見出し画像

つみろんNo.60【地域発症型急性腎障害と病院発症型急性腎障害の疫学と転帰の比較】

地域発症型急性腎障害と病院発症型急性腎障害の疫学と転帰の比較

Epidemiology and Outcomes in Community-Acquired Versus Hospital-Acquired AKI

PMID: 24677554

【研究が行われた背景】
急性腎障害(AKI)は入院患者や重症患者で発症する頻度が高く、予後不良因子として知られている。しかし、地域で発症するAKI(CA-AKI)についての研究は限られており、病院で発症するAKI(HA-AKI)との比較研究はほとんど行われていなかった。

【研究デザイン】
後ろ向きコホート研究

【研究の方法】
P: イギリスの2つの地域総合病院に入院した15,976人の成人患者
I: 地域発症型急性腎障害(CA-AKI)
C: 病院発症型急性腎障害(HA-AKI)
O:

  • 短期および長期の死亡率

  • 腎機能回復率

  • 慢性腎臓病(CKD)の新規発症または進行

【研究結果】

  • CA-AKIの発生率は全入院患者の4.3%、HA-AKIは2.1%だった

  • CA-AKI患者はHA-AKI患者と比較して:

    • より若年(平均74.4歳 vs 76.8歳)

    • より重症のAKIを発症(ステージ3: 27% vs 20.7%)

    • 入院期間が短い(中央値7日 vs 15日)

    • 院内死亡率が低い(19.6% vs 42.8%)

    • 14ヶ月生存率が高い(55.0% vs 36.9%)

  • 両群とも約1/3の患者が14ヶ月後にCKDを新規発症または進行した

【重篤な有害事象】
本研究では重篤な有害事象に関する特別な報告はなかった。

【研究のlimitation】

  • AKIの原因に関する情報が得られなかった

  • 死因の詳細な情報が得られなかった

  • 患者管理の違いが結果に与えた影響を評価できなかった

  • 心臓胸部外科や移植手術を行わない病院での研究であり、一般化可能性に制限がある

【要約】
本研究は、地域発症型急性腎障害(CA-AKI)と病院発症型急性腎障害(HA-AKI)を比較した大規模な後ろ向き研究である。2つの地域総合病院の入院患者を対象に、電子カルテを用いてAKI患者を特定し、その特徴や転帰を分析した。結果、CA-AKIはHA-AKIよりも発生率が高く、より重症であったにもかかわらず、短期および長期の生存率が良好であることが明らかになった。しかし、両群ともAKI後のCKD発症リスクが高いことも示された。この研究は、地域でのAKI早期発見の重要性と、軽度のAKIでも長期的な腎機能低下リスクがあることを示唆している。

いいなと思ったら応援しよう!