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つみろんNo.049 英国における199,433人の新規発症心房細動患者を対象とした抗不整脈薬とカテーテルアブレーションの生存率への影響:人口ベースの研究

英国における199,433人の新規発症心房細動患者を対象とした抗不整脈薬とカテーテルアブレーションの生存率への影響:人口ベースの研究
Impact of anti-arrhythmic drugs and catheter ablation on the survival of patients with atrial fibrillation: a population study based on 199433 new-onset atrial fibrillation patients in the UK
PMID: 36104750

【研究が行われた背景】
心房細動(AF)は最も一般的な持続性不整脈であり、適切な管理が必要です。リズムコントロール治療の有効性については議論が続いていましたが、最近の臨床試験では早期リズムコントロールの生存率改善効果が示唆されています。しかし、様々なリズムコントロール戦略の比較データは限られており、特定の患者群に対するどの治療法が最も効果的かは不明でした。

【研究デザイン】
英国の電子健康記録を用いた後ろ向きコホート研究

【研究の方法】

P (Patient):

  • 英国の新規発症AF患者199,433人

  • 平均年齢75.7±12.7歳、50.2%が女性

I (Intervention):

  • リズムコントロール治療(抗不整脈薬またはカテーテルアブレーション)

C (Comparison):

  • リズムコントロール治療を受けていない患者

O (Outcome):

  • 主要アウトカム:全死亡

  • 副次的アウトカム:死因別死亡率

【研究結果】

  • リズムコントロール治療を受けた患者は全死亡リスクが14%低下した(調整HR 0.86, 95%CI 0.84-0.88)

  • 肺静脈隔離術が最も顕著な生存率改善効果を示した(HR 0.36, 95%CI 0.28-0.48)

  • フレカイニドが抗不整脈薬の中で最も良好な生存率改善効果を示した(HR 0.52, 95%CI 0.48-0.57)

  • 70歳未満の患者ではアミオダロンに生存率改善効果はなかった(HR 0.99, 95%CI 0.97-1.02)

  • 年齢、性別、心不全の既往によるリズムコントロールの効果の差はなかった

【重篤な有害事象】
本研究では重篤な有害事象に関する具体的な報告はありませんでした。

【研究のlimitation】

  • 観察研究であるため、選択バイアスの可能性がある

  • リズムコントロール治療を受けた患者の割合が少ない

  • ドロネダロンに関するデータが不十分

  • 心房粗動とAFを区別できない

  • 左房サイズに関する情報がない

  • 残存する交絡の可能性がある

  • 測定されていないリスク因子や併存疾患の影響を完全に排除できない

【要約】
この研究は、英国の電子健康記録を用いて、新規発症AF患者におけるリズムコントロール治療の生存率への影響を調査しました。リズムコントロール治療を受けた患者は全体的に生存率が改善し、特に肺静脈隔離術が最も効果的でした。抗不整脈薬の中ではフレカイニドが最も良好な結果を示しました。年齢、性別、心不全の既往によるリズムコントロールの効果の差はありませんでしたが、70歳未満の患者ではアミオダロンに効果がありませんでした。この研究結果は、AF患者の治療選択に重要な情報を提供していますが、観察研究であるため因果関係の確立には更なる研究が必要です。

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