つみろん(積み論文消化ラボ)No.40(心臓カテーテル検査から心臓手術までの時間:急性腎障害のリスク因子か?)
心臓カテーテル検査から心臓手術までの時間:急性腎障害のリスク因子か?
Time from cardiac catheterization to cardiac surgery: a risk factor for acute kidney injury?
PMID: 24550339
【研究背景の要約】
心臓カテーテル検査と心臓手術はどちらも急性腎障害(AKI)を引き起こす可能性がある。これらの処置を短期間に連続して行うと、腎機能への悪影響が加算的に働く可能性があると考えられている。しかし、カテーテル検査から手術までの最適な時間間隔については議論の余地がある。
【研究デザイン】
後ろ向き観察研究
【PICO】
P (Patient):心臓手術を受けた573人の成人患者
I (Intervention):
心臓カテーテル検査後の異なる時期に行われた心臓手術
Group A: ≤1日 (n=69)
Group B: >1日かつ≤5日 (n=216)
Group C: >5日 (n=288)
C (Comparison):各グループ間の比較
O (Outcome):
主要アウトカム: 術後急性腎障害(AKI)の発生
副次的アウトカム: 死亡率、ICU滞在期間、入院期間
【研究結果の要約】
AKIは233人(41%)の患者で発生した。
カテーテル検査から手術までの時間とAKI発生リスクとの間に有意な関連は見られなかった。
多変量解析では、高齢(P=0.01)、長いCPB時間(P=0.003)、高BMI(P=0.001)、低い術前ヘマトクリット値(P=0.02)がAKI発生と独立して関連していた。
死亡率は全体で4.4%で、AKIを発症した患者で有意に高かった(P=0.001)。
【重篤な有害事象】
特に報告されていない。
【研究のlimitation】
後ろ向き観察研究であること
様々なリスクと手術タイプの患者が含まれていること
高リスク患者が意図的にGroup Cに多く含まれるバイアスがあること
カテーテル検査で使用された造影剤の量に関するデータが欠如していること
【要約】
この研究では、心臓カテーテル検査を受けた後に心臓手術を受けた573人の患者を対象に、検査から手術までの時間が術後の急性腎障害(AKI)発生に影響するかを調査しました。患者を手術までの時間によって3つのグループに分け、AKIの発生率を比較しました。結果、カテーテル検査から手術までの時間とAKI発生リスクとの間に有意な関連は見られませんでした。代わりに、高齢、長い人工心肺時間、高BMI、低い術前ヘマトクリット値がAKI発生のリスク因子であることが分かりました。この研究結果は、緊急や準緊急の症例では、AKIのリスクを減らすために手術を遅らせる必要はないことを示唆しています。ただし、安定した高リスク患者では、手術前に腎機能を最適化する時間を設けることが適切な戦略かもしれません。