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つみろんNo.59【重症敗血症および敗血症性ショックにおける急性腎障害:糖尿病患者と非糖尿病患者の多施設研究】

重症敗血症および敗血症性ショックにおける急性腎障害:糖尿病患者と非糖尿病患者の多施設研究

Acute Kidney Injury in Severe Sepsis and Septic Shock in Patients with and without Diabetes Mellitus: A Multicenter Study

PMID: 26020231

【背景】
糖尿病は一般人口の10%に影響を与え、高い罹患率と死亡率に関連している。敗血症と腎機能障害は糖尿病の主な合併症である。糖尿病は急性腎障害(AKI)の独立した危険因子であり、敗血症のリスクも高める。しかし、糖尿病が敗血症中のAKIリスクを増加させるかどうかは議論の余地がある。

【研究デザイン】
多施設前向きデータベースを用いたマッチドケースコントロール研究

【研究の方法】
P: 重症敗血症または敗血症性ショックの患者
I: 糖尿病を有する患者
C: 糖尿病を有さない患者
O:

  • AKIの発生

  • 腎代替療法(RRT)の必要性

  • ICU退室時の腎機能

【研究結果】

  • マッチドケースコントロール解析において、糖尿病はAKIの発生(調整後OR 1.24, 95%CI 0.79-1.94, p=0.34)やRRTの必要性(調整後OR 1.03, 95%CI 0.51-2.08, p=0.9)と関連しなかった。

  • しかし、ICU退室時において、糖尿病患者はRRTを必要とする割合が高く(9.5% vs 4.8%, p=0.02)、血清クレアチニン値が高く(134 vs 103 μmol/L, p<0.001)、腎機能の回復率が低かった(41.1% vs 60.5%, p<0.001)。

【重篤な有害事象】
重篤な有害事象に関する具体的な報告はなかった。

【研究の限界】

  1. マッチング手法や施設間の患者管理の違いによるバイアスのリスク

  2. 糖尿病の状態評価が既往歴に基づいており、HbA1cレベルや糖尿病合併症の詳細情報がない

  3. 慢性腎臓病(CKD)患者を除外したが、ICU入室前の腎機能に関する詳細情報が常に利用可能ではなかった

  4. AKIの診断がKDIGOガイドラインに基づいているが、尿量データが利用できなかった

  5. RRTの使用が標準化された基準ではなく臨床医の判断に基づいていた

  6. 長期フォローアップデータが利用できなかった

【要約】
この研究は、重症敗血症または敗血症性ショックの患者における糖尿病の影響を調べた多施設研究である。研究者らは、糖尿病患者と非糖尿病患者をマッチングさせ、急性腎障害(AKI)の発生、腎代替療法(RRT)の必要性、およびICU退室時の腎機能を比較した。結果、糖尿病はAKIの発生やRRTの必要性と関連しなかったが、ICU退室時の腎機能回復が悪いことが分かった。具体的には、糖尿病患者はRRTを必要とする割合が高く、血清クレアチニン値が高く、腎機能の回復率が低かった。この研究結果は、重症敗血症または敗血症性ショックの糖尿病患者に対して、早期からの腎臓専門医の関与や長期的なフォローアップの必要性を示唆している。

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