未 明
ことばに季節がある
ことばに流れがある
ことばに無量の車輪がある
ことばは 風 ───
ことばは 僕の肺を抜け 君のまなじりにもつれ
やがてむなしく立ち消えて行く
ことばは所詮蛇の抜け殻
あるいは旅人の白いまなこ
しかし 見よ 彼方にあがる清潔な掌を
薔薇の花に壮麗に縁どられた狭き門を
未明 ───
とばりの奥の饗宴は 今
体ごとなだれてくる雄勁な言葉を待ちあぐんでいる
『駱駝』5号(1950年11月)
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「見よ 彼方にあがる清潔な掌を」-----。あたかも詩『希望』1~5の続きのような感じがしてきます。