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15.脊椎動物の原型から

最初に「脊索」という脊椎の原型がありました。脊索はわれわれの背骨のように分かれてはおらず、一本の棒として中心の軸をなしておりました。本川達雄の表現を借りれば、「中にゲルが詰まってぱんぱんに膨れた細長い風船」「ぱんぱんに膨れているから結構硬い。引き伸ばしたり押しつぶしたりするのは困難だが、曲げようとすれば抵抗しながらも曲がり、力をゆるめるとプルンと元に跳ね返る」(『ウマは走るヒトはコケる』中公新書2024)、ということです。

現生動物のナメクジウオは今でも背骨ではなく、脊索を持っています。見出し画像がナメクジウオです。だいたいこのイメージで話を進めます。

脊索のありがたさ

この脊索の跳ね返りがないと、たとえばイソギンチャクのように指向性のうすい泳ぎになります。

背骨の波

原始的な背骨の運動を保持していると思われるのは、ウツボやウナギ、陸上ではヘビです。

前から後ろへときれいな波が描かれております。体が長いので、波は次々に生まれ尾方へと消えていきます。これがサメになると、波は多くても二つくらいになり、蛇行度合いも弱くなります。そしてマグロになると、尾びれとその少し前の背骨で泳ぐようになり、波の伝播といった特徴がうすくなります。

よくよく注目していただきたいのは、頭方から尾方へ順番に伝播していく運動構造です。脊椎動物の原型においては、頭と尾を除けば、胴体の構造はウツボのように単一構造の連続です。そしてその動作も単調な動きの伝播です。

ひとつの筋分節が縮んで、縮んだ力が後方の筋分節を刺激して縮んで‥‥、この繰り返しです。
そして左右は、「縮む<->伸びる」の反対の動きとなります。
これに脊索という素材が加わることによって、脊椎動物は「頭方に向かって泳ぐ」という能力を身につけます。

この運動プロセスはそれぞれの機械的な反応に負う部分が多いので、神経伝達は最低限であったと思われます。

マグロの泳ぎ方です。ウツボと同じようなものと思われていた方は見直してみてください。


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