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つみろんNo.047 心房細動患者における早期リズムコントロール療法

心房細動患者における早期リズムコントロール療法
Early Rhythm-Control Therapy in Patients with Atrial Fibrillation
PMID: 32865375

【研究が行われた背景】
心房細動患者は、現在のガイドラインに基づく管理にもかかわらず、心血管合併症のリスクが高い状態にある。早期のリズムコントロール療法がこのリスクを軽減できるかどうかは不明であった。

【研究デザイン】
国際的、研究者主導、並行群間、オープンラベル、盲検化アウトカム評価ランダム化比較試験

【PICO】
PICO要素の表:

  • P: 早期心房細動(診断後1年以内)と心血管疾患を有する患者

  • I: 早期リズムコントロール療法(抗不整脈薬または心房細動アブレーション)

  • C: 通常ケア(症状管理のためのリズムコントロールに限定)

  • O: 主要評価項目:心血管死、脳卒中、心不全悪化または急性冠症候群による入院の複合エンドポイント

【研究結果】
主要評価項目(一次アウトカム):
早期リズムコントロール群で249例(3.9/100人年)、通常ケア群で316例(5.0/100人年)発生(ハザード比0.79、96%信頼区間0.66-0.94、p=0.005)。

NNT計算:
絶対リスク減少 = 5.0 - 3.9 = 1.1/100人年
NNT = 1 / (1.1/100) ≈ 91人年

その他の結果:

  • 入院日数に有意差なし(早期リズムコントロール群5.8±21.9日/年 vs 通常ケア群5.1±15.5日/年、p=0.23)

  • 2年後の症状や左室機能に有意差なし

【重篤な有害事象】
リズムコントロール療法に関連する重篤な有害事象は、早期リズムコントロール群で4.9%、通常ケア群で1.4%発生した。

【研究のlimitation】

  • オープンラベル試験デザインによるバイアスの可能性

  • 早期心房細動患者のみを対象としているため、結果の一般化に制限がある

  • 最も症状の強い患者が除外された可能性がある

  • 両群での心房細動再発に関する詳細な情報収集が不足

【要約】
この研究は、早期心房細動と心血管疾患を持つ患者に対して、早期にリズムコントロール療法(抗不整脈薬または心房細動アブレーション)を開始する戦略と、通常のケア(主に症状管理)を比較した。約5年間の追跡調査の結果、早期リズムコントロール群では心血管死、脳卒中、心不全悪化または急性冠症候群による入院のリスクが21%低下した。ただし、入院日数や症状、心機能には両群間で有意差はなかった。早期リズムコントロール療法は、重篤な有害事象のリスクを若干増加させたが、全体的な安全性プロファイルは許容範囲内であった。この研究結果は、早期心房細動患者に対する治療戦略の選択に重要な情報を提供している。

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