは、1:27〜、目一杯スローにしてみて下さい。

「抽象概念としての波」が順番伸展を生む

背骨の波のような動き、ヒレの波のような動き、どちらも順番伸展であり、順番屈曲です。脊椎動物はこうした運動構造とともに始まり、ヒレを獲得してもなお、同じ運動構造で進化しました。両生類から爬虫類が生まれ、爬虫類から恐竜や鳥類が生まれましたが、みなこの運動構造を採用してきました。

かたや両生類から哺乳類の前型が生まれ、その前型から哺乳類が生まれました。そして哺乳類の始まりとともに同時伸展・同時屈曲という運動構造が生まれたのです。

よく分からない主張をしているブログ、と思われると思いますが、ひとつずつ丁寧に見ていくと、運動構造の進化というものが見えてくるのです。

今回出した「抽象概念としての波」もわたしの主張する概念に過ぎません。しかしながらこれも丁寧に見ていくと、浮かび上がってくる概念だと思います。


見出し画像出展元:ファイル:Manta birostris-Thailand2.jpg - Wikipedia

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