『署長シンドローム』

今野敏
2023年 講談社

隠蔽捜査シリーズは好きで、ここまでのは全部読んでいる。何が好きって、竜崎伸也の筋の通し方。ここまで筋を通して最終的にはチャンチャンで終わるってなかなか無いよなあと思いながら、でも話にそこまで無理があるわけでもなく楽しく読んでいた。
続編出ないのかなあとたまに思いながら見ていたので、この本は隠蔽捜査シリーズとはなっていないけれどもスピンアウト?的な感じだったので読んでみた。

表紙に女性警察官が描いてあるし、帯にもそう書いてあったし、それがどんな話になるのかなあと思いつつ読み進めた。竜崎伸也な感じなのか、別な感じなのかと思っていたが、竜崎伸也的と言っていいのだろう。

ただ、今回のケースで気になったのは、署長が目を奪われて骨抜きになるほどの美女だということだ。竜崎はうるさ型の相手でもその鋼鉄の筋で問題を解決していったわけだが、今回の署長はまず美貌で骨抜きにしてからになる。

美貌が無かったら、どうなっていただろう?
例えこの署長が竜崎のようなタイプだったとしても、まずは男性の「女のくせに」という反発に対応することになる。女性からの「女のくせに」もあるかもしれない。
この小説では「意図しているのかどうかわからない柔らかさがありながら不思議に筋の通った対応をしてうまくいく」形だった。顔の美醜は関係なく、周囲のやっかみをくぐり抜けて筋を通していけたら痛快だが、それには1冊では終わらない長さが必要になるだろう。

顔の美しさを出したのは竜崎とは違う描き方も必要だからかもしれないが、美しくない私にはこの方法は使えない。竜崎を見ていて痛快だったのは、「自分もこうやったらうまくいくのだろうか」と思えたからだな気づいた。筋を通す、覚悟を決めるというのは、なかなか出来ることではないがやろうと思ったらできるかもしれない。
でも、美貌はね。整形しないとか~とか妙な現実を考えないといけないので、竜崎よりも入り込めずに終わりました。私の気にしすぎか。

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